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第二十九章 戦気高揚

エメラは通路にひしめくようにある部屋には目もくれずに、ひたすら奥へと進んで行く。


「エメラ!どこに行くんだ?」


トーマスとしてはひとつひとつ隈なく調べたいのだが………


「どこって……決まってるじゃない」


呆れ顔で言ってやる。


「地下よ」


「地下あ?」


これだけ部屋があるのになぜ地下なのかと言おうかと思うと、


「大きな研究をする時は決まって地下よ。それに、外の地面見たでしょ?島の半分は森林で覆われているのに、研究所の周り全て干ばつしてたって事は、地下で事故があって不自然な環境が出来たに違いないわ。事故じゃないにしても環境が変わってしまうほどの何かが地下であったんじゃないかって。そう思うのが普通でしょ?」


見た目によらず意地悪な部分を持つエメラが、トーマスに教えてやる。


「そりゃまあそうだろうけど…………それだけなのか?」


「どういう意味?」


「ここはガーディアンの研究所だろ?メモリーが曖昧だとしても、何となくここを覚えているとか………」


トーマスが言いたいのは、エメラの生まれた場所はこの研究所で、失った記憶がそう告げてるのではないかという事。

もしそうならば、なぜかは知らないが嬉しい。


「残念だけど可能性は薄いわね」


廃墟になった研究所は、長年人が入った気配はない。使われていない研究所で自分が生まれたとは思えない。

 会話をしながら歩いていると、下へ続く階段を見つけた。

あんまり隠される様もない階段に拍子抜けするが、降りてみるしかない。願うは倉庫の類じゃない事。


「行くわよ」


「お、おい………大丈夫かよ?」


「何が?」


腐食の激しい階段。足を乗せる気にはならない。トーマスの視線が下に向くとそれに気付いて、


「落ちたら落ちた時よ」


勇気づけた。










「ビンゴだったな」


なんとか落ちずに地下へ着いた。狭い通路は一方通行で、迷わずそこへたどり着いた。

破裂した大きな透明のカプセル。何に使っていたのかは一目瞭然。研究されていたガーディアンが入れられていたのだろう。


「………………………。」


無言のままエメラは、当時のものとは思えないコンピューター機器を見て回る。


「俺は好きにはなれないな………こういう場所」


トーマスも見て回るが、人体実験をしたような空気に息が詰まる。人造人間とは言え、実験台にされ悲痛な叫びを轟かせていたのではと思うと怒りすら覚える。


「あなたは優し過ぎる。強がってはいるけど、本当は人を傷つけるなんて出来ないのよ。そこがいいとこでもあるけれど」


そう言われると照れてしまい、余計強がってしまう。


「買い被り過ぎだぜ」


憎めないところもあるものだと、エメラも思わず微笑んだ。

これ以上茶化されないようにトーマスはエメラから離れ…………というよりも逃げた。

地下の研究所は広い事は広かったが、真ん中に円柱のカプセル、周りに数台のコンピューターがあるだけで後はがらんとしていて、何かを探すにも探す場所がなかった。


「エメラ、ハズレだったんじゃないか?」


大きな手がかかりを期待したのだが、どうやら何もなさそうだ。


「そうねぇ…………秘密の研究所だからってそう都合よく行かないって事ね」


「上にいくつか部屋があったろ、そっち見てみようぜ」


そう言ってトーマスは来た道を戻ろうとする。


「待って!」


「なんだよ?」


トーマスを呼び止めエメラは立ち尽くす。


「…………………………。」


「…………………………。」


なぜ呼び止めたのか理由を言うのかと思えば、ただ黙りこくる。トーマスも釣られて黙ってしまう。


「感じる……………」


「あん?」


時間にして一分程度、ようやく口を開けばわけのわからない事を呟いた。


「な、何を感じるって?」


いつにない真剣な表情のエメラに、ちょっとだけびびってしまう。額の汗を拭って生唾を飲む。

意外に臆病なのかもしれない。


「この感じは…………ガーディアン!」


気配の主が定まったようだ。


「ガーディアン?α(アルファ)やβ(ベータ)じゃないのか?」


「違う。すごく強い気配」


いつにない真剣な表情は危機の到来を教えていた。


「………李奨劉り・しょうりゅうが来てるのか?それとも第6選定者か?」


「わからない。とにかく急いで戻るわよ!」


「わかった!」


どちらにせよ高揚する。汚名を晴らすいい機会だ。無様な姿を散々晒し高い授業料を払った。 そしてディボルトは身体能力の特化だけでなく、人としては不自然な力………神としては当たり前の力が備わる事を二ノ宮から学んだ。


「今度は返り討ちにしてやる!」


今のトーマスは自信に満ち溢れていた。


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