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Re:二周目の公爵令嬢〜王子様と勇者様、どちらが運命の相手ですの?〜  作者: 星里有乃
第2章 二周目

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第11話 勇者様からデートのお誘い


 わたくしと似ている悪役令嬢が登場する伝記『美貌の悪役令嬢の悲劇』を手に入れた1ヶ月後。何を思ったのか、因縁の勇者ジークから海岸デートの誘いがあった。

 わざわざ自宅に電話をかけてきて、『大切な話だから本人と話させてくれ』と引かなかったらしい。すっかり忘れていたけれど、ジークって狙った女性には物凄く積極的なんだっけ。


「ようやく出てくれたね、可愛いヒルデ」

「えっ……えぇ。まぁ」


 仕方なく電話に出ると、しばらくぶりのジークの声は、聴いているだけで蕩けてしまいそうな甘く低い声で。さっそく、わたくしをその美声で、堕としにかかっているのが伺われた。


(ふんっ。わたくし、そんな分かりやすいイケボに騙されるほど、馬鹿な女じゃありませんわ。多分……)



「ヒルデ、もうすぐギルドでクエストデビューをするんだろう? 先輩冒険者としてのアドバイスもしたいし、海岸デートと洒落込まないか?」

「せっかくのお誘いですけど、わたくしもう中学二年生ですのよ。フィヨルドと婚約しているのに、他の男性とデートだなんて……無理ですわ」


 本当は、もう少し手厳しくジークを断りたかったけれど、のちのち揉めると不味いためやんわりとお断りすることに。こちらとはしては、極力問題にならぬように気を遣っているのだから、ジークにも配慮して欲しい。


「そういうなよ、ヒルデ。これでも一応、幼馴染みじゃないか? フィヨルド君のことが気になるなら、彼から許可を得てからデートすればいい。そうだ! 僕の方から話をつけておこう」

「なっ。そんなこと、出来るはずがないでしょう? ジークったら、何を考えているのか分かりませんわ」

「ふふっ。キミがどんどん美しくなっている噂は、僕が通う学校にも届いているよ。まるで、御伽噺に出てくる美貌のご令嬢のようだって。とにかく、フィヨルド君のことは任せて! じゃあ明日の朝八時に迎えに行くから。おやすみ……愛しているよ」


 ツーツーツー……ノリと勢いで言いたいことだけ告げて、ジークは電話を一方的に切ってしまった。


 一体どんな神経をしていたら、『婚約者がいるからデート出来ない』と断る女に『愛しているよ』なんて砂を吐くほど甘い声で囁けるのか。


 馬鹿なわたくしは、ジークの囁きと美声に驚いてしまい。混乱でドクンドクンと胸が高鳴っているのです。鳴呼、情けないですわ。



 * * *



 なかなか寝付けずルキアブルグ邸の談話室で、ひとり雑誌を読んでいると、フィヨルドがやってきた。お互い寝巻きにカーディガンを羽織った状態で、就寝モードだけど彼も寝付けないのかしら。


「ジークから、デートに誘われたんだって。行くの?」


 本当にフィヨルドに話をつけているとは、想像もせず。驚きで声が出なかったけれど、否定しなくてはならない。


「いっ……行くはずないでしょう? もうフィヨルドまで意地悪言わないで」

「すごく頼まれたんだよ、ジークに。一生に一度のお願いだから、今回だけ、ヒルデと海岸デートをさせてくれって。凄く大切な秘密の話もあるとかで、2人っきりじゃないとダメなんだってさ。聞かないと多分、この先も後悔するんじゃないかなぁ……」


 フィヨルドの言い方はまるで、ジークとのデートに行った方がいいとの言い回しに、聞こえてしまう。


「わたくしは、フィヨルドに一途に生きるためにこんなに頑張っているのに。どうしてフィヨルドは、わたくしの気持ちを理解してくれないの?」

「理解しているよ、ヒルデ。でも、ギルドクエストは、いろんな異性と一緒に行動する機会も増える。ヒルデはオレ以外の男に免疫がないし、幼馴染みのジークで会話を慣らしておくといいんじゃないかって」


 一体何をジークに吹き込まれたというのだろう、フィヨルドは。すっかりジークの思惑通りに、動いているじゃない。


「フィヨルドが付き添ってくれるなら、行かないこともないけれど」

「それが、うちの学年は明日、全員参加のクエストが行われるんだ。多分、ジークもその情報を知っていて、明日を選んだんじゃない? それにオレもその日からは、同じ学年の女の子達と泊まりがけで行動しなきゃいけないし。社会生活を送るなら、お互いそういうのにも慣れないと」


 バツが悪そうに語るフィヨルドは、まるで浮気の許可を得ようとする夫のようで。わたくしは頭に血がのぼり、久しぶりに癇癪のムシが騒いでしまいました。


「他の女の子と一緒? 泊まりがけで。恋人以外の異性と泊まり込む社会生活ってなに? フィヨルド、どうして。わたくし、こんなにあなただけに気持ちを尽くしているのに。なんで、分かってくれないのっ! もう少し、配慮してよっ。いいわよ、ジークとデートに行けばいいんでしょう? フィヨルドの馬鹿っ。もう知りませんわっ」


 興奮しながら泣いて走り去るわたくしは、嫉妬深いコンプレックス丸出しの悪役令嬢なのでしょう。カッコいい王子様のフィヨルドを狙う女子生徒は、星の数ほどいるというのに。

 フィヨルドと別の女子がお泊まりなんかした日には、いろんな誘惑でフィヨルドと他の女子がそういう仲になってしまうかも知れない。


(きっと、もうすぐフィヨルドに捨てられるんだ……わたくし。中古品を友達に流すように、ジークにわたくしを譲ろうとしてるんですのね。廃棄処分なんだ。わたくし、何のためにタイムリープしたんだろう? フィヨルドのことずっと信じていたのに)


「あっ……ヒルデ! 違うよ、要は修学旅行すら出来ないんじゃ、良くないってことを言いたいだけで……。ヒルデ? あぁ……行っちゃったか。もう少しオレのことを信じてくれよ」


 気持ちがすれ違ったまま、次の日の朝を迎え……。わたくしとフィヨルドは、それぞれ別の異性と休日を過ごすことに、なってしまったのです。


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