表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続のら犬  作者: 田村弥太郎
3/7

震災

永らく保留。最後に震災関連を。

①地震

 中田がフロアを出たのは、午後二時半過ぎだった。エレベーターで地下駐車場へ向かう。

 グレーの箱形の機器を無造作に手にしている。新しく採用した小型の無線機である。

 施工する業者から、設置できると連絡を受けて、市内のとあるビルに向かう予定だった。

 駐車場を出るとすぐに国道に出る。赤信号で停車する。その時、携帯電話から緊急地震速報が鳴った。続いて、揺れが来た。ハンドルにしがみつかなければならない程、激しい揺れである。5分程、続いたろうか。

 中田は死者が出る程の地震を2回経験していたが、そのどれよりも長く大きな揺れである。

 中田はオフィスに戻ることにした。丁度、ビルの敷地を一周する事になる。ビルの前庭には次々と人が集まっていた。

 中田も前庭に向かう。

 同僚の安部がベンチで煙草を吸っていた。

「いやぁ、大きかったな」 

 安部が言う。

「津波が来るな」

 海辺育ちの男が言った。

 しばらくして、各々、非常階段でフロアに戻った。

 携帯電話でテレビを見ているものが多い。大津波警報が出ていた。

 帰宅の指示が出た。近隣に住む者は歩いて帰り、遠い者は友人の家や、行政の避難所に向かう。

 安部は同僚と家路についた。それでも10キロ以上はある。

 中田は新幹線で通っている。ビルからは、駅の手前で止まったままの車輌が見えた。未だ、行くあてのない者が、フロアに残っていた。

 中田もどうしようか迷っていたが、丁度、無線課の内野がやって来た。

 今日は休みだったが、慌てて来たのだった。内野のマンションは近い。中田とは、課が違うが業務の関連はあり、よく話しもする。

「今夜、泊めてくれ」 

 中田は、間髪を入れずに言った。

 三月、日暮れは早い。折しも雪が降り始めた。内田のマンションへの道すがら、小さな店に入る。電気は止まったままなので、豆腐二丁と生で食べられる野菜を買った。

 停電は続き、真っ暗闇が訪れた。内田の携帯電話で、テレビを見ると、どのチャンネルも津波の映像を映し出していた。

 内田のマンションに灯りが灯ったのは、翌日の夜だった。窓から、近くのマンションの灯りに気付き、スイッチを入れたのだ。

 その夜、避難所にいる同僚から長距離バスの運行が再開されると連絡が入った。

②帰宅

 翌朝、中田が駅前のバス停に行くと、既に長蛇の列となっていた。

 途中、波打つ舗装を徐行しながらバスは走る。

 中田は新幹線を一区間、利用していた。バスが駅前に着き、駐車場へと歩く。歩道に埋設されたマンホールが液状化によって、50センチほど路面から競り上がっていた。

 駐車場は、バーが外されていた。誰が外したのかは分からない。精算機も停止しているのでそのまま出た。

 家までは20分程、信号は止まり、道は波打ち、橋と道の境や埋設物があるところには、大きく段差ができていた。中田は前方を注意しながら運転する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