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第五十章 明日射す光を求めて

真音達を連れて本部に戻った石田は、いつも通り冴子に報告をしていた。


「また新たな敵って事?」


レプリカ・ガールの話を聞いて頭を痛めている。


「どうかわかりませんが、少なくとも味方ではないでしょう」


「嶋津氏を殺した目的はなんなのかしら?」


「話されたくない事があったんじゃないかと」


レプリカ・ガールの出現は、石田の憶測を釘で打ち付けるくらいの証拠になる。


「石田君はガーディアンの理論を唱えた人物が今も生きてるって言うし、レプリカだかパプリカだか変なのも出て来たし、はぁ〜………なんだかよくわかんなくなって来たわ」


レジスタンスだけならまだしも、複雑に絡み合う真実と真実。それが解けない限り進展は望めない。何かきっかけでもいい。小さな小さなきっかけでも、そこから積み重なる真実の頂点へ行けそうな気はする。


「これから組織はどうするつもりなんです?レジスタンスは選定者とガーディアンを恐れ前程の積極的な行動は取って来ないでしょうし、相変わらずマスターブレーンの場所さえわからない。唯一手がかかりだった嶋津氏は殺されてしまった。正直、何をしたらいいのか、今は指示が欲しいです」


珍しく石田に覇気が感じられない。


「石田君…………」


いつも元気づけてくれる石田に、かけてやれる言葉が見つからない。そんな自分が情けない。

沈黙が苦手な冴子だが、思わぬ助け舟が来た。

自室の電話が鳴って『くれた』。

冴子はホッとして受話器を取った。


「はい、中川です」


石田は冴子の顔を見て相手が誰だか予想はついた。

冴子が眉間を刻む時、相手は眠れる獅子のお偉方だ。


「……………わかりました。すぐに行きます」


受話器を置いて電話を切ると、


「ごめんなさい、会議に行くわ」


「じゃ、俺はこれで」


「石田君」


「はい?」


「あなたもよ」


何故?石田自身はそう思っているのだが、冴子はとうとう動いて来たかと思った。

ここのところ『上』に対していい印象は抱いてなかった。眠れる獅子設立時の目的はどこへやら。いつの間にか怪しい臭いが漂う組織になっている不安があった。


「俺も?」


「そうよ」


「勘弁願いませんか」


「これは命令よ、あなたの意志は必要ない」


「は、はぁ………」


命令とあれば従うまでだが、突然強気に出る冴子に圧倒される。

冴子は不安が的中しない事だけを、ひたすら願っていた。










「木々が病んでいる………」


自然公園。そう名付けられているのに何一つ自然ではない。

オリオンマンは冬と戦う木に触れ、心が折れた木と会話していた。


「意外とロマンチストなのかしら?」


自然なんかにまるで興味の持てないメロウが茶化した。


「見てみろ。本来ならここは四季の国だ。春を待つ為力を蓄えなければならないこの時期に、この公園の木々達は狂い出した環境の変化に着いていけなくなっている」


「だから?」


「メロウ、お前にはわからないか?ガイアの環境を狂わせたのは外ならぬ先進国のバカ共だ。自然の恵みの真意さえ知らないくせに…………嘆かわしい」


オリオンマンのガーディアンでありながら、彼の言ってる事が正しいとはメロウは思ってない。敢えて口に出して否定するまでもないので黙っておく。

いつもなら。


「この星には一体どれだけの人間がいると思ってるのよ。自然に感謝して生きるなんていちいちやってらんないわよ。あなたがどんなに嘆いても、地球は人間が支配しているの。人間が住みやすい環境を造るのが当たり前じゃない」


「メロウ?」


「オリオンマン、言ったはずよ?世界はあなたが思っているより汚いって。真実を見なさいよ。先進国の人間より優れた視力を持つその目でさ。どっかに行く度に嘆かれたんじゃ敵わないわ」


イラついていた。オリオンマンにではなく、レプリカ・ガールが動き出した事に。

メロウがまくし立てるのを見て、むしろオリオンマンは冷静になる。


「何を隠してる?」


「いきなり何?」


「レプリカ・ガール………だったな?あれを見た時のお前から怯えを感じた。意識体として私の中にいる時は、お前の感情が手に取るようにわかる。ごまかされんぞ」


「……………………。」


「言いたくなければ言わなくていい。レプリカ・ガールだろうとなんだろうと、私の邪魔をするならば存在を消すまでだ。それがお前の利益に繋がるのなら、お前としても本望なのだろう」


「神になれたら………あなたは世界をどうしたいの?」


「フッ………神になどなれるとは思ってない。世界が腐敗臭にまみれたとしても、私は今と変わらんよ。ただ、これもガイアの導きなのだろうと、その試練に挑んでいるだけだ」


「選定者とガーディアンを全て倒してヒヒイロノカネを手にした時、今と同じ言葉が言えるかしら」


村にいた時とはメロウの様子は180度違う。

やはり何か隠している。果たしてそれを今問うべきか否か。オリオンマンは答えを出せないでいる。


「メロウ」


「気遣いなら無用よ。幸い選定者で注意しなければならないのは二ノ宮とかいう男だけ。やるべき事はさっさとやるべきよ」


必死になっているのをひた隠し、パートナーのオリオンマンとでさえ距離を置こうとする。


「………そうだな」


自分が歩こうとした道。歩いていると疑わなかった道。そのどちらも歩いていないのだと思わずにはいられない。

命運は既にメロウが握っていた。


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