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第三十三章 進化

 残像を残す速さで李は動き回るが、トーマスは視覚には頼らないでいた。


「なるほど、気配を読むか。自信は伊達じゃないんだな」


攻撃をかわしまくられはするものの、李は感心した。トーマスと言えば、自信があろうとなかろうと、喰らったら一撃で撃沈させられる李の攻撃。油断は出来ない。


「感心するのはまだ早いぜ!」


いつまでも防戦一方ではいられない。特訓の成果を見せるのは今だ。


「トランプ攻撃は通用しないからな!」


「黙れチャイニーズ!これでも喰らえっ!!バーニングドラゴン!!」


両手を前に出し、そこから炎が竜のように飛び出した。


「なっ………!」


李は慌てて回避したが髪の先が少し焦げ、独特の臭いがした。

 トーマスはニヤリとして、


「廃工場での借りはきっちり返すぜ。利子も含めてな」










端から見ていた真音達も見とれてしまうほど力強い炎だった。


「す………すごい………」


『感心してないで弓を構えて!』


ユキに急かされ真音は弓を構えた。


『奴らの銃に怯えないで!第6選定者みたいにはいかないけど、空気の壁で凌ぐから』


引いた弓に矢はない。矢は具現するのだ。集中に集中を重ねて。

レジスタンスの攻撃はユキが言った通り、矢を具現した時に発生するわずかな空気の厚みで防ぐのだ。おそらく二ノ宮は、これを自在に扱えるのだろう。


『面倒だから十人くらいまとめていっちゃいなさい』


「簡単に言うなよ。ようやく慣れて来たばかりなんだから」


狙いを定めて矢を放つ。

矢は瞬間的にレジスタンスの群れに飛び込み、四方八方へ分散した。


「やった!」


『やれば出来るじゃない!』


ユキも大満足だ。

真音も実戦に敵う訓練はないのだとしみじみ思う。


「よしっ!もう一発お見舞いだ!」


銃弾も真音には届かず、レジスタンスは恐怖感を隠せない。戦ってどうにかなる相手じゃなくなっている。

勝てると確信した真音の能力は、加速を増して開花していた。










「あの子達やるわね。うかうかしてらんないわ」


ジルが銃を敵に向けると、銃口に薄い緑の光が右に螺旋を描きながら集まって来る。


『ジル………光子の集め過ぎに気をつけて。でないと…………光力崩壊が起きる』


「わかってるって。ただこういう時じゃないと最大エネルギーでの威力を確かめられないでしょ」


『光子と重力のバランスが崩れれば、集めた光子の量に二乗して空間爆発を起こす。つまり光力崩壊と重力崩壊が同時に起きて膨張と収縮の緊張が…………』


「あ゛〜〜〜もうっ!難しい話はいいから黙って見てなさい!」


集めた光子が銃内部に収まり切れず、銃口付近で膨張し始める。


『ジル………』


そろそろ危険な状態になる事を警告する。


「拳銃程度じゃ集められる量もこんなもんか…………。それじゃあ行くわよ〜」


片目をつぶり、レジスタンスの隊員達に向かって一気に放出する。


「ディスティン・ド・エデン!!!」


薄い緑色の光のエネルギーは、唸り声を上げ大気を震わせながら飛んで行き、大地にその爪痕を残しレジスタンスの隊員達を瞬く間に灰にした。

 威力に申し分はなかった。たった一丁の拳銃でバズーカ以上の威力を見せたのだ、文句などあろうわけもなかったが問題点も見つかった。


「あちゃ〜〜………熱で銃身が熔けてる…………」


オレンジの光と熱を帯びている。グリップまで来なかったのが幸いだった。


『空間爆発が起きれば予想では銀河一つ消えてしまう………』


「大袈裟ねぇ………」


あくまでもダージリン理論だが、彼女はとんでもなく知能が高い事はジルが一番わかっている。それだけに、言葉とは裏腹に心臓の方が爆発寸前だった。


「ま、次は気をつけるわ」










「驚いたな………たった数日でもうコツを掴んだのか……」


二ノ宮は三人を称賛していた。


