一矢報いる
太陽が少し西に傾きかけている。捜索隊出発が午前の事だから、既にかなり時間が経過している。だが、
「グオォォォォォ!」
「クソッ! 退避ー!」
灰の獣は未だに疲れる様子がない。その有り余る強凶悪な力を、戦闘開始から数時間経った今でも振るい続けている。
「グスタフ!」
「オスカーか……ウチの若いのが世話かけた」
グスタフはそう言ってオスカーに礼をする。かなり疲労が激しいらしい。腕や足には切り傷も出来ている。
「今はそんなことどうだっていい。今の状況は?」
「戦線離脱者続出って所だ。おまけに、砦側の矢弾が残り少ないらしい……」
オスカーは辺りを見渡す。グスタフだけではない。アンナや他の冒険者達も多くが疲弊し、多かれ少なかれ負傷している。そんな時、一つの違和感に気づく。明らかに冒険者達が少なすぎる。オスカーが戦闘参加したときは気付かなかった。
「おいグスタフ、『不屈』のアルノルトはどこ行った?」
「わからん……アルノルトだけじゃねぇ……部隊その物が森に入って以降、誰一人姿を見ていねぇ……」
だが、会話は遮られる。
「グオォォォォォオ!!」
灰の獣が大きく遠吠えをし、砦に直接攻撃を仕掛け始めた。
「まずい!」
オスカーは素早く銃を取り出し、弾を込めて発砲する。だが銃弾は灰の獣の右前足に掠っただけだった。
「うおぉぉぉ!」
銃弾に反応し、足を止めた灰の獣にオスカーは剣を抜いて肉薄する。幸い体力はまだ残っている。だが、
「グオォォォォォオオオ!!」
灰の獣は素早く前足の爪でオスカーを迎撃する。
「うおっ!」
オスカーは攻撃を紙一重で避けた。そしてその勢いで灰の獣の左後方に回り込み、後ろ足の腱に斬りかかる。
「グオォォォ!」
「ぐっ……!」
しかしこれも堅固な毛皮に阻まれ刃が通らない。逆に後ろ足で痛烈な蹴りを喰らってしまう。オスカーはこれを何とか剣で防ぐも、後ろに弾き飛ばされた。
「オスカーさん!」
エリーゼがオスカーを援護するように数少なくなった矢を射掛ける。それと同時にアルフォンスが思い切り指笛を吹く。灰の獣は完全にオスカーに意識を向けていた。灰の獣は驚いて咄嗟にエリーゼの方に顔を向ける。放たれた矢は真っ直ぐと灰の獣の顔に吸い込まれるように飛び……
「グオォォォォォォォォァァァ!?」
灰の獣の右上の目玉に突き刺さる。思いがけない攻撃に驚いた灰の獣は叫び声をあげ、荒ぶる。
「エリーゼ、アルフォンス殿感謝する! これであとは……」
オスカーが剣を持ち直し、構えたその時だった。
「良くやった! 後は任せろ!」
背後の森からそんな声と共に、一つの影が飛び出してきた。




