増援(画像有)
「なんで灰の獣はあんたを恐れてるんだぁ?」
二人の間に静寂が訪れた。
オスカーはゆっくりと立ち上がると、素早く剣を抜き、足立と名乗る東洋人の首もとに切っ先を向けた。
「てめぇ、何もんだ?」
オスカーはそのまま足立に問いかける。それに対し足立は微動だにせず、
「あんたの同業者さぁ」
と答えた。
「とぼけるな。誰から聞いた? お前は昼前あそこに居なかった筈だ。あの場に居て勘づくなら未だしも、お前がその事を知っている理由が無い。答えろ!」
「答えるもなにも、遠くからでも見りゃわかるさぁ。あの様子、あんたを恐れているようにしか見えなかったぁ。それでも信じられないってんなら……あんた、俺と一戦交えるかぁ?」
そう言って不敵に笑った足立の威圧感に、オスカーはただならぬものを覚えた。下手をすればこの有利な状況からでもオスカーは苦戦するだろうと思わされるような、そんな雰囲気だ。
「俺は同業者と刃を交えるつもりはねぇんだがなぁ。まぁ、仲良くやろうぜぇ? なぁ兄弟?」
オスカーは剣を鞘に納め、
「悪いが、てめぇと兄弟になるつもりも、仲良くなるつもりも無いんでな」
と言って屋根から飛び降り、ヘレナの眠る小屋へと戻った。
朝が訪れた。ベッドから起き上がり、ヘレナと小屋を出ると既に『竜狩り部隊』の四名が到着していた。
「おとーさん、あの人達は?」
まだ眠たそうな目を擦りながら、ヘレナがオスカーにそう聞く。
「あの人達は『竜狩り部隊』って言って、ギルドに雇われてる兵隊みたいな人達だな。すっごく強いんだぞ?」
「おとーさんより?」
「うーん……時と場合によるな」
『竜狩り部隊』の四名は、やはり真っ白な生地に、『VGC』のロゴを背中にでかでかと描いた、フード付のローブに身を包んでいる。武器に統一性が無い辺り、部隊と言っても個人の力量に重きを置いているらしい。
「あの……もしや貴方、『大烏』のオスカー様ですか?」
ヘレナと話していると、竜狩り部隊の内の一人が声をかけてきた。フードに隠れてよく見えないが、声から若い女性であることは想像に難くない。背中にはロングボウと矢筒を担いでいる。
「ええ。俺は『大烏』のオスカーですが……」
「やっぱり! 覚えておられませんか? 私です! エリーゼです! 十年前、親に捨てられ路頭に迷った挙げ句森で山賊に襲われていた私を、貴方は助けてくださいました! ようやく会えました!」
そう言われてオスカーは、ようやく思い出した。
「ああ! エリーゼか! 大きくなったなぁ……あんまり立派になったもんだから気付かなかった。そうか、竜狩り部隊に入ったのか……」
確かヘレナを見つけてしばらくたった頃だっただろうか。たまたま通りがかった森で叫び声が聞こえ、慌ててグスタフにヘレナを任せてそちらに向かったところ、山賊に連れ去られそうになっていた所を見つけた。その場で山賊を切り捨てた後、あまりにも衰弱し、泥やら何やらで汚れてみすぼらしい姿だったので、一度馬車に連れて帰って保護し、その流れでしばらく旅をした。確か、別れたときにはまだ十一歳だったので、今は二十一歳なのだろう。
「はい! オスカーさん達と別れた後、ゴットフリート師匠の元で冒険者になるために必死に体を鍛えていたら、いつの間にか竜狩り部隊に選抜されてました!」
「あの頃からお前は頑張り屋だったからなぁ……。そうだヘレナ、この人がエリーゼだ。何回か話したことがあっただろ?」
「うん!」
「え! ヘレナちゃん大きくなったねぇ! 相変わらず可愛いなぁ……」
そう言って、ヘレナの頭を撫でる。ヘレナもどこか懐かしさを感じるのだろうか。嬉しそうに、なされるがままにされている。
「おーいエリーゼ! そろそろ作戦会議だ、お前も来てくれ」
そうこうしていると、別の竜狩りからエリーゼが呼ばれた。がっしりした感じのガタイのいい男だ。昔の騎士が持っているような、巨大な槍を持っている。
「はーい! 今行きまーす!」
「俺たちも一緒に行くよ。一応この中じゃ古参だからな」
そう言って、オスカー達は前の日の夜に会議に使った大きな建物に向かった。




