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第四十一章 暗殺命令

旅館のチェックアウトを済ませ、七人はワンボックスカーに乗り込む。石田がレンタカーを借りて来たのだ。

全員が乗ったのを確認し、セルを回す。

すんなりエンジンが声を上げたのを聞いて、整備が行き届いているのがわかる。これはこれで結構気持ちがいい。


「シートベルトしてくれよ」


向かうは140歳の生き証人のところ。まだ真音達には話してないが、彼らに拒否権は無い。

文句は言われ兼ねないが……。


「で、今度はどこに連れてってくれるの?」


後部座席からエメラが言った。


「はは…………まいったね」


ジルならまだわかるが、エメラにまで読まれているとは……。

石田は切り出すタイミングを計っていたのだが、その必要はなさそうだ。


「わかりやすのよ、あなた。そんなんでよくスパイなんて仕事勤まるわね」


くすくす笑いながらジルに皮肉られる。


「いろいろ私達には知らない悩みがあるのよね?」


あげくにユキにまで心配される始末だ。


「大変ですね」


真音も、


「ま、気楽に行こーぜ」


トーマスも、


「日本人は………働きすぎ」


ダージリンまで……。

温泉旅行が効いたのか、いつの間にか『仲間』のような雰囲気が出来ている。組織が旅行に行かせたのには、こういう事を計算してなのかもしれない。


(してやられたな………)


石田は苦笑いを浮かべながらも、真音達に力強さを感じた。


「そうだな。口を濁しても君達にはわかってしまうだろうし、研究所では君達に助けられた。俺も誠意を見せるよ」


あれこれ一人で気取り過ぎてたが、これではどっちが年上かわからない。


「単刀直入に言おう、これからあの人造人間研究所で働いていたっていう人物に会いに行く」


「人造人間研究所で?冗談でしょ?百年前に稼動していた場所よ?当時の人間なんて生きてるわけないじゃない」


ジルが言うと、真音やトーマスも同意する。石田が冴子に見せた反応とまるっきり同じだ。

無理もない。どんなに長生きしても限界はある。神様じゃあるまいし、人の領域を出て生き続ける事など不可能だ。

…………それが人の世の常識なのだが。


「俺もそうは思う。だけどあの島の一件もあるし、君達だって常識を超えた技を見せたじゃないか。行く価値はある」


昨日までは乗り気じゃなかったのに、今は何が起きても驚きはしない。絆が芽生えた感触を掴んでいた。


「百歳は越えてるって事ですよね?」


真音に聞かれ、


「140歳らしい」


そう言うと、


「140………」


ちょっと想像には難しかったようだ。


「あれこれ考えるまでもないわ。行ってみればわかる事よ」


「そういう事だ」


ジルの言う通り行ってみればわかる。

石田はアクセルを踏み込んだ。










リオがいたのはレジスタンス本部の地下にある研究施設。無論、ガーディアンを研究する為の施設だ。


「何かわかりましたか?」


ガーディアン研究の責任者を呼んで進行具合を聞いていた。


「ガーディアンの仕組みは理解出来たのですが、とにもかくにもヒヒイロノカネが無くてはどうにもなりませんよ」


まだ若い責任者は愚痴り気味に答えた。

リオが人造人間研究所から持ち帰ったガーディアンに関する資料は大いに役立っていた。


「それは困りましたね………因みに、ヒヒイロノカネがあればガーディアンを製造する事は可能でしょうか?」


「まあ…………ヒヒイロノカネが何なのかにもよりますが、資料に書かれている事を元にすればおそらく可能かと」


それだけ聞ければ十分だった。


「ではひとつお聞きしますが、ガーディアンからヒヒイロノカネを取り除く事はどうでしょう?」


リオの質問に首を傾げた。意図がわからないからだ。


「返答に困りますが………仕組みを見る限りではそれも不可能ではないでしょう。断言は出来ませんが………第4選定者のガーディアンを験体として扱えれば話が早くて助かるのですが」


「それは出来ません。李奨劉との契約で、ガーディアンであるガーネイアを験体とは出来ません。あくまでもサンプル無しで研究して下さい」


「バレンタイン様………そうはおっしゃいますが、目の前に最高のサンプルがあるのにそれを使うなと言うのは納得出来兼ねます」


真っ当な意見を主張したつもりだったのだが、リオの怒りを買う結果になる。


「納得する必要はありません。与えられた条件で結果を出すのがあなたの仕事でしょう?それと、ガーネイアを『使う』という表現は撤回して下さい。彼女には感情があります。あなた達人間と何も変わらないのですよ?言動には注意していただきたい」


口調は穏やかなのに、目が怖い。口答えするようなら何を言われるかわからないだろう。


「も、申し訳ありません」


条件反射で謝ってしまった。


「以後、気をつけて下さい」


リオはそれだけ言うと地下施設を後にする。


「な、なんだったんだ……」


ガーディアン研究責任者は、リオから感じた殺気にまだ困惑していた。










「入りたまえ」


ビリアンが言うと、李とガーネイアが部屋に入って来た。


「……………………。」


何用かわからないだけに、李は警戒している。

手は貸しているが、信用はしていない。出方によってはビリアンを殺すだけ。


「そう警戒しないでくれ。君達を呼んだのは他でもない。リオ=バレンタインについてだ」


「…………あの銀髪の女がどうかしたのか?」


「ふむ。実は彼女の部屋からこんなものが出て来てね」


そう言ってビリアンが取り出した物は、プリズムに輝く丸い物体。


「なんだそれは?」


「おそらくは…………ヒヒイロノカネだろう」


大きなダイヤにしか見えなかった。李はガーネイアを見るが、ガーネイアは首を横に振って知らない事を告げた。


「いつの間にそんな物を……」


「李奨劉君、私は彼女を信頼していた。レジスタンスの中で誰よりもだ。しかし、これは私への裏切りだ。これがヒヒイロノカネである事は間違いない。保管が尋常じゃなかったからね」


「……………あの女の裏切りが俺達に何か関係あるのか?」


ビリアンは大きく息を吸い、気持ちを落ち着けるようにした。


「彼女を抹殺してほしい」


裏切り者には死を…………よくあるパターンではあるが、まさか自分にその依頼が来るとは思わなかった。


「もちろん報酬は出す。やってくれるね?」


「…………後悔するなよ?」


「するものか。いずれにせよ今夜中には片付けてほしい」


ビリアンにとってリオは最大のパートナーだった。しかし裏を返せばビリアンの事をよく知る人物だと言える。長老達に知られたくない事実すら知っているのだ。裏切りだと確信した今、一秒足りとも生かしてはおけない。


「わかった」


「頼んだよ。よもやしくじる事はないだろうが、彼女は勘も鋭いし稀に見るキレ者だ。気をつけてたまえ」


「フン………そんなに心配ならディボルトしてから殺るさ」


ビリアンはなぜか不安が素通りしない気がしていた。


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