おまけ2
第11話のしばらくの後、結婚式をすませ、午後の紅茶で思い出にひたる皇太子妃となったキャロライン姫とジョージ王子の様子から。
第12話『午後のお茶は甘じょっぱくて、ですわ♡』
「はううん、真白様の世界はとっても楽しかったのです……」
キャロライン姫はうっとりとしつつ、ジョージ王子に話しかけています。
薔薇の花咲く庭園での午後のお茶。
白いクロスの上には、銀のお盆に載せられた茶菓子のいくつか。
「うん、楽しかったね。あの時、あおい殿にはずいぶんと世話になった」
王子は皿の上から『か○あ○くん』に似せてつくらせた、『こここここけっこう鳥』の揚げ物を摘んで口に入れます。
……野球! あれは実に熱い遊戯だった。今、我が国にも普及を目指しているのだが。
それから、あおい殿は寝台の下にある『男の秘密』とやらまで見せてくれて、健全なる男子はすべからく持っているとのことだが、うーん、アレをここで流行らすのは難しいやもしれん。
ああ……、男同士のうお! な話は、思えばした事がなかったのだよな……。
「真白様……、素敵なレディで御座いましたわ」
キャロライン姫も塩辛い揚げ物をひとつ食べ終わると、ホイップしたクリームをたっぷり乗せたケーキを、フォークでひとすくい口に運びます。
……ああん、真白様とパジャマパーティ、とても楽しかったのですの。
王子様とのあれこれを聞かれましたの。うふふ、少しばかり恥ずかしかったですが、嬉しかったのです。そういうお話って今までした事御座いませんでしたの。
ですが……、真白様はええ~! それだけ~? と仰られてましたわ。
その先に何かありそうなので聞こうとしておりましたら、こちらに戻って来てしまいましたけれど。
「ねえ、王子様、ひとつお聞きしてよろしい?」
キャロライン姫は甘いもの、しょっぱい物のエンドレスループにハマりつつ問いかけます。
「ん! 何かな……。おっ、そうだ! 球場で飲んだ『コ○コー○』とやらは再現出来ぬかと持ちかけたところ、炭酸石を利用して先ずは果物を絞り、樽に仕込んでみると、調理番の報告があったぞ」
「まあ、それは美味しそうですの! コレは何とかなりましたが、そちらは無理かと思ってましたから、嬉しいですわ」
そう言うと、高坏に入れられた白くトロリとした飲み物を、こくこくと飲みます。
「こちらにもクリームは有りましたから、それと乳を上手く配合し、バニラシェ○クは何となく出来上がりましたわね。万年雪山から氷石が取り出せて、良かったのです」
と、応えるキャロライン姫。
「うん、そうだね。あちらには美味しくて不思議な物が沢山あった。動く鉄の車に、スイッチとやらを押したら明るくなる魔法の力、そして……」
「テレビですわ!」
王子の話に、キャロライン姫は思いついていた疑問を忘れて食いつきます。
「中には人も動物もおらぬと、言っておった」
「中にはケーキは無いと、言っておられましたわ」
はうう、真白様にお会いしとうなりました。としょんぼりとするキャロライン姫。そんな彼女を慌てて元気づけるジョージ王子。
「キャロライン……。そ、そうだ! 何か聞きたそうだったけど……何かな?」
王子は愛する妻に問いかけます。
「王子様……、え? ああ、聞きたい事がございましたの」
気を取り直し、キャロライン姫が笑顔を向けます。
「なに? 言ってごらん。知ってることなら、直ぐに教えてあげる」
愛する妻の笑顔にデレデレになるところを、引き締める王子。
「以前、真白様との『女子会』で、わたくしは王子様ともうキスをしたの~? と聞かれましたの」
はい? 何を話していたのか? 王子は少しばかりうろたえます。
「それで、手の甲にキスをしてもらったと言いましたの。そうすると真白様は、それから~? とお聞きされましたから、それだけですわとお答えしましたら、『え~! それだけぇぇぇ~?』と、なぜかびっくりされましたのよ」
と、無邪気な妻は夫に話す。
「他に何がありますの?」
「ほ、他に……」
これは、キャロライン姫に『夜の睦みごと』を教える絶好の好機。いわばノーアウト満塁で打席が回って来た状況!
しかし、王子は心の準備ができていなかった上に、露骨な話をしてドン引きされないかと思い、チャンスを生かすことができません。(チャンス×)
とはいえ後の話、ジョージ王子がキャロライン姫に無理やりキスをした結果、口を利いてもらえなくなるという出来事が起こるのですが……。
どう答えたらいい、あおい殿助けてくれ。と他力本願なジョージ王子。
「直ぐに教えて下さるのでしょう? それだけではないのですの?」
お腹が空きましたの、と『か○あ○くん』をつまみ口に入れるキャロライン。
王子に答えるよう迫る、彼女の無垢なる笑顔。
「う……、しょっぱい物の次は甘いものだな」
話を誤魔化そうと、ケーキを頬張るジョージ。
教えて下さいませ! とキャロライン。
う、うう……あおい殿、助けに来てほしい……。と、ジョージ王子は甘く蕩けるクリームをスプーンですくいつつ、答えに窮しています。
花々は甘く香り、風は涼やかに抜けていき、愛する妻は午後のお茶にて、どう話すべきか悩む夫を無邪気に追い詰めます。
「それだけ? 他には何がありますの? 王子様?」
甘い彼女の言葉が、なぜかしょっぱく聞こえるジョージ王子なのでした。
あおい殿……、助けてくれ。
お、わ、り♡