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大烏~カラスと娘と旅する世界~  作者: かんひこ
カラス父娘、帰郷する
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西の都、アリオルストダム

 朝になった。

 外は冬が近いとあってか少し肌寒い。

 そんな寒い朝に、マリアの小屋の前の花園に二つの影があった。


「よし、そんじゃ始めるか! いつでもかかってきて良いぞ!」


 二つの影のうちの一つ、オスカーがもう一つの影、アンナにそう声をかける。相変わらず黒いフードとマントに革の手袋を着けた服装で、右手には木剣が握られている。


「わかった! 今日こそは絶対一本取らせて貰うわ!」


 アンナはオスカーの声にそう答える。アンナの右手にもオスカー同様木剣が握られているが、オスカーのものよりも細く、そして長い。

 二人は剣を構えたまま、しばらくにらみ合い、互いの動きを窺っていた。

 先に動いたのはアンナだった。にらみ合いの最中、風が吹きオスカーの意識が一瞬逸れたのを突いた見事な動きだった。が、


「何っ!?」


 その一撃は当たる寸前で躱された。冒険者達の中でもトップクラスの強さを誇るSランク冒険者の会心の一撃が、ランクで劣るA+ランクのオスカーに避けられたのだ。


「貰った!」


 直後にオスカーはアンナ目掛けて剣を振るが、一撃の勢いを利用したアンナにこれは避けられた。


「まさか避けられるなんて……」

「対人戦闘の数じゃ俺の方が上だし、得意だからな。さぁ、もう一本こい!」

 「むかつく! 絶対一本取ってやる!」


 その後も一進一退の攻防は続き、気付けば花園にはヘレナとマリアも出てきて、二人の行く末を見ている。


「二人ともー! そろそろ朝飯の時間だー!」


 マリアがそう二人に声をかける。


「それじゃ、そろそろ決めるか」

「うん、そうしましょ」


 二人は互いに間合いを取る。両者ともこの一撃で決着にするつもりだ。


「ラフ・ノーラ!」


 今度はオスカーが先に動いた。左手を真っ直ぐアンナに向け、魔法を詠唱する。詠唱が終わると手のひらから緑色の粒子が螺旋状に広がり、そこから少し強めの風が吹いた。そして、


「うわっ!」


 風はアンナの目に直撃した。アンナは思わず目を背けたが、これが大きな隙を生んだ。


「そこだぁ!」


 オスカーは一気に間合いを詰めるとアンナの額を軽く剣でこつく。勝負はオスカーの勝利に終わった。


「あーあ、負けちゃった。ちょっと卑怯じゃない兄さん?」

「戦いに卑怯もくそもあるか。勝ちゃ良いんだよ勝ちゃ」


 そう言いながら二人は小屋の方へ戻っていった。





「そういえば兄さん、今からパーティーの皆と合流してウィレム公爵に会いに行くんだけど、一緒に来る?」


 朝食を終え、一段落したところでアンナはそう話を切り出した。


「そうだなぁ、久し振りにグスタフとも会いたいしな。俺の用事はまたいつでも出来るから、行こうかな」

「え! グスタフおじさんと会えるの?」

「ああ、ちょうど町に来てるみたいだからな。今から会いに行こうか」

「わーい!」


 こうして一行は、グスタフに会うために町に出ることになった。


「悪いが僕は今日ちょっと野暮用があるから家に居ることにするよ。それじゃ、気を付けてな」

「おう、行ってくる」

「行ってきまーす!」

「いってきまーす!」


 三人は魔方陣の描かれた小屋の裏口の扉を開き、外に出た。するとそこには……

 

「うわぁ! 人がいっぱい!」

 

 先ほどとは全く違う、多くの人々が賑わう町の大通りに出た。ここが西の都と呼ばれたネードルスラント連邦の首都、アリオルストダムである。

 大通りには様々な衣装を着た人々や異国民、果ては獣人や亜人達が行き交い、川のように流れていく。


「集合場所は総督府前の大噴水よ。さぁ、行きましょ」

「ヘレナははぐれないようにお父さんから手を離しちゃダメだぞ?」

「はーい!」


 三人がしばらく大通りを流れに沿って進むと、目の前には大きな噴水と、その後ろにそびえるさらに大きな総督府が見えてきた。


「あっ! おとーさん、あそこに居るのってもしかして……」


 ヘレナが何かに気付きその方向へ指を指す。そこにはウサギのような大きな耳と丸い尻尾。その大きな体躯を上回る程の大きさのハルバードを布で覆った男が隣の人物と会話していた。間違い無い。彼がオスカーの親友にしてSランク冒険者、『森薙』のグスタフだ。


「ヘレナ、行って脅かしてやろうか」

「うん!」

 

 ヘレナはオスカーの手を離して、グスタフの元へ走り出して行った。

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