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第四十話 帰還



「よし、吾輩の方の事情は大体説明し終わったぞ。次はそっちの番だな。一体何があったんだ?」


 黒焦げになった盗賊の死体をようやく全て洞窟に運び終えた吾輩は、腰骨を大きく伸ばして二体の仲間に尋ねた。

 準備してもらった新しい胴体に急いで乗り移ったり、崩れ落ちそうな砦で火に巻かれながら使えそうな品を頑張って運び出したり、逃げ遅れた赤ん坊ネズミを救出したりと、今まで本当に大変だったのだ。

 あの爆発的な火事さえなかったら、先にゆっくり話が聞けたんだが。

 

「どこからが良いですか?」

「どこというか、そもそもどうやって体を取り戻したんだ?」

「ああ、それ大変でしたよ。洞窟まで何とか這って帰ったら吾輩先輩の胴体だけ残っているし、予備骨部屋の前には石が積んであるしで、正直、心折れかけました」

「あの肋骨でよく動けたな」

「それは交換したので大丈夫でしたよ」

「交換……? そうか!」


 あの時の状況を思い返すと、確かにほぼ無傷の胴体が一つ残っていたな。


「ロクちゃんの体を使ったのか」

「ええ、片手ずつ移植したので、ちょっと時間がかかりましたけどね」

「それで戻ってからは、どうなったんだ?」

「何とか石を取り除いて予備骨部屋に入ったら、頭だけのロクちゃんが壁と石の間に挟まってまして……」

「倒す!!」


 ゴチッとロクちゃんに頭を叩かれる――五十三番が。

 

「あ、すみません、それは秘密でした。忘れてください。ごめんね、ロクちゃん」


 深くは追求しないが、その件は適当にロクちゃんの頭を石壁の向こうに投げた吾輩の責任も大きいと思う。

 すまん、五十三番。


「二体とも胴体を取り戻せたのは良いんですが、吾輩先輩は見当たらないし、ロクちゃんに聞いてもよく状況が分からなかったのですが、洞窟の周りに足跡が結構残ってましたからね。それであのならず者たちと鉢合わせでもして、咄嗟に死体のふりをしたら服がそのままだったので、間違われて頭だけ持って行かれたんだろうなって」

「…………お前、本当はあの時見てたんだろう?」

「いえ、あくまでも推測ですよ」

「まあ良い。で、吾輩がさらわれた後はどうしたんだ?」

「仕方がないので諦めて、ロクちゃんと生き物狩りをしてましたよ」

「おい!」

「冗談です。ちゃんと追いかけましたよ。あ、もちろん生き物狩りもしつつですが」


 しばらく会わないうちに、なんだか性格が変わってないか。

 前よりもフランクになったというか、個性が出てきたような。


「川向こうで拉致犯の臭いを見つけられたのは良かったんですが、ソイツらかなり遠回りをしてまして、棲家を突き止めるのにかかり時間が掛かってしまいました。助けが遅れて本当にすみません、吾輩先輩」

「……倒す」

「いや、気にすることはない。十二分にやってくれたと感謝している」


 むしろ、もう少し遅く来てくれたら、あの大火災は起きなかったとは思うが。


「そういえば砦の位置って、洞窟からどの辺りなんだ?」

「はっきり正確には言い切れませんが、だいたい真西の方角でしたね」


 ふむむ、歩数での予想とは大きくハズレてるな。

 やはり一筋縄ではいかない連中だったか。

 親分と幹部連中が生き残っている以上、まだまだ警戒を緩めるわけにはいかんな。

 それと謎の覗き屋も――。


「あ、吾輩先輩の言ってた覗き屋って僕たちですよ」

「なんだとぉ!」

「流石に手ぶらで乗り込むほど馬鹿ではないので、新しい能力を狙って生き物狩りしてたんですよ。その成果がこれです」


 得意げに五十三番が指差した棺の側面には、新しい能力名が追加されていた。


「『視界共有』だと…………」

「はい、あの河原に居たカラスから入手しました。いや、ホント大変でしたよ、カラスどもを仕留めるの。あいつら背中に目がついてるのかってくらい、すぐに逃げちゃうんで」

「ははぁ、実際は目がついてるのではなく、仲間の目を利用できるとかそんな感じか」

「流石、吾輩先輩、ご理解が早くて助かります。これ使ってみたら、かなり便利だったりしますよ」

「ふむ、どれどれ」


 五十三番が言うには、出来るだけ頭を空っぽにして見たい人を意識すれば良いらしい。

 うむ、元より空っぽだから、その点は安心だな。


 早速、棺の向こうで鉈を地面に打ち付けていたロクちゃんに、気持ちを向ける。

 しゃがみ込むロクちゃんの横顔を映す吾輩の視界に、一瞬だけ今の位置からでは見ることが出来ないはずの景色が浮かび上がる。


 地面に叩きつけられる鉈と、それから必死で逃げ惑うネズミたち。

 なるほどこれが今、ロクちゃんが見てるものか。

 うん、凄いなって――おい!


