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第百章   力。

国連が動き出した。世界中に散らばる核兵器を発射させない為。


「止められるでしょうか……」


石田は不安を拭い切れていない。

二ノ宮は急かせる様子は見せなかった。つまり、発射の権限はメビウス一人に委ねられている可能性を示唆している。戦いに行った後にパソコンを開けと言ったのだ。戦ってる最中なら、メビウスも簡単には発射出来ないだろう事を知っての事だろう。


「止めてもらわなきゃ困るのよ」


冴子は祈った。一発の発射もされぬようにと。


「国連が動き出した事をメビウスが知ったら、迷わず全弾発射するでしょうね」


「簡単に言わないで。権限がメビウスにあるとしても、彼に何かあれば承諾無しに発射される可能性もあるのよ。苦しい戦いだわ」


「でも、発射されて世界が終末を迎えても、人類はそれに何を言えるでしょうか。結局は責任を誰かに押し付けたがる。命を賭けて戦ってる者達がいるのに」


「石田君………私達にそれを語る資格はないのよ。最後まで手を尽くしてくれたのは、選定者とガーディアン達なんだから」


イージス艦の甲板から、今この瞬間にも戦ってるだろう真音達を想う。


「そうですね。ところで指揮官、例の頼み事はどうなりました?」


頭上の戦闘機が飛んで行くのを待ってから、


「大丈夫よ。国際指名手配から外してくれるって。彼も被害者だし、なにより、核兵器の情報を報せてくれた事は、世界を救う大きな手柄だからって。ただ、しばらくは誰かの監視下に置かれるだろうけど………それはあなたでも構わないしね」


「ありがとうございます。これで親友を追わなくて済みます」


「早く伝えてあげられるといいわね」


石田が冴子に頼んだ事。それは二ノ宮に対する国際指名手配の解除。無理は承知で頼んだのだが、満足出来る返事がもらえて安心した。後は戦いが終わるのを待つのみ。


「高い酒、キープしてるんですよ。祝い酒になりそうです」


「あ、私も混ぜてよね!」


「ん〜、考えておきます」


「な、なんでよぉ〜〜!」


「アハハハハ」


少しだけ、希望が見えた。










ダージリンの攻撃は予想していた通りきつかった。

トーマスの攻撃などまるで通じず、往々と立ちはだかる。


「くそっ!念力は反則だろ!」


どんなに技を放っても、念力で軌道を変えられてしまう。


『トーマス、記憶の戻った今なら、私にもダージリンと同じ力が使えるかもしれないわ。ディボルトを解いて………』


「いや、それならわざわざディボルトを解く必要はない。二ノ宮はディボルトしたままガーディアンの力を使ってた。だったら俺にも出来る!」


ディボルトを解いてしまえばエメラはダージリンに太刀打ち出来ても、トーマスは対等には戦えない。だったら、ディボルトした状態で更なる力を使える事を見出だす方が得策だと考える。


「頑張っても無駄………しつこい男は嫌われる」


右手を前に出してトーマスの動きを封じようとする。


「おあいにくさま!アメリカじゃ積極性の無い男は嫌われるんだよ!」


とにもかくにも撃つしかない。

右手から炎、左手には冷気。合わせ技とまではいかないが、同時に放たれた、もはや魔法と呼ぶべき技は互いに交差を繰り返しダージリンを狙う。


「話にならない」


標的をトーマスから二つの魔法へ移し、その運動を停止させる。


「今だ!」


それを待っていたかのように、トーマスは高くジャンプして天井のライトを背負う。落下途中で横に飛びのけ、ライトで目を眩ませようとしてるのだ。

ダージリンはゆっくり上を見る。魔法を停止させたまま。


「力で敵わないなら頭を使わないとな!」


そこからダージリン目掛け急落下しようと………した。


「私の勝ち」


ダージリンは魔法を消し去り、勝ちを確信した。そのわけは……


『トーマス後ろ!』


「何……………ぐあああぁっ!!」


トーマスが背負ったライト。そこから熱線が照射され、トーマスの背中を直撃した。


「ぐあっ!」『きゃああっ!』


派手に床に落ち、全身を強打してディボルトが解ける。

何が起きたのか二人に理解する余裕はない。

ダージリンはつかつかと歩みより、伏せるトーマスに説明してやる。


「研究所には侵入者を撃退する仕掛けがある。あれはライトのように見えるが、光を集束させレーザーとして放つ一種の光線銃。一定時間、光が遮断されると発射される仕組み」


「そ……そりゃご丁寧に……」


焼けた背中の傷は、空気の僅かな動きにさえ激痛を奏でる。

 ディボルトしていたエメラに傷は無いが、ダメージは共有される。


「うっ…………ま、まいったな………こんなのアリかよ……」


あまりの痛さに立とうにも立てない。


「貫通しなかったのが奇跡」


見上げるとダージリンが見下ろしている。


「私は………誰も信じない」


ダージリンの瞳に闇が灯り、トーマスとエメラを殺す準備を整える。


「トーマス………」


エメラはトーマスに手を伸ばす。


「終わり……かよ………」


諦めたその時、爆発音が響いてダージリンが吹き飛んだ。


「………!?」


トーマスは伏せたまま音のした方を見た。そこには………


「ジ………ジル!?」


バズーカを肩にジルがいた。

真後ろの壁にはでっかい穴が開いて。


「手当たり次第だったんだけど…………私って運がいいのねぇ」


服はいつもの恰好だが、ポニーテールをしている。ハイヒールは履いてなく、代わりにロングブーツを履いている。だが、それが尚もジルのスタイルを引き立たせていた。


「久しぶりねぇ、お二人さん」


トーマスとエメラにウインクした。


「なぜ…………確かに殺したはずなのに」


どうやらバズーカは二発撃たれらしい。一発は壁、二発目は………ダージリンに向かって。

弾丸をダージリンは受け止めていた。


「私も死んだと思ったわよ。でも、ほら、私って強運の持ち主だから」


「気に入らない」


無表情が売りのダージリンが、表情を険しくした。


「ジル……お前どうやってここに………」


なんとか片膝を着くくらいまで起きてトーマスは言った。


「決まってんじゃない。レンタルしたのよ、国の軍用ヘリを」


「んなもんレンタル出来んのかよ………?」


「何言ってんの。私んち、結構な金持ちなんだから。このくらい余裕よ」


レンタル料でも聞いてやろうと思ったが、これ以上ショックを受けたくないので聞くのをやめた。


「ダージリン、元気してたぁ?」


「ジル…………」


ジルを睨む。そして、


「金………金………カネカネカネカネカネカネ………また金でものを言わすのか」


口調に激しさは見当たらなかったが、確かに怨みはこもっていた。


「フン、ひがまないの。お金ってかなりの力持ちなんだから」


ジルは、エメラを起こすトーマスを庇うようにダージリンとの間に立つ。


「金が無ければ何も出来ない卑怯者め」


ダージリンは罵る。


「卑怯者はあんたでしょうよ。復讐するなら一人でやりなさい」


ジルはバズーカをドカッと下ろし、仁王立ちして全ての罵倒を吹き飛ばす。


「金持ちナメんじゃないわよ!」


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