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第九話 大きな収穫


 

 何も変わった気がしない。



 と、思えたのは一瞬だけだった。

 部屋を見回すと、ポツリポツリと何かが引っ掛かる。

 そこに何かが居るぞと、薄ぼんやりした感触みたいなものが感じ取れるのだ。


 天井のちょっと小さめなのはコウモリたちだな。

 部屋の隅や壁の向こうのかなり小っちゃいのは、さっき逃げたネズミどもか。


 熱感知に近いが、範囲が倍以上は広い。

 ただ確実に居るぞ的な感じではなく、なんか居そうだな~といった曖昧っぷりだが。


 ま、取り敢えず棺の確認だな。


『反響定位』 段階3

『頭頂眼』 段階1

『気配感知』 段階1

『棒扱い熟練度』 段階8

『投げ当て熟練度』 段階6

『骨会話熟練度』 段階1

『刃物捌き熟練度』 段階1

『刺突耐性』 段階3

『圧撃耐性』 段階2

『打撃耐性』 段階1

『しゃがみ払い』 段階3

『齧る』 段階1 

『頭突き』 段階0

『爪引っ掻き』 段階0

『粘糸』 段階0

『体当たり』 段階0

『くちばし突き』 段階0


 増えてる増えてる。

 って、なんか結構増えてるぞ。


 よし、上から見ていくか。

 気配感知、まずはこれだな。

 ああ、なるほど、気配か。


 言われてみれば、この言葉にし難い存在感はまさに気配そのものだ。

 しかし、なんとなくでしか感じとれないとはいえ、これ物凄く便利じゃないだろうか。


 今までの探索方法は、反響定位と頭頂眼と熱感知の三つだけ。

 それぞれ便利ではあるが、欠点も大きい。


 反響定位の場合、まず音を立てないと何がどこにあるか分からない。

 そして音に反応して獲物が動きを止めると、背景と混じってしまい区別がつかないのだ。


 頭頂眼は確かに光はよく拾ってくれるが、映像の解像度はかなり低い。

 ぶっちゃけると、子供が書いた塗り絵のようなものだ。

 なのでこれも獲物の判別に、とても役に立っているとは言い難い。


 それに輪を掛けて大雑把なのが、熱感知だ。

 なんか周りの温かさを、ぼんやり感じとれるレベルでしかない。

 だから体温が低いトカゲとかの生き物は、簡単に見落としてしまう。

 あと棺から生まれた骨たちが洞窟の外へすぐに行ってしまうのは、単純に太陽の熱を熱感知がうっかり拾ってしまうせいではと吾輩は推測している。

 

 そういえば今さらだが、熱探知って棺に出てないな。

 もしかしたら元から持っていた能力は、表示されないのだろうか。 


 話がずれてきたので元に戻すと、この気配感知はピンポイントで生き物の場所がわかるようだ。

 これまでのちょい今一つな感覚系とは、かなり違っているので大いに期待できるな。

 あのうっとうしいネズミたちから、こんな素晴らしい能力を授かるとは……。


 そしてさらに気分を盛り上げてくれる技能も追加されていた。

 その名も、刃物捌き熟練度。

 

 これは、五十三番の切れ味抜群の右手が活躍したせいかな。

 体の一部を武器化しても、熟練度は発生するのか。

 将来的には剣とかも使いこなせそうだし、これも期待大だ。


 最後は圧撃耐性と。

 うーん、打撃と圧撃の違いはよく分からないが、耐性自体が増えるのは頼もしい。


 これはたぶん、吾輩が蜘蛛に圧されて死にかけた賜物だろうな。

 いっぺんに2も上がるとは、走馬灯を見たかいがあった。

 でも、流石にもう勘弁してほしいところだ。



 そんな吾輩の切ない願いだが、すぐに叶うこととなった。



 この後、悪戯ネズミどもが、かなり駆逐されたのだ。

 理由はもっぱら、ネズミたちがもたらしてくれた気配感知の恩恵である。

 コウモリの時もそうだったけど、自分の能力が仇になるのがどこか皮肉めいている。

 やはり余計な皮や肉よりも、基本の骨が大事ということだな。


 これまでは骨たちに全く気付かれずに洞窟内を自由に動き回っていた奴らだが、それも気配がバレた今となっては格好の的だ。

 流石に棍棒の振り下ろしは簡単に避けられてしまうようだが、骨たちの武器はそれだけではない。

 投げ当て熟練度が上がった今、骨つぶては恐ろしいほどの命中精度を誇っていた。

 おかげで洞窟はある程度、元の静けさを取り戻す結果となった。

 

 そしてネズミが減ったことで餌場としての旨味が減ったのか、蜘蛛はあれから姿を見せていない。

 まだ油断はできないが、ひとまずは安心といったところかな。 


 今回の件を考えてみたが、最初にコウモリがまずこの洞窟に棲みつく。

 そのコウモリを狙って、トカゲがちょいちょいやってくる。

 当然、ライバルである骨たちが邪魔なので、頭突きで倒してコウモリを奪っていたのだろう。

 だが厄介なトカゲも吾輩らに退治され捕食者がいなくなり、次はネズミが安全地帯として利用し始めたと。

 そこに蜘蛛が登場という流れか。


 ふむ。

 今回はかなり危ない橋だったが、上手くやれば色々な生き物をここに誘い込めるんじゃないだろうか。 

 よし、吾輩が体を取り戻したあかつきには、是非試してみるとするか。


 それはそうと、ネズミの魂数は1だった。

 期待はしていなかったので、ダメージはほとんどない。ちょっとはあったが。

 まあ、1でも大量に集めれば、それなりにはなるしな。


 そんなわけで現在の魂総数は、ネズミ十五匹分が増えて441。

 ただし同胞が三体戻らなかったので、30の消費で411。

 さらに先ほど、また新しい同胞が生まれたので401。


 まだギリギリの400台。

 ここは頑張って、粘って欲しいところだ。



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