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第二十六章 銀髪の指揮官

「これが………人造人間研究所……?」


真音が見たものは建造物である事に変わりはないものの、研究所とはほど遠い建物だった。


「遺跡じゃないか……」


続けて言った。

上空から見た時は草木もあったのに、着陸した場所からこの遺跡のところまで植物は無かった。

渇ききってひび割れた地面。島の半分は干潟になっていた。


「遺跡と呼ぶにはちぃっとばかし小さいが…………中に入ればわかるか」


島の半分が干上がってる。有り得ない事だが現実。石田は研究所の大半が地下にあると睨んでいる。干上がってる原因はおそらくそこにある。だがそんな事はどうでもいい。地質調査に来たわけじゃない。


「中には俺と選定者達で行く。他はここで待機だ」


石田が眠れる獅子の仲間に指示を出した。


「待ってくれ」


トーマスが石田に言った。


「あんたらがこの島に来た目的、言えよ」


「…………どうしてかな?」


「レジスタンスとは無関係だろ、人造人間研究所は。何が目的だか知らない奴らと一緒に行動は出来ないね」


鼻が利く。石田は何か企んでいる。いや、彼ではなく眠れる獅子が石田に言い渡した任務。やはり胡散臭い。


「言う必要はない。君達だってそれぞれ目的は違うんだろ?なら詮索は無しだ。ここに何があるのかは知らないが、全員が納得して帰れる事を祈ろうじゃないか」


石田はトーマスの肩を叩いて先を行く。


「あ、待って下さい!」


真音が後を追うと、ユキもそれに続く。


「彼はプロよ。聞いたってまともな答えは返って来ないわよ」


ジルがトーマスに言って研究所へ向かう。


「早く済ませる…………ミルクを預けたままだから」


ダージリンはどうやら自分に言ったようだった。

預けっぱなしのミルクが気掛かりでしょうがないのだろう。

そしてエメラも足早に研究所へ向かう。トーマスに声を掛けないのは、勝手に着いて来る事を知ってるから。


「お、おい……エメラ!」


尻に敷かれてる事にトーマスが気付く事は…………ないだろう。










レジスタンスもまた人造人間研究所を目指してヘリを飛ばしていた。眠れる獅子と型式は違うが、軍用ヘリを3機。

リオも、指揮を取る為に出向いていた。


「指揮官、間もなく予定の場所に着きます」


軍服がはちきれそうなくらい強靭な肉体の男がリオに言った。


「わかりました。報告ありがとうございます」


指揮官とは思えない態度で礼を言う。

たいていの男は女性の部下になるのを拒む。軍服を纏うような者であればなおさら。それを知っているから謝意を尽くすように心掛ける。かと言ってナメられるような雰囲気は一切出さない。

頭のいい彼女だから成せる業だろう。


「隊長、これから行く場所へは選定者とガーディアン、それと眠れる獅子という組織の者達も来るとの情報があります。もしかしたら先を越されてるかもしれませんが。戦闘になる事を想定しておいて下さい」


口髭を蓄えた初老の隊長は、リオの丁寧な態度に戸惑いながら答えた。


「ですが、選定者とガーディアンは不思議な力を使うと聞いてます。ブラックスネーク部隊もブルースネーク部隊も殲滅させられた事を考えますと、少々不安が残るのも本音です」


一瞬でやられたと聞いている。

決して能力の劣る部隊ではなかった。むしろ誇れる部隊だった。それだけにそれを倒した選定者とガーディアンに警戒心を抱いてしまう。


「ご心配なく。部隊を壊滅させたのは第6選定者です。他の選定者は力を使いこなせてないと聞いてます。眠れる獅子が接触した選定者達は、まだ未熟なままでしょう。恐れる事はないと思われます。それに………」


銀色の髪を掻き上げ向けた視線の先には………


「第4選定者がいます。彼の実力は他の選定者より遥かに上。分はこちらにあります」


李とガーネイアがいた。


「よろしく頼みますね、李奨劉」


リオは笑顔を見せたが、李は目を反らした。


「フン………あんたらの為に行くんじゃない。自分の為だ」


「貴様!口の利き方に気をつけんかっ!」


生意気な李を隊長が怒鳴り付けるが、本人は気にも止めない。


「隊長、構いません。十代の男の子なら当たり前の反応でしょう」


リオはシートベルトを外すと李の前まで行く。


「…………でもね、あまり自分を過信するのはよくないわ」


「過信?俺が?」


「ええ。過信は命を落とす最大の理由よ」


「そいつはわざわざご忠告ご苦労な事だ」


まるで聞く気もない李の頬に手を近づけ撫でる。そして、


「自分が特別な人間だなんて思っているのなら、今のうちに改めなさい。私達が丁寧な態度を取ってるうちに………」


迂闊にも李は怯んでしまった。リオは凄んだわけじゃない………なのに。


「リー………」


ガーネイアも感じた。リオの異様な気配を。人の上に立つ人物というのはこういうものなのかと、口にはしないが二人共思っていた。


「指揮官、どうやら先を越されていたみたいですね」


部下の一人が言った。

レーダーに反応があったのだ。それは相手のレーダーにも自分達が映っているという事。


「全て計画のうちです。気後れする事はありません」


美人はなんでも似合うというのは間違いだと気付く。リオは迷彩服を着ているが、彼女の顔立ちには似合っていない。

それでも武器を身体のあちこちに装備すると、それらしくは見えて来る。


「隊長、私達の目的はガーディアンに関する資料です。それさえ手に入れば他に用ははありません。それまで私達の護衛を願います」


「了解!」


軍人の顔で答えた。


「李奨劉、あなたには選定者の相手をお願いします」


「言われなくてもそのつもりだ」


戦いの幕が上がった。


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