星を創るもの
今回は少し短めです!
「何故……生きている……! ホーエンハイム!!!」
オスカーは驚愕した。
「確かに貴様は無数の棘に刺し貫かれた筈だ。あの包囲を突破できる訳が…………!」
オスカーはそこで、トリストラントの遺した言葉を思い出した。
――奴は自分の作った赤い星を……部下に移植しています………
ホーエンハイムの本分は医療魔術。体内に自ら赤い星を移植し、その魔力を用いて体を修復することなど、造作もない。
「お気付きになられたようですね。そうです、私は赤い星を使用しました。」
「自分の体に直接埋め込んだか……!」
「なんと……よくわかりましたね。流石です。そう、私は体の中に星を入れています。それもとびきり大きな、最高傑作です。」
ホーエンハイムは嬉しそうにそう言う。
「その最高傑作の為に、孤児を使ったのか!」
広間にオスカーの怒号が飛ぶ。
ホーエンハイムは一瞬きょとんとし、「あぁ……そんなことまでご存じなのですか。」と呟き、こう続けた。
「いやはや、貴方の情報網の広さには感服しました。……確かに、私の作り出した赤い星は、引き取った子供達から出来ています。……言い訳に聞こえるでしょうが、私はむやみやたらに孤児たちを加工しているわけではありません。赤い星になった子供達はみな、もう長く生きられる見込みの無い子供達です。昨日堤防を作ったときに協力してくれたアーデルハイトは、生まれつき呼吸器に疾患を抱えていました。毎夜毎夜、眠れぬ程に苦しみ、何度も死の淵を彷徨った子です。」
ホーエンハイムは、地面に落ちた、ぼろぼろになったコートから、石を三つ取り出す。
「この子はテレジア。出会う前に戦乱に巻き込まれ、大火傷を負い、皮膚の大部分を焼かれました。こっちはルイ。骨格が歪んだ状態で産まれ、そのまま母親に捨てられてしまいました。歪んだ骨が成長を妨げ、遂には自らの骨で内臓を傷つけることになりました。そしてこの子がピョートル。出会った頃には既に病で体を侵され、ベッドから動けない状態でした。……私は、世界に役割を持たずに産まれてくる人間など、一人もいないと考えています。人は産まれたからには、相応の役割があり、それを果たすために産まれてくる。……それを果たせぬまま、命を終わらせてしまうのはあまりに可哀想ではありませんか? 何の目標も、役割も果たせず、ただ死に向かうのみ。私は彼ら彼女らの必死なさまを常に見てきました。人の温もりを知り、優しさを知り、自らも人のためにならんとするその思いを、間近で見てきました。……これは私の自己満足です。ですが、彼らの生きた証を遺したかった。思いを伝えたかった。共に人のために何かをしたかった。そして、生きて欲しかった。血の繋がりだけが、家族足らしめる訳では無いことを、貴方は知っている筈です。彼ら彼女らは、紛うことなく私の家族です。子供です。子供のために何かをしてやりたいと言う思いは、貴方にもある筈です。現に貴方は、我が子のために身の危険を挺してここに来ました。わかってくれとは言いません。理解を求めはしません。事を正当化するつもりもありません。これは私の自己満足です。虚ろな私を飾る、慈悲と呼ぶにはあまりにも浅ましい考えです。私は、彼ら彼女らを世界に広め、いずれは病で苦しむ者を、無益なあらゆる争いで散る命を、無くしたいと思っています。そのためには、莫大な資金が必要です。法皇猊下との取引は、そのためです。私の行っていることは間違いなく悪です。事が世間に広まれば、私は糾弾されるでしょう。悪魔として焼かれるでしょう。覚悟は出来ています。ですが私は、悪魔として名を残してでも、私なりの慈悲を貫きます。私なりの正義を貫きます。これまで星になってくれた多くの子供達のために、世界から不幸な死を無くすために、私はここで貴方を止めます。貴方に倒されるわけにはいかないのです! さぁ、本番を始めましょう。血の繋がらぬ子を持つ父親同士、存分に殺し合いましょう。互いの愛のため、正義のために……!」
ホーエンハイムはそう言い放つと、赤い星を一つ、握り締めた。
「――昨日を超える」
世界が赤く輝く。オスカーは思わず目を覆った。




