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第百二章 純白の知らせ

ジルが来てくれた事によって、トーマスとエメラは難を逃れたように見えた。だが、それは一時的なものでしかなかった。

戦う相手はガーディアン・ガールであるダージリン。ジルはダージリンあってこそ選定者として戦って来れたに過ぎない。


「ジル………あなたでは私に勝てない。でも逃がさない。今度は仕留める」


ダージリンにもそれはわかっている。


「ダージリンの言う通りだ、せっかく来てくれてもお前だけじゃ戦えない」


死人が一人増えるだけ。トーマスには、なんの希望もならなかった。


「な〜に弱気になってんのよ。勝つ見込みがなかったらわざわざ来ないって」


ジルは自信満々だった。そのわけは、


「エメラ、あんたまだ戦えるでしょ?私とディボルトしなさい」


「わ、私が……?」


この提案には、さすがにエメラも驚いた。だが、正攻法だった。


「お願い。あの子を救いたいの。今、頼れるのはエメラ、あなたしかいないのよ。力を貸して」


ディボルトする事に問題はないだろう。ナノビートを持っていればガーディアンを意識の中に取り入れられる。しかし、トーマス意外の選定者とディボルトした事はない。ジルの意識の中に入って、うまく意志の疎通が計れるかわからない。パートナーの考えてる事がわからない以上、戦いにならないかもしれない。

ある意味、これは賭けだ。


「ディボルトしても、ジルにどんな力が備わるか………」


エメラは責任の重大さから、イエスとは言えない。


「あなたしかいないのよ」


ジルの説得では足りないと感じたのか、トーマスが背中を押す。


「エメラ、ジルに手を貸してやれ」


「でも………」


「李やガーネイアの時みたいにまた悲しい思いはしたくないだろ?お前にしか出来ないんだ」


トーマスは記憶を戻したエメラの力に賭ける。

レジスタンスと戦っていた真音を助けに行く時、石田からガーディアン・ガールの実情を聞いている。万が一、ガーディアンに記憶が戻れば、研究所での人体実験のトラウマから暴走する可能性があると。幸い、エメラにその様子はない。


「エメラ」


トーマスはエメラの目を見つめる。


「………………わかったわ」


エメラはそれに応えてみようと思った。


「じゃあ早速ね」


ジルは手を差し出した。

エメラは大きく頷いてジルの手を握り、ディボルトをする。


「さあて…………」


ジルは深呼吸を一回してから、ダージリンを見る。


「悪い子にはお仕置きしないと」


「そう上手くはいかない」


ジルとダージリン。退くに退けないのは、そこにまだ絆があるから。

ジルは絆を取り戻す為。

ダージリンは絆を消し去る為。

史上最大の喧嘩が始まった。










石田と冴子がイージス艦に乗艦してるのは、戦況をいち早く知る為。そんな二人の元へ、ヘリが飛んで来た。

乗組員の誘導に従って規定の場所へ着陸すると、正之が降りて来た。


「指揮官!石田さん!」


「あら、どうしたの?」


「正之……」


その後ろから見覚えのある女性も着いて来る。かなり真剣な顔つきをしている。嫌な予感がした。


「嶋津さん!?」


見覚えのある女性は香織だった。石田は驚いて正之を押し退けて駆け寄る。


「お久しぶりです。その節はお世話になりました」


丁寧に深々と頭を下げる。


「どうしたんですか?こんな場所まで」


「はい。実はお渡ししたいものがありまして」


バッグからA4サイズの茶封筒を取り出して石田に渡す。


「腰抜かしますよ」


正之が口を挟んだ。

冴子もやって来て、その中身を興味深く見守る。中から出て来たのは古びた一枚の集合写真。白黒の。


「………これは?」


石田は目を凝らして見たが、白衣を着た医者らしき人物が四十人くらい並んでいる。だが、残念ながら画像が粗く、よく知った顔でなければなんだかよくわからない。


「ひい御祖父様の遺品を整理してましたら見つけまして。おそらく研究所にいた頃の写真かと」


それは見たらわかる。まさかこの大事に心霊写真を持って来るような空気の読めない女なら、早々にお帰り頂くだけ。正之には腰を抜かすくらい折檻が必要だろう。


「この人が嶋津氏です」


正之が指を差して冴子に教えた。


「これのどこを見たら腰抜かすんだ?」


ジロッと正之を睨むと、


「ちょ、こ、これ!」


冴子が目を丸くしてる。


「指揮官まで………」


本当に心霊写真ならマジギレしてたかもしれない。しかし、同じ反応を迂闊にもしてしまった。


「……………バカな。う、嘘だろ?」


前列の中央、嶋津の隣に座る人物。その若さが目立つ顔立ち。写真の持つ意味から、それが博士と呼ばれていた人物である事は確かだ。つまりはメビウス。

その顔を見て腰は抜かさなかったが、背筋が凍りついた。


「もうひとつ報告があります」


正之は襟を正す。


「赤木美紀が目を覚ましました」


「本当なの?で、彼女は?」


冴子は同じ女性として美紀を気にかけていた。様々なストレスを既に受けている。問題は、彼女がガーディアンである事。それを知らずにストレスから暴走してしまったら………。


「それが………行方が………」


「なんですって!?斎藤君、あなた何やってたのよ!」


その時だった。乗組員達が騒々しく艦の後方へ走って行く。


「な、なんだ?」


石田も思わず走る。それに続いて冴子達も。

むさ苦しいくらい屈強な男達の人だかりがあり、そこを掻き分け中に入り込むと、


「き、君は………」


美紀がいた。純白の翼に純白のワンピースを着て。


「美紀ちゃん!」


今度は冴子が石田を押し退ける。


「如月君…………」


「この子………ここまで飛んで来たの?」


気を失った美紀を抱き起こし、ただただ驚くしかなかった。

これが何か良からぬ予兆であるような気がしてならない。

そう感じたのは、冴子だけではなかった。


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