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大烏~カラスと娘と旅する世界~  作者: かんひこ
カラス父娘、西へ往く
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煙の先に

「おとーさん、どうしたの?」


 馬車の後ろからヘレナが声をかける。


「町の方から煙が上がってる。嫌な予感がする……」

「何かあったのかな?」

「解らんが、とにかく急がなくちゃな」


 そう言ってオスカーはシュバルツにもっとはやくと合図を送ったのだった。





 ケンブルクの町に着いたオスカー達が見たものは、町を囲う市壁に空いた大穴だった。そして周囲には町から離れようと走る市民の姿があった。先ほど見えた煙はこの大穴が原因だろう。


「おーい! 何かあったのか!」


 たまたま目の前を逃げていく市民にオスカーは声をかける。


「得体の知れない奴らが突然壁に大穴を空けて、町で大暴れしてる! あんたも早く逃げろ!」

「教えてくれてありがとう!」


 話を終えると先ほどの市民は一目散に走り去って行った。


「おとーさん? どうするの?」


 ヘレナが言う。


「行くしか無いな……危ないから、馬車から出ちゃ駄目だぞ?」

「はーい!」


 そう言ってオスカーは空いた大穴の方に馬車を向かわせた。しかし、瓦礫に阻まれ、どうやら馬車ごと壁のなかに入るのは難しそうなことがわかった。

 オスカーは壁の周囲に誰もいないことを確認してから、


「お父さんちょっとだけ町を見てくるから、ここで待っててくれ」


 と言うと、ヘレナに懐から出した翠の小さな水晶の首飾りを渡す。


「何かあったら、その中のシルフィードが何とかしてくれる。さっきも言ったけど、絶対に外に出ちゃ駄目だぞ?」

「わかった。おとーさんも気を付けてね?」

「おう! それじゃ、行ってくる!」


 ヘレナにそう告げると、オスカーは瓦礫を越えて壁のなかに入っていった。



 町のなかに入ると、そこには大混乱を起こし逃げ惑う市民の声が聞こえた。喧騒は町の中心から聞こえてくる。

 オスカーは周囲を見渡す。どうやらこの地区の市民はもう避難してしまった様だ。

 オスカーはまずはこの町で何が起きているのかを把握するため、家屋の屋根によじ登った。冒険者を生業としているので、このくらいは造作もない。三階建ての建物であったが、難なく屋根までたどり着けた。

 そして彼は町の中心部へと目を向ける。他の建物が視界を遮りあまり良く見えないが、どうやら教会の前の広場で修道士や憲兵が、何者かと戦闘しているらしい。目を凝らせば魔法らしき光も見える。憲兵と戦闘を行っている集団は、黒い外套を身にまとっている。


「これは急がないとな……」


 オスカーは屋根を伝い、急いでその広場へと駆け抜けた。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  これが初投稿ということでしたが、文章はしっかりしています。読んでいて引っかかりを覚える箇所はなく、かなり読みやすい部類だと思います。  孤児になった少女と、保護した男の描写から入り、一息…
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