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第十九章 渦中へ

真音が見せた不思議な技と、ガーディアンとのディボルト。石田にはまだ現実なのか夢なのか判断がつかなかった。


「あれがガーディアンの恩賞なのか………甘く考えていたな」


自分の眼球すら信じられないようではと、出直す決心をした時だった。

闇の中を我が物顔でじりじりと歩いて来る輩がいた。それも結構な人数で。真音達は気付いていない。

石田は目を凝らしてよく見る。


「………こんな時に」


暗視ゴーグルをかけ、ライフル銃やらマシンガンやら引っ提げている。

暗視ゴーグルなんか無くても視界の確保は十分だ。それでも暗視ゴーグルを装備してるのは、確実に真音達をしとめる為だろう。たった三人の少年少女を殺す………ただそれだけの為に。


「くそったれ!」


石田は潜んでた木から飛び出て、


「逃げろーっ!!」


叫んだ。


「石田………さん?」


突然叫ばれ驚く真音だったが、石田の叫び声を聞いてレジスタンスが慌て始めた。


「気付かれたぞ!急いで選定者とガーディアンを殺せ!」


まるで脱走犯を追うが如く、レーザーポインタが一斉に真音達に注がれる。


「何?何が始まるの?」


美紀が騒ぎ立て、


「真音!逃げよ!」


ユキもこの危機に焦りを隠せない。


「早く確保しろっ!」


逃げる暇も場所もなかった。あっという間に囲まれる。


「如月君!!」


拳銃を懐から取り出し、真音達を助けようとしたが石田も囲まれてしまう。


「貴様、何者だ!?」


額、胸、肩、腹、足と、レーザーポインタがところ狭しと石田の身体にひしめいている。


「さあて……何者かね」


「余裕を噛ますのは構わんが、状況をよく確認する事だ」


石田を諭すように言い付ける。

一方、真音達もレーザーポインタの餌食になっていた。


「第1選定者・如月真音だな?」


「なんだよ、あんたら」


精一杯の抵抗だ。


「こちらブルースネーク。ターゲットの確保に成功。これより射殺する」


どこの誰かは知らないが、聞き捨てならない事を言ってのける。


「射殺って………私達何もしてません!」


美紀は何か勘違いしてるようだが、それを正してる余裕は真音にもユキにもない。


「撃ち方用意!」


貪欲な鈍い光を放つ兵器が真音とユキと美紀、そして石田に向けられた。


「…………終わりかよ」


さすがの石田も諦めた。

名のある君子であっても奇跡を起こすのは不可能だろう。

レジスタンスが石田に拳銃を捨てさせないのは、撃たれても問題にならないからだ。つまり、全員が防弾チョッキを着ている。

射殺命令が下りようとした瞬間、辺りをとんでもない光が包む。マグネシウム弾だ。

肉眼でも痛いくらいの光、暗視ゴーグルをかけたブルースネーク部隊の連中は、目を潰す思いだろう。


「間に合ったな」


真音と美紀の腕を引っ張り上げた男がいた。


「くっ………誰だ?」


目が開かない真音に男の姿を確認する術はないが、石田でない事は確かだ。

そしてユキも腕を誰かの肩に回される。


「この気配…………ガーディアン?」


同じ匂いがする。うっすらと開けた目には、赤いガーディアンスーツが見える。


「セイイチ!Type−α(アルファ)は保護した」


「よし。今、仕上げをする。そしたら今日は退散しよう」


何やら男と女が会話をする声がして、石田は目を向けた。

男は白いファーのついたコート。外跳ねの髪。

女は赤い全身を覆うスーツと銀色の髪。


(あの………男………)


拳銃を握り立ち上がる。それに男は気が付くと、


「元気そうでなによりだ」


そう言って石田に近付き、下腹に蹴りを捩込んだ。


「ぐおっ……………」


肝心なところで男の顔を見ないまま気を失う。


「立っててくれ」


真音と美紀に言って刀を抜く。彼は第6選定者の二ノ宮だ。


「ロザリア、ディボルトだ!」


ロザリアもユキを立たせ、ディボルトする。


青生生魂せいじょうせいこんの錆になれ!」


廃工場の時と同じに、刀を一閃してレジスタンスの連中を一気に倒す。

何が起きたのか真音達にはわからない。まともに見た閃光に目が働かない。


「終わりだ。行くぞ、ロザリア」


ディボルトを解き、再び二ノ宮は真音と美紀を、ロザリアはユキを抱え立ち去った。










二度目の呼び出しにもビリアンは顔色は変えなかった。


「また第6選定者の仕業かね?」


長老達の機嫌はいつにも増して悪かった。


「やり口からして可能性は高いです」


ビリアンは事務的に報告した。


「君のその『可能性』という言葉の使い方はどうも気にいらん」


「申し訳ありません。なにぶん証拠が乏しいもので」


「言い訳にはならんよ、ビリアン君」


毎度の事なのだが、代わる代わる話すのはうざったくて敵わない。


「レジスタンスを組織するのに一体どのくらい金を注ぎ込んでいるか………とてもじゃないが、君の給料をカットしたくらいでは元は取れんのだよ」


要するに、失敗するなと言いたいのだろう。

多分、気の遠くなるような金が注ぎ込まれている。国一つ買えてしまうような。しかし、長老達にとってはたいした金額じゃない。そういう人間でなければ非合法な闇組織は立ち上げられない。


「ですが、これでわかった事もあります」


「ほう………納得いくものなのだろうね?」


「はい。第6選定者は私達の動きを知っているようです」


廃工場に続き、あまりにいいタイミングでの登場には裏があると読んでいる。


「どうやって?ありえん話だ」


「推測ではありますが、レジスタンスに第6選定者に内通者がいるのではないかと」


「内通者?」


「はい」


長老達がなにやら談議に入る。

内通者がいるとは思えないのだろうが、他に説明がつかない。第6選定者のタイミングの良さは偶然ではない。


「ビリアン君、内通者については我々も同意見だ。従って、調査を至急行いたまえ」


「承知しました」


「それと、ヒヒイロノカネは多少の強攻をしてでも奪うのだ。時間を無駄に使うのは感心出来んよ」


いつも最後を締め括るのは正面の座にいる長老。物分かりのいいそぶりはしているが、その本心は要注意だ。


「心得ておきましょう」


きっとこちらの真意は見透かされている。あえて知らぬ振りを通しているのだ。

だからこそ都合がいい。今のうちにやれる事はやっておきたい。ビリアンは野望を胸に抱いて長老の座を後にした。


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