「でもセイイチには敵わない」


ロザリアは自分とディボルトした時の二ノ宮の真の実力を知っている。


「それはどうかな?彼らが力を使いこなせるようになれば俺だって危ういさ」


「なんだか嬉しそう」


「フッ…………」


二ノ宮が嬉しいと自分も嬉しくなる。そんな感情がロザリアには心地よい。


「仲間に戦わせて自分は高見の見物か…………」


ふと男の声がして振り返ると、黒人の男そして黒いガーディアンスーツを纏ったガーディアンがいた。


「セイイチ…………」


厳しい面持ちの男に怯え、ロザリアは二ノ宮の後ろに隠れる。


「とうとう現れたな。第5選定者…………オリオンマン」


崖下の賑やかさが徐々に失われて行く。ケリが着きつつあるのが伺える。


「見たかメロウ。これが神になる資格を得た者達だ。平気で殺し合いをする輩が………あまりに嘆かわしい」


「その殺し合いをこれからあなたもするのよ」


オリオンマンの愚痴に付き合いながらも、メロウは艶やかな瞳で二ノ宮とロザリアを見つめる。


「よくここがわかったな」


オリオンマンとメロウがこの島を知っていても不思議ではないが、自分達を追って来たとしたのなら不可解な事だ。二ノ宮は調子を崩さず言った。


「私が知ってたのよ、この島の事。選定の儀を行う前に………と思って来てみたら、先にあなた達がいたってわけ。これって運命?」


オリオンマンに喋らせるより………と、代わりに説明した。だからと言って黙っていられるオリオンマンではない。


「おとなしく選定の儀をやめてヒヒイロノカネを渡せ。そうすればお前達の命は助けてやる」


自分の正義に従うオリオンマン。


「ヒヒイロノカネを渡せだと?それはロザリアを殺せと…………ガーディアンを殺せと言ってるとわかって口にしてるんだろうな?」


愛想のよかった顔に険が射す。ロザリアは恐がって二ノ宮の背中に顔を埋める。


「だったらどうだって言うんだ?私はお前達のような俗物が嫌いなんだ。だから戒めに来たんだよ」


「さっき俺達を平気で殺し合いをする輩とか言ったな?平気でガーディアンの命をよこせと言うお前は何様なんだ?」


「ガーディアンは人間ではない」


「なるほど、人間ではない………か」


「ガーディアンは選定の儀のアイテムしか過ぎん。たかが出来のいいロボットだろう?」


メロウを前にして遠慮ない暴言を吐く。メロウ自身はオリオンマンの性格を知っているからか、そこに悪意はないと理解出来ているし、半ば挑発の意味もあるのだろう。

だが彼は過った。正義という言葉が唯一通用しない男に正義を押し通そうとしている事。そして、二ノ宮のタブー意識に触れてしまった事。


「一つ聞こう」


二ノ宮が切り出した。


「なんだ?」


「命は皆平等だと思うか?」


後ろでは既にロザリアが同化を始めていた。


「何を言い出すかと思えば…………決まっている。命は皆平等だ」


「ほう」


「貴様はどうなんだ?命は皆平等だと思わんのか?」


「思わないな。命は常に天秤に掛けられている。そしてその天秤を持つのは………」


腰に提げた青生生魂せいじょうせいこんを鞘から抜き出す。


「俺だっ!!!」


ディボルトを完了させ抜いた刀の軌道が真空波となってオリオンマンとメロウを襲う。


「危ないっ!!」


メロウが叫びオリオンマンも紙一重で避ける。


「おのれ卑怯な………」


不意打ちにオリオンマンもキレた。


「オリオンマン!」


メロウがオリオンマンの名を呼びディボルトする。

すると、とてつもない気配を漂わせた。


「………まだ名を聞いてなかったな」


オリオンマンの瞳がメロウのように赤い。


「第6選定者の二ノ宮だ」


二ノ宮もいつもと違っていた。髪の色がロザリアと同じ銀色に染まる。


「オリオンマン、お前の命の重さ………計らせてもらうぞッ!」


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