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大烏~カラスと娘と旅する世界~  作者: かんひこ
カラス父娘、皇子と巡り会う
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ぷにぷに(地図あり)

 夜が明けからしばらく後、フランツが小屋にやってきた。オスカー達は全員身支度を済ませ、いつでも出発できる。


「皆様早いですね……では、法皇領までの道のりを確認しておきましょう」


 そう言ってフランツは、地図を取り出した。


挿絵(By みてみん)


「今回、アウストリウスからは海路で法皇領に抜けたいと思っています。船を使った方が到着が早いですし、何かと都合が良いですから。それと、竜はでの移動はあまりお勧め出来ません。現在アウストリウスと、その影響下にあるヴァンダルでは、竜大国であるターコニアスへの警戒から、その種類、届け出の有無に関わらず人を乗せたものは現場の判断で撃ち落とせる事になっています。相当切羽詰まった状況で、それも他の兵の居ない所でないと乗らないようにしてくださいね。

 道中、ペシェドにはレオポルド皇太子殿下がおられます。そこで順路の最終確認を行い、殿下の率いるアウストリウス使節団と行動を共にします。何か質問は?」


 その問いに、一同は無言の回答をした。フランツは頷くと地図を丸め、


「では、早速行きましょうか! 今出れば遅くとも明日にはペシェドに到着出来ますから!」


 と言って、一同を見る。一行は集落を出発した。









 集落を出発してから数時間。オスカー達は、全速力で進んでいた。何かに追われるように……ではなく、まさに今追われているのだ。


「ヴァルターとアルベルトは左を! 私とヘルマンは右を抑える! ……何故復活派がこんなところに……!」


 フランツはそう指示を飛ばしながら、一行の両脇から迫る襲撃者を迎撃しに向かった。


「ヘレナ! 手綱ひけるか?」


 オスカーはそう言って荷台のヘレナに声をかける。


「いけるよ!」

「頼んだ!」


 ヘレナが荷台から這い出てくる。オスカーは手綱をヘレナに渡す。オスカーはヘレナを横から隠すように立ち、銃を構える。狙うは、フランツ達の隙間からくる襲撃者だ。


 バンッ!!


 火花が散る。相手の馬が倒れる。乗っていた敵もろとも転がり、視界から消えた。

 オスカーは素早く弾込めし、二発目を放つ。


 バンッ!!


 今度は肩に当たる。相手は衝撃でのけぞり、馬から落ちた。

 オスカーは三発目を込め、撃つ。


 バンッ!!


 フランツの背後に迫る敵の太ももを貫く。気づいたフランツは振り返り様にサーベルで切りつけ、事なきを得た。


 オスカーは辺りを見渡す。もう大丈夫そうだ。


「すまんヘレナ、怖がらせちゃったな。もう大丈夫だ。ありがとう」

「おとーさん……殺したの?」

「……わからん」

「そっか……それじゃもどるね!」


 そう言ってオスカーに手綱を返したヘレナは、滑り込むように荷台に戻る。


 襲撃者は徐々に戦線を離脱していく。そして遂に、最後の一人が逃走し、一行は何とか切り抜けることが出来た。






「また助けられてしまいましたね……オスカー殿」

「いえいえ、こちらこそです。貴方達がいなければ今頃危なかった。本当にありがとうございます」


 一行は、見晴らしのいい場所で夜営することになった。フランツの部下達は交代で辺りを見張り、ヘレナ達は既に眠ってしまった。今この場では、フランツとオスカーだけが起きていた。


「オスカー殿、一つお尋ねしてもよろしいですか?」


 フランツがそうオスカーに聞く。オスカーは「もちろん」と返し頷いた。フランツは、話を切り出した。


「ヘレナちゃんは、もう冒険者になったのでしたよね?」

「ええ。ギルドの年齢制限の都合で、功績に似合わずランクはDですが」


 冒険者ギルドには年齢制限がある。基本十歳を超え、ギルドが主催する講習会に出れば、誰でも冒険者になることが出来る。ヘレナは、父親がA+ランクのオスカーであり、冒険者の知識が十分であると認めれたので、講習は免除された。また、ワイバーン狩りで冒険者になった場合は、その狩り自体が講習会になる。


「……ヘレナちゃんは、人を切った事がありますか?」


 フランツが聞く。一瞬の沈黙の後、オスカーが答えた。


「いいえ。ヘレナはまだありません。それに、俺も人を殺す場面に、ヘレナを同伴させたことはありませんでした……」

「それが、今日だったと……?」

「ええ。ヘレナには少し良くないものを見せてしまいました。……この子は冒険者として大成することを夢見ています。いずれは、人を切ることもあるでしょう。でも、親心としては、悪人とはいえヘレナには人を切って欲しくはありませんね」


 オスカーはそう言って、眠る我が子の頬を指でつついた。ヘレナの頬は柔らかく、ぷにぷにとしていて暖かい。起きている間は、あまりやりすぎるとヘレナに怒られるので出来ないが、寝ている今なら思う存分つつける。父親オスカーとしての、専売特許だ。


「本当に、お二人は仲が良いですね……羨ましいです」

「フランツ殿にも子供がおられるのですか?」

「ええ、まぁ……三ヶ月ほど前に産まれたばかりですが……仕事柄家を空ける事が多くて、あまり子育てに参加出来ないのが辛い所です……」


 フランツはそう、不甲斐なさそうに頭をかく。


「では、ローシェンまでの旅が終われば、少し休暇を頂けば良い。きっと奥方も喜びますよ」

「そうですね……特別恩給も出ますし、休暇を取ってどこかに旅行するのも悪く無いですね」

「それは良いですね……きっと良い旅行になりますよ」

「ええ。そのためにも、頑張らないとですね」


 そう言ってフランツは立ち上がる。交代の時間のようだ。


「では、見張りに行ってきます。おやすみなさい」


 フランツは、夜の闇に消えていった。オスカーは、ヘレナの頬をぷにぷにとつつきながら、その背を見送った。

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