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第六話 見えてきたもの



 結局、五十三番目が大人しくなるまで、二週間かかった。



 どうして時間が分かったかというと、実は新しい能力である頭頂眼のおかげである。

 なんとこの眼、光の濃淡を凄く細かく拾えるのだ。

 それで洞窟の中に居ても、差し込んでくる光の濃さで昼夜の区別が付くようになり、日数の計算が出来たという訳だ。


 大雑把だが時間が分かるようになったので、もっとも気になっていたことを計ってみた。

 ずばり骨たちの湧いてくる間隔だ。


 骨たちはある程度時間が経つと、勝手に黒い棺から出てくる。

 それに規則性があるのか知りたかったのだ。

 で、数えてみた結果、一日半で湧いたり三日後だったりと見事にバラバラだった。


 一定時間で自動的に湧いてくるのではなかったようなので、かなりホッとする。 

 ハッキリと断言できないが、一番ありそうなのは前の骨が戦闘継続不能となると、新しい骨が生み出されるパターンかな。

 

 なぜそんなことを心配していたかというと、理由はもちろん魂の残数だ。

 

 現在の魂数は466。

 この二週間で生み出された骨の数は七体なので、70消費。

 集めてきた魂はコウモリ十二匹、トカゲ一匹で、計28加算。


 差し引きで42の赤字である。

 おーい、どうなってんの?!


 このペースで行けば、あと五十体ギリギリという計算になる。

 その辺りを考慮せずに、黒棺様にぽんぽこ骨を出し続けられたら、すぐに詰んでしまう。


 だが一体ずつなら、じっくり強化出来れば活路が見えてくるはず。

 そもそも他の骨の奴らは協力とかしそうにないので、二体以上いてもあまり意味がないしね。


 それで話を魂数に戻すが、回収ペースが落ちたのは、単純にコウモリが減ってしまったせいだと思う。

 もう四十匹近く狩ってるしな。


 おまけにこの洞窟、あまり深くないようなのだ。

 なんせ、外からの明かりが入ってくるくらいだし。

 

 おかげで期待してたトカゲの追加も、一匹で打ち止めだ。

 そう言えば、あれだけ苦戦したトカゲだが、二匹目はあっさりだった。

 

 前のよりサイズが一回り小さかったというのもあるが、もう一つ大きな理由らしきものがある。

 新しい技能が、追加されていたのだ。


 その名も『しゃがみ払い』である。

 一瞬、何じゃこりゃと思ったが、よく見れば段階が1になっていた。


 これはもしかして、トカゲ戦での苦い経験から学んだということだろうか。

 その証拠として『尻尾払い』の文字がなくなっていた。

 元々、尻尾がないので使えない技だったのを、骨の体でも使えるように工夫したので名称が変わったっぽいな。

 

 視覚に加え、ついに技までも取得した骨たち。

 そりゃ洞窟の外に、ホイホイ出向いてしまうのは当然だろう。


 で、トカゲ以上の強敵に、バラバラにされていると。

 その証拠が、棺に浮かび上がる数々の段階0の技たちだ。



 『爪引っ掻き』、『粘糸』、『体当たり』、『くちばし突き』等々と。



 どんだけ、やられてんだよ!

 もっと地道にレベル上げてから挑もうよ、マジで!


 いや、ちょっと吾輩、言い過ぎたな。

 すまない、焦りが口から出てしまったようだ。


 実際のところ、じっくり熟練度を上げられるような手頃な相手や、簡単に魂を集められる弱い存在に、そうそう都合よく何度も出会えるわけがないのだ。

 一応、弱い生き物自体は、居ることは居るのだが……。

 おもに壁を這い回ったり、石の下に潜んだりと。


 だが骨どもは、そういう虫の類には一切反応しない。 

 これも予想なのだが、小さい生物って魂の数が1以下とかじゃないだろうか。


 いくら集めても、数にならないんじゃ仕方ないしな。

 それに小さい虫をプチコロしてても、熟練度も上がらんだろうし。

 

 問題は虫より大きいのに、スルーされている存在だ。

 う、噂をすればなんとやらか。

 小さな影が、チョロチョロと壁沿いを走ってくる姿が見える。

 


 今日も来やがったな、このネズミ野郎め!



 こいつらはトカゲが退治されてから、少しずつ出てくるようになった生き物だ。

 用心深い上にほとんど音を立てず移動するせいか、易々と骨どもの注意を掻い潜ってくるようだ。

 

 ヒクヒクと鼻先を震わせながら、ネズミは吾輩の側までやって来る。

 そしていつものように、吾輩に容赦なく歯を立てた。



 カリカリカリカリカリカリカリカリ。



 くぅぅぅぅう!!

 なぜかこいつら、骨を齧るのが大好きなのだ。

 

 だったらそこら辺に落ちてる骨を、いくらでも齧ってろと言いたいが、なぜかネズミどもは吾輩に寄ってくるのだ。

 この頭骨の絶妙な丸みが、こいつらを惹き付けて止まないのか。


 うわ、もう一匹増えやがった。

 思わず顎を閉じそうになるが、何とか堪える。

 音を立てると、驚いて逃げてしまうからな。


 痛覚どころか皮膚感覚自体ないので、どれだけ齧られても平気と言えば平気なのだが、正直凄くうるさい。

 カリカリカリカリと、ずっと頭の中で鉛筆を削られているような気持ちになる。


 だが我慢だ。

 最初の頃は、歯をカチカチ鳴らして一々追い払っていた。

 だが一週間ほどして、とある驚きの変化に気付いたのだ。


 なんと、棺にこっそり文字が増えていた。 

 『刺突耐性 段階1』と。

 後、ついでに『齧る 段階0』も。


 まさかネズミに齧られたくらいで耐性が付かんだろうと最初は考えたのだが、そのまま放置してみたら先日、刺突耐性の段階が2に上昇した。

 いやはや、ネズミ如きと油断してられんな。

 でもこれで、吾輩の頭もちょびっと頑丈になった気がする。

  

 まあ、今の吾輩に出来る精一杯の支援だ。

 だから頑張って、もっといっぱい魂を集めてきてくれ、我が同胞たちよ。 



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