家族団らん
「ヘレナはもうぐっすり眠っちゃったな」
そう言ってオスカーはヘレナの眠る寝室から出てきてマリア達と三人向かい合うようにテーブルを挟んで椅子に腰かけた。
「久し振りに帰ってきたんだ。はしゃいで少し疲れたんだろう、昔のお前達みたいにな」
椅子に座ったオスカーとアンナにマリアは懐かしそうにそう言って、紅茶をすする。
夕食後、久々に帰ってきて少しはしゃぎすぎたのかヘレナはすぐに昔オスカーと共に使っていた寝室に入って眠ってしまった。
「まさか本当に兄さんが生きてて、しかもあんなに可愛い子どもが居るなんて……まだ信じられないわ……私、幻でも見てるんじゃないかしら?」
アンナは頭を抱えてそう言った。
「残念ながら現実だアンナ。大体、S級冒険者で『白雪姫』何て大層な二つ名まで持ってるお前がそんなに簡単に幻なんて見ると思うか?」
オスカーは頭を抱えるヘレナにそう返してマリア同様紅茶をすすった。
「ならどうして兄さん今まで生死を隠してたの?おまけに名前まで変えて肩書きもA+冒険者『大烏』なんて名乗ってるし」
アンナはそう反論する。
「まぁ色々あったんだよこっちにも」
オスカーはそうあしらう。
「今となってはギルベアドは『偉大なる勇者の兄妹弟子にして悪辣なる裏切り者にして最後の敵』なんて呼ばれてるからな。流石の僕もお前が裏切りの末に勇者に切り捨てられたと聞いたときは肝を潰したよ」
マリアは苦笑しながらテーブルにマグカップを置き、さらに続ける。
「今北部から西部一帯で活動している『復活派』の連中は悪名高きギルベアド・クルーガーの意思を継ぎ、勇者を誘き出して斃さんとしていると、もっぱらの噂だ」
「え? 俺その話初耳」
「その悪名高きギルベアド・クルーガーさんは今目の前で家族と紅茶すすりながらゆったりくつろいでるんだけどねぇ……」
「まぁ、噂なんて存外あてにならんと言うことだな」
ひとしきり言い終えた後、三人はほぼ同時に紅茶をすすった。
「そう言えば、アンナはどうして戻ってきたんだ?」
オスカーの問いにアンナはこう答えた。
「ウィレム公爵からの直々の依頼でね、何でも近々東洋の国から使節団が来るからその護衛任務としてうちのパーティーごと呼ばれたの」
「ウィレム公爵が? はぁ……あの変人公爵今度は何やらかすつもりだ?」
オスカーはため息をついた。
ウィレム公爵……もといウィレム八世。帝国西部に属し、帝国外にも決して狭くない領土と植民地を持つ商業国家ネードルスランド連邦の主であり、魔族系の出身でありながら四年戦争に置いては魔王征伐に向かう勇者一行最大のパトロンとして支援し、自身も帝国内外での魔族反乱を鎮圧するため自ら軍を率いて戦った闘将である。しかしその戦乱の最中弟とその息子、義理の父や叔父、そして後継者と目されていた養子のレイナウト等多数の親族を喪う程の大損害を被り、自らも左目と右角を失った。
「あの変人の事だ、東洋の『カタナ』が欲しいだの『サムライ』が見たいだの『ゲイシャ』と遊びたいだの言い出したんだろう……真の意図を隠すために」
「変人の振りをする変人だな」
マリアとオスカーは二人揃って大きなため息をついた。
「お前のパーティーってことはもしかしてグスタフも居るのか?」
「うん? 兄さんグスタフさんの事知ってるの?」
「知ってるも何も、あいつとは昔パートナーだったからな」
「えー! そうなの!?」
アンナは昼間よりも少し静かに驚きの声を上げた。




