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嘘つきは恋人のはじまり  作者: JUN
16/33

決断

 川田家は、お通夜のようになっていた。

 空の妊娠そのものも驚きだが、それでどうするか決めるにも、父親である村上が行方不明だ。

 川田氏は娘の妊娠に、いきなり老けたように見えた。そして、

「真秀君はそんな事はしないよな。信じているからな」

と泣きそうな顔で取りすがって来る。

 川田夫人は、とにかく体が第一と決めたらしい。食事を作り、食べさせ、普段通りに振る舞っている。

「女は強いって事かな」

 真秀は川田氏をくっつけながらそう呟いた。


 霙は、村上への不満が募っていた。

 最初はそうでもなかったのだが、空の妊娠発覚で、強硬になった。

「無責任だわ。父親なのに」

「でも、本人も知らない事だし」

「真秀、村上さんの肩を持つの?」

「そうじゃないけど」

「……そうね。ごめん。八つ当たりだわ」

「いや、無理もないよ」

「……ところで、やっぱり真秀も、そういうの、興味あるの」

「え!?いや、まあ、無い事は無い、けど」

 しどろもどろになり、そして、真秀と霙もギクシャクし出す。

(ここにいるのもあと少しだといいうのに。

 村上さんとやら。恨むぞ)

 真秀は、あった事のない村上に、密かに恨みの念を送ったのだった。


 空は自室でぐっすりと寝ると、晴れ晴れとした顔で出て来て、宣言した。

「わたし、決めた!この子、1人でも産んで育てる」

「お姉ちゃん」

「昇太がこのまま見つからなくても仕方ない。見つかって、一緒に育ててくれるって言えば、そうする」

 川田氏はガックリと首をたれながら、静かに言った。

「わかった。わかったけど、空。見つかったら、答えに関わらず、1発殴るぞ」

 霙も頷く。

「私も応援するね。

 で、私も村上さんに、至近距離からフルオートを叩きこむから」

 川田夫人は、にっこりと笑った。

「あらあら。物騒ね。警察沙汰にはならないようにしなさいね。やるならバレないようによ」

 真秀は、

(俺は絶対に、こういう事にならないようにしよう)

と決心した。

 ドアチャイムがなったのは、そんな時だった。

「はあい」

 霙が出る。

 そして、

「え!?村上さん!?どこにいたの!?お姉ちゃんが大変だったのに!」

という声と、

「え!?空に何か!?」

という声がして、ドタドタという足音がし、村上がリビングに飛び込んで来た。

 やたらと薄汚れているし、無精ひげが伸びている。

「え?この人が?」

 真秀は、予想と違うその風体に、皆の様子を窺った。

 川田氏は唖然としたように固まり、川田夫人も口を覆って驚きを隠せないでいる。

 そして空は、

「どこに行ってたの」

と涙のにじむ声で言うと、フラフラと村上に近付き、

「電話くらい出なさいよね!!」

と回し蹴りをした。

「ぐおっ」

 体をくの字に折って膝を付く村上に、川田氏と川田夫人が慌てて駆け寄った。

「ちょっと、村上さん!?」

「だ、大丈夫か!?」

 真秀は、眉を八の字にした霙と並んでそれを見守った。

「す、すみません。アマゾンの奥地って、電波が入らなくて。戻って来たら、電池が切れてて」

 村上はそう言い、どうにか笑顔らしきものを浮かべた。

「アマゾン?」

 全員の声が重なる。

「はあ」

 空は腕を組んで仁王立ちになっていたが、ソファにどっかりと腰を下ろした。

「わかるように、順番に説明して。

 その前に、落ち着かないから座って」

「はい」

 村上はちんまりとソファに腰を掛け、全員が聞く体勢になった。






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