表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/126

第十七章 動き出した運命

「お、おい、赤木……!」


なぜか無視する美紀を追っかけながら校内を歩き回る。


「待てって!」


美紀の腕を掴む。


「離して!」


「なんで無視するんだよ!」


真音の手を振りほどく。


「自分自身に聞いてみれば!?」


いつになく怒っている美紀に引き気味な真音だが、


「意味わかんない事言うなよ。なんで怒ってるんだよ?」


なんでと言われても返答に困る。まさかヤキモチだとは言えないし、本人がそれに気付いてないというややこしい事態なのだ。


「なんでって………わかんないっ!」


そうなってしまう。


「じゃあ怒るなよ!」


「怒ってない!」


非常に疲れる展開を避ける為、真音は美紀を誘導する。


「なら話聞いてくれるよな?赤木しか話せる奴いないんだ」


「如月君、彼女二人もいるでしょ!」


「彼女ぉ?」


「あの変な格好した女よ!」


白黒はつけたいらしい。


「ユキとエメラか?あいつらはガーディアンだって。エメラは別の選定者のガーディアンで、たまたま家に来てただけ。別に彼女なんかじゃない」


「嘘言ってない?」


「言ってない」


誘導は失敗だ。疲れる展開になってしまった。


「そ、だったら話聞いてあげてもいいよ」


ため息が廊下の埃を掃うように漏れる。


「何?嫌なの?」


「ち、違う!嫌じゃないです!」


ユキに振り回され、美紀にまで振り回され………それが幸せのひとつだと知るまでは、まだまだ人生経験が足りないようだ。


「実は、部室の鍵を借りたいんだ」


「部室の?なんに使うの?」


「いや…………練習っていうか………」


「部活に来ればいいじゃない」


「夜に使いたいんだ」


『夜』というキーワードは、美紀の妄想スイッチを押す。


「夜に部室なんて………」


「選定の儀については説明したろ?状況が悪化したっていうか………戦うって決めたんだ。だから少しでも練習したいんだ。。誰にも気を遣う事なく」


「あの女も?」


「ユキ?ああ、もちろん一緒だ」


真音に悪気は全くない。重ねて言えば、美紀に妄想癖がある事も知らない。美紀が真音を好きなのも知らない。素直なだけなのだが、その素直さがいつも災いする。

美紀が夜の部室で何が行われるか妄想する。










「あの的を射抜くまではやめられないよ」


暗闇の中の的を射抜く。高い集中力が求められる。


「真音………」


ただ見守るユキは神に祈る。既に限界を超えてる真音の身体が、この一本で休めるようにと。

そして矢を放つ。暗闇を裂く矢は、迷いもなく的を射抜いた。


「真音!」


歓喜する。


「目標達成だ」


ユキが駆け寄り真音の手を握る。


「おめでとう、あなたはもう私がいなくても生きて行ける」


「何を言ってるんだ。まだ射抜いてない的がある」


そう言ってユキの胸元に指を当てる。


「ま、真音…………キザよ……」


「ユキがそうさせるんだ」


照れるユキを抱き寄せる。男らしく力いっぱい。


「バカ………こんなところで……」


「的を射抜くまでやめられないよ」


「真音…………」


ユキは瞼を閉じて唇を……………










「不潔よ!!」


「ぬわっ!!」


突き飛ばされて後ろに転げる。


「あっ……!ご、ごめんなさい!」


妄想だった事に気付いて慌てて真音を起こしてやる。


「イテテ…………勘弁してくれよ……」


なんだかよくわかってないが、勘弁してほしいのは確かだ。


「だって如月君が………」


妄想でユキといちゃつくからとは言えず、悶々とする。


「まあなんでもいいけど、鍵貸してくれるんだろ?」


夜に部室を使うのは当然問題外。見つかれば大事になる。


「ダメよ。先生に見つかったら怒られちゃうもの!」


「大丈夫だって。迷惑はかけないから!」


「そういう問題じゃ………」


「頼む!赤木にしか頼めないんだ!」


「でもぉ………」


真剣に頼まれれば頼まれるほど断れなくなる。惚れた弱みだろう。真音の状況も、まだ信じたわけではないがわかってるつもりだ。真音が嘘を言ってるとも思えない。

拝み倒すように手を合わせる真音を見て、条件付きで認める事にする。


「わかった」


「ホントか!?」


「ただし、条件があります!」


偉ぶりながら胸を反る。


「条件?」


「私も同伴する」


「ど、同伴?」


「一応部長だし、責任がありますから」


目的は二つ。真音が言ってる事が事実かどうか。事実ならディボルトというものを見てみたい。もう一つは、ユキと二人きりにさせたくないのが理由だ。


「う〜ん〜…………」


「どうして考えるの?」


面白くない。すんなり答えない真音に苛立ってしまい、凄んで見せる。


「わかった。赤木の言う通りにするよ」


それがベストだろう。


「今夜八時に校門前。頼んだよ」


美紀の肩をポンと叩いて使い慣れないウインクをかます。


「ちょ………如月君!」


行ってしまった。


「んもうっ!勝手なんだから!」


惚れてしまったが為に、過酷な運命を辿る事になるとは美紀は知らない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