女子会
中庭で、アルブレヒトと別れたオスカー達は、今度はエルフリーデに呼び出された。何でも、ヘートヴィヒやレジーナも交えて、ささやかな『女子会』を開くのだと言う。そのついでに、業務連絡もかねてオスカーもヘレナの道案内として呼ばれたのだ。
「ほ、ほ、ほんとにこの向こうにいるんだよね?」
エルフリーデの部屋の前まで来たヘレナは、妙に緊張した面持ちで、オスカーにそう言って確認をとる。
「開けてみな?」
「わ、わかった……よし! 失礼します!」
ヘレナは一度深呼吸をして、扉を叩き、部屋に入る。
「おー、ヘレナちゃんとギル兄来たね! ようこそー!」
「ヘレナちゃん! 会いたかったよー!」
「ヘレナちゃんおはよう! よく眠れた?」
部屋には既にエルフリーデの他、ヘートヴィヒとレジーナもいた。既に女子会は始まっているようだ。
部屋に入ったヘレナは、飛び出してきたヘートヴィヒに抱きつかれ、そのまま椅子に座らされる。ほぼ丸一日ヘレナと会っていないヘートヴィヒは、ヘレナにベッタリだ。
「いやぁー! 可愛い女の子に囲まれて、わたしゃ幸せだよ!」
「お前朝から酒入ってるだろ」
「可愛い女の子達を前にして、酒を飲まずにいられるかっての! ヒック!」
部屋の主であるエルフリーデは、既にかなり出来上がっているようだ。スケベ親父のような言動を繰り返し、酒の入ったグラスをぐびぐびとあおる。ローシェンに外遊中の夫と嫡男のルートヴィヒが見たら、きっと頭を抱えるだろう。……否、ルートヴィヒはもしかすると乗ってくるかも知れない。
「あー、そうそう。出発の日は遅くとも三日後でどう?」
「三日後か……」
「保護出来たら、そのままローシェンで合流。法皇猊下に謁見って流れ。レジーナちゃんも一緒よ。ルートヴィヒと再会するの、楽しみにしてたもんねぇー?」
「わわっ、陛下ぁー!」
「ひんやりー」
そう言って顔を真っ赤にして酔ったエルフリーデは、レジーナの肩を引き寄せて頬擦りする。
「私は一旦国に帰って報告しなくちゃだから、ヘレナちゃんとはお別れだね」
「えー! そうなんだ……」
ヘレナはがっくりと肩を落とす。それを見たエルフリーデが、露骨にニヤリと笑うと……
「それなら今日はとことん盛り上がろうじゃない!」
と叫んで、開いたもう一つの腕でヘートヴィヒとヘレナを纏めて抱き寄せる。三人の女子を抱き寄せたエルフリーデと、なぜかヘートヴィヒは、それぞれ別の意味で顔を真っ赤にし、ご満悦の様子だ。
「ほらほら、野郎は帰った帰った! ここは女の園だぞぉー! ヒック!」
「呼んだのはお前じゃ……まぁ良い、ヘレナに変なことすんなよ?」
「大丈夫よぉー! 勇者様にまっかせなさーい!」
「心底心配だ……」
オスカーは、そう呟いて部屋を後にした。部屋には、四人の女子達が残った。
○
「――レジーナちゃんって、うちのルートヴィヒの事心底愛してるもんねぇー!」
「陛下、止めてください……恥ずかしい……!」
「がはは!」
オスカーが去ってからしばらく経った部屋には、先程以上に酒が入って真っ赤になったエルフリーデと、恥ずかしさで顔を真っ赤にしたレジーナの姿があった。
「政略結婚のはずだったのに、気づいたら本当に好きになっちゃってたんだね。素敵ー!」
「ねぇねぇ、ルートヴィヒ様ってどんな人なの?」
真っ赤になったレジーナに、ヘートヴィヒとヘレナがそう聞く。
「えぇー……えっと、その、ルートヴィヒ様は、優しくって、かっこよくて……いつも私を気遣ってくれるの……お手紙も週の頭と末に一通ずつ送ってくださるし……」
「おぉー! うちの息子も罪な男だなぁー! がはは! ヒック!」
「やっぱり恥ずかしいよぉー……!」
「良いなぁー! 私にも、そんな許嫁が居たら良かったのに……」
「ヘートヴィヒちゃんにも、いいなずけがいるの!?」
「まだ候補だけどね。みーんな駄目駄目。有力な貴族の息子達なんだけどねぇ……」
「へぇー……大変だねぇ」
「ヘレナちゃんには居ないの?」
そう聞かれて、ヘレナはふと考え込み、一人の顔が浮かぶ。
「あー! ヘレナちゃん顔が赤くなってるぞぉー! ヒック!」
「ヘレナちゃんにもいるの!? ねぇねぇ、どんな人?」
「気になる……!」
「えぇー! うーんとね、いっしょに二人で剣のたんれんとかした子でね、うーん……でもまだわかんない」
「初々しいなぁー! こんちくしょう! ヒック!」
「でも、一つの事を一緒に出来るって、良いよねぇ……」
「ちょっと、妬いちゃうかも……」
「……?」
女子会は、夜遅くまで続いた。




