作戦終了
爆風と共に迫り来る大量の灰が、辺りに生える木々の破片が、抉れた土が、魔力を持った煙が、その全てが二人を包み込む。その瞬間、オスカーは迫る灰に向き直り、詠唱する。
「レト・ヴラクナ――」
オスカーがそう唱えると同時に大地から半球状の真っ黒な何かが二人に覆い被さるように現れ、呑み込む。灰が二人を完全に包み込む直前のことだった。
「オスカー! ボレスワフの旦那ぁー!」
「兄さーん!」
爆発から少し経ち、グスタフやアンナ達が二人を探しに現れた。爆心地から少し遠かったことと、多くが負傷者の収容のために砦の中に居たこと、冒険者達と灰の獣との間に木々が多く林立していたことが幸いし、被害は最小限に抑えられたらしい。
「アンナ! グスタフ! 俺たちはここだ!」
冒険者達が捜索を開始した直後だった。突然一部の灰が吹き飛ばされ、中からオスカーとボレスワフが現れた。それも、ほとんど無傷の状態だ。
「兄さん!」
「オスカー! 無事か!」
アンナを始め、冒険者達が続々と集まってくる。集まってきた冒険は、やれ流石ボレスワフとオスカーだ、やれ大烏の名の通り幸運な奴だと、口々に騒ぎ立てる。
「二人とも、良く無事で居てくれた……奴は?」
一団から遅れてエドヴァルドが到着し、二人と握手をしながらそう訪ねる。
「すまん。見ての通り煙に巻かれた」
ボレスワフが答える。
「だが、これ程の魔力を使った攻撃だ。回復までにはしばらくかかる。それまでは人里に来ることは無いだろう」
今度はオスカーが、辺りに積もった灰を手にそう答える。
「とにかく、無事で良かった。ひとまず砦に戻ろう。お前の娘も心配している事だ。安心させてやると良い」
「ああ、そうだな。
そう言って砦の方へ歩き始めるエドヴァルドを追うようにしてオスカーとボレスワフも砦に向かって歩く。
「オスカー、お前、まだあんなモノ使ってんのか」
ボレスワフがオスカーだけに聞こえるような声で聞く。
「あんなモノとは失礼な。大事なもう一人の相棒さ」
オスカーは少し顔をしかめてそう答える。
「そうか……影の勇者殿も大変だな」
ボレスワフはそう言って鼻で笑う。オスカーはそれを聞こえないふりをして砦へと向かったのだった。
○
「おとーさん! 大丈夫? けがしてない? いたい所ない?」
「うわっちち……ヘレナ! 大丈夫、何せおとーさんは強いからな! 心配ご無用だ!」
オスカーは砦と化した村に帰還し、建物の扉を開けた途端、ヘレナに飛び付かれた。この時、オスカーの腰に激痛が走っていたのだが、そんなことをヘレナに言えるはずもない本人は、少し引きつった笑みを浮かべてヘレナに格好つける。その様子をヘレナの頭の上にしがみついているルドルフが察知し、口を抑えてキキキッっと笑う。オスカーはそんなルドルフの額を指で少しこつくと、ヘレナの手と握って建物の中に入った。
「ようヘレナ! 元気にしてたか?」
「ボレスワフおじさん! 久しぶり! 元気だったよ!」
「そりゃよかった!」
しばらくすると外で何やらやっていたボレスワフも中に入ってきた。そしてそれに続いて他の冒険者達も続々と建物に戻ってくる。皆一様に今回も生き残ったと喜びを噛み締めている様子だ。
そうしてようやく長い戦いはひとまず終わりを告げたのだった。




