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第九十九話 忙しい日々再び



 最近の吾輩の一日は、こんな感じである。

 まず夜明け前に収集部屋へ行き、採取用の骨たちが集めて来た物を分類する。

 

 骨、石、植物の各部屋にそれぞれ運ばせた後、必要な物をさらに選り分ける。

 防具の素材になりそうな物や鉄鉱石は、鍛冶屋行きの骨に。

 虫瘤や薬の原料となる草は、薬師のエイサン婆さん行きの骨に。

 それとキノコと兎肉は、教会行きの骨へと割り当てる。


 余った兎の内臓と人間どもには不要な木の実を、飼育部屋のネズミとカラスたちに持っていってから、工作部屋へ足を運ぶ。

 ここも鍛冶屋が道具を融通してくれたので、かなり作業が捗るようになった。


 現在は弓と矢、黒曜石の石斧を主に作らせている。

 下僕骨たちが使う武器は消耗品に近いため、予備はいくらあっても足りない状況なのだ。


 工作部屋に材料を運び入れさせ、今日の制作する品々を命じた後、黒棺様の部屋へ移動する。

 そこで仲間の骨たちと、本日の予定を確認しておく。

 

 今日の午前中だが、五十三番とニーナは花園へ出かけ粘糸だけを回収してくるそうだ。

 タイタスは猪の世話を、ロクちゃんは薬師の家に行くと。


 一角猪であるが、実は新たに一頭の雌と子猪四頭が増えていた。

 これらは、五十三番が設置した落とし穴の罠とくくり罠で捕らえたものだ。

 群れの主としてタイタスを認識したらしく、今は飼育場から解き放っても、朝と夕方の餌の時間になると当たり前に帰ってくるようになった。

 

 あと羽耳族の子供であるが、四日前に森で遊んでいてムカデに足を噛まれる事件が起きた。

 肌が黒く変色し痺れて動けないようなので、急いで薬師の家まで連れて行き手当てして貰ったのだが、ついでにそのまま預かってもらうことにした。


 ずっと吾輩たちで面倒を見るのも無理があるし、人間の言葉を喋れたほうがこの先役に立つからな。

 ただロクちゃんが物凄くゴネたので、時間があれば遊びに行って良いと許可してある。

 婆さんの話によると、仲良く石を投げたり飛び跳ねたりして遊んでいるようだ。

 ニーナが居なくなった穴を子供がちょうど埋めたようで、婆さんの方も少しばかり元気が出てきたように思えた。


 朝の顔合わせが終わったので、下僕骨たちを引き連れて村へ向かう。

 開拓した土地は、かなりの広さになりつつあった。


 いつも通り倒した木材を、下僕骨たちに川原へ運ばせる。

 材木置場もかなり手狭になってきたので、そろそろ拡張しないと不味いな。


 太陽が真上になる頃、兎肉とキノコを煮込んだスープの鍋を子供たちが畑に運んでくる。

 これは黒パンと水だけでは力が出ないだろうと、吾輩が考案したものだ。


 村人たちが昼食を楽しむ間、吾輩は少し離れた場所で子供たちの昼ごはんの会話に付き合う。

 最初は村人たちと一緒だったのだが、どうも吾輩が居ると萎縮するようなので遠慮することにしたのだ。

 もっともこの距離なら聴覚鋭敏で、十分に全員の会話は聞き取れるがな。


 それと下僕骨には当然、昼休みなどなく、この間も切り落とした枝や根を婆さんのところへ運ばせている。

 一部は穴に放り込んで肥料に変えつつあるが、残りは生木のせいで煙が出やすいの利用して毛皮を燻すのに使っているのだ。


 灰色狼の毛皮の加工は臭いの問題もあるので、村外れの薬師の婆さんの家の近くに専用の小屋を仮ごしらえで建てることで解決した。

 その横では粘糸を黒絹糸に加工する小屋も作り、村の手のあいた女性たちが交代でせっせと働いている。


 昼の休憩を終えた農夫たちが畑仕事に戻るのに合わせ、吾輩も森の開拓作業を再開する。

 この時間になると目覚めたカラスどものどちらかが、吾輩の肩に止まりに来る。 


 こいつら夫婦カラスは不思議なことに、互いの位置が大体であるが分かるらしい。

 視界共有を強化していくと、そのうち吾輩たちも使えるようになるかもしれんな。

 もっともまだ先の話なので、今はカラスたちに緊急用の連絡係をさせている。


 吾輩の方に一羽、五十三番かタイタスの方に一羽という感じである。

 五十三番たちは、昼から狼狩りを兼ねた滝の上の探索に出かけると言っていた。

 新しい生き物を見かけても、無理に手は出すなと言い聞かせてある。

 

 黙々と地面を揺らしながら、森を平地へ変えていく。

 夕闇が訪れる前に、村人たちは作業を切り上げて村へ帰っていった。

 吾輩も材木置場へ移動し、出来上がった木杭の出来栄えを確認する。

 

 しばらく待つと、五十三番とニーナがやってきた。

 狼の群れはカラスの偵察のおかげで、無事見つけることが出来たらしい。

 皆の連携も良くなってきており、無事五匹の捕獲に成功したと。

 痺れ毒で麻痺させておいて、生きたまま皮をはいで黒棺様に捧げてきたとのことだ。


 剥いだ皮の方は、裏についた脂や肉をネズミに綺麗に掃除させてから持ってきて貰った。

 これは下僕骨たちに持たせて、二晩ほど川の流れに晒しておく予定だ。


 ニーナと五十三番には村の南側に下流で待機してもらい、流した木杭を受け取ってもらう。

 そしてそのまま柵作りを手伝わせる。


 ちなみにタイタスとロクちゃんはこの時間、猪に乗って北東の丘陵地をひとっ走りしている。

 その後、猪たちに餌をやって、その足で甲虫狩りへ向かうはずだ。


 吾輩たちの柵作りも、ほぼ完成に近づいていた。

 この調子なら、村長たちが戻ってくる前に余裕で間に合うだろう。


 怪我が治った村長だが、ダルトンが御者をする馬車で五日前に王都へと旅立っていた。 

 荷台にはもちろん、黒絹糸と狼のなめし革が積み込んである。

 きっと優秀な人材を、大勢引き連れて帰ってくるに違いない。

 今からとても楽しみである。

 

 夜半すぎに作業を切り上げ、五十三番とニーナは先に引き上げる。

 二体で組手やら模擬戦をして、技の開発に勤しんでいるらしい。

 あとたまに、仕掛けた罠を見に行ったりもしてるとか。


 残った吾輩の方は、柔らかくして杭が刺さりやすくした地面を今度はきつく固めていく作業に入る。

 少し空が白みかけてきたら作業を切り上げ、カラスを呼び戻すと洞窟へと戻る。


 そして丸芋の畑を見回ってから、収集部屋へと足を向ける。

 こんな感じで吾輩たちの日々は、瞬く間に過ぎ去っていった。



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