「何やってんだ! ロクちゃん」

「倒す?」

「倒しちゃ駄目! そいつらは吾輩の可愛い配下だぞ」

「ああ、本気でやってませんよ、ロクちゃん。遊んでるだけですね」

「チッチゥ!」

「う、そうなのか、お前たち。ふむふむ、特訓中? そうか邪魔して悪かったな。続けてくれ、ロクちゃん」

「…………吾輩先輩のそっちのほうがびっくりですよ。正直、僕はネズミが何を言ってるか、サッパリわかりませんし」


 その辺りは、調教主だけの特権みたいなものだろうか。

 

「話を戻すと、視界共有で吾輩が何を見てるか確認していたのだな」

「まだ一瞬だけしか見れませんけど、少なくとも土の中でないことはすぐに分かりましたよ」 


 埋められても探し出せる能力は簡単には無理とかのたまってしまったが、この短期間でそれに近い能力を得るなんて流石は五十三番とロクちゃんだ。

 頼れる仲間が居て、本当に吾輩は幸せな骨だな。


 ただ本当に来るのがもう少し遅ければなぁ。

 と、真っ黒に焦げて判別がつかない死体の山を見ながら、吾輩はうっかり歯ぎしりしてしまう。


「視界共有で内部の様子とか吾輩先輩の位置は分かってましたし、あと頻繁にネズミが動いていたのも先輩の仕業かなと。それで建物内から気配が全く消えたので、これは絶好の機会だと思ったんですよ」

「そのことには感謝している。ま、手に入らなかった物を嘆いていてもしょうがない。ここは前向きに楽しむか」

「ええ、それではお楽しみの時間と参りましょう」


 焼死体、いや厳密には窒息死体か。

 回収できたのは九体。といっても、一部欠けているのをそれなりに含むが。


 正直、人間の技能というのは、どの部位から判断されるのか基準が今一つ分からんしな。

 あの犬男ニルゴだって、脳みそをかなりこぼしてしまったが、ちゃんと技能は取れたし。


 一人一人、確認しながら黒棺様へ捧げていく。

 その結果がこちらとなる。


能力


『反響定位』 段階4

『気配感知』 段階3

『頭頂眼』 段階2

『末端再生』 段階2

『麻痺毒生成』 段階2

『臭気選別』 段階1

『火の精霊憑き』 段階1

『腕力増強』 段階1

『視界共有』 段階0→1

『賭運』 段階0→1


技能


『棒扱い熟練度』 段階10

『刃物捌き熟練度』 段階10

『投げ当て熟練度』 段階10

『火の精霊術熟練度』 段階1→10

『長柄持ち熟練度』段階2→10

『叩き落とし熟練度』段階8

『身かわし熟練度』 段階8

『判定熟練度』 段階6→8

『抜き足熟練度』 段階6→7

『差し足熟練度』 段階5→6

『見抜き熟練度』 段階4→5

『動物調教熟練度』段階3→4

『骨会話熟練度』 段階3

『短剣熟練度』 段階3

『片手斧熟練度』 段階3

『片手棍熟練度』 段階2

『片手剣熟練度』 段階0→2

『両手斧熟練度』 段階0→2

『両手槍熟練度』 段階0→2

『投擲熟練度』 段階1→2

『投斧熟練度』 段階1

『火の精霊術熟達度』 段階0→1


特性


『刺突耐性』 段階7→8

『打撃耐性』 段階6→7

『圧撃耐性』 段階3→4

『炎熱耐性』 段階1→5

『腐敗耐性』 段階0→3



『しゃがみ払い』 段階6

『念糸』 段階3→5

『齧る』 段階2→3

『狙い撃ち』 段階1→3

『痺れ噛み付き』 段階0→2

『頭突き』 段階0

『爪引っ掻き』 段階0

『体当たり』 段階0

『くちばし突き』 段階0

『三回斬り』 段階0


戦闘形態


『二つ持ち』 段階4→5


総命数 637


 わーお、見所満載である。


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