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第二十一話 悪いニュース、良いニュース



 洞窟に戻った吾輩を出迎えてくれたのは、全身の骨が揃った五十三番の姿であった。


「お帰りなさい、吾輩先輩」

「ただいまって、それどうやったんだ?」

「ああ、身体ですか? 当然、ロクちゃんが手伝ってくれましたよ」


 先に帰らせたロクちゃんだが、予想以上に役に立ってくれたようだ。


「で、どうなんだ?」

「で、どうでした?」


 期せずして、質問が被ってしまった。


「じゃあ、こちらから。とりあえず洞窟内にあった骨は、この部屋に集めてみました。使えそうな骨は、組み直して並べてあります」


 壁際に八体の首なし骨の体が並んでいる。

 その横には、バラバラの骨たちが山積みとなっていた。

 

「それで、こちらが期待の新骨たちですと、紹介したいところですが……」


 五個の頭骨が、黒い棺の縁に等間隔に置かれている。


「全員、反応なし。ただの骨ですね」

「なんと。誰一体、自我が発生してないのか?」

「ええ、叩いても逆さまにしても、うんともコツとも鳴りません。魂力も空っぽですしね」

「そうなのか……。それはアテが外れたな」


 がっかりする吾輩に、五十三番が言葉を続ける。


「一つ仮説があるのですが、お手伝いしていただいても?」

「うむ、なんだね?」

「ロクちゃん、おいで」

 

 五十三番は骨山の横にしゃがみ込んで、積み木で遊ぶかのように骨を楽しそうに組み上げていたロクちゃんを呼び寄せる。

 そしてトテトテと素直に寄ってきたロクちゃんの頭骨を、いきなりカポッと外してみせた。


「ロクちゃん、ちょっとごめんね。ほら、覗いてみて下さい」

「倒す?」

「いや、倒さないよ。ロクちゃんは吾輩の大事な仲間だからな」


 五十三番の指先が指し示したのは、ロクちゃんの頭骨の内側部分であった。

 天辺の辺りに、小さな痣のような模様が見える。

 いや、痣ではないな。

 複数のギザギザが中心部から噴き出したような形をしており、綺麗に左右対称になっていた。


「何かの印……紋章のようにも見えるな」

「ありがとうね、ロクちゃん。で、次は僕のをどうぞ」


 自分の頭を、事もなげに外す五十三番。

 下の孔から覗き込むと、同じような位置にハートの形が重なったマークがあった。


「ふむ。となると、次は吾輩だな」


 魂の糸を切らないように気を付けながら頭部を外す。


「ああ、ありますね。小さな円が一杯くっついた感じです」


 試しに並んでいる頭骨を、全部覗いてみたがヒビしか見当たらない。


「ロクちゃんが頭だけで横になっていた時にチラチラ見えてて、気になってたんですよ、それ」

「ああ、自分の骨の内側は確認できないしな。ふむ、吾輩たち自我持ち三体だけに、奇妙な印が頭骨の内側にあるのか」

「割れた頭骨もざっと調べてみましたが、それらしい模様はなかったですね」

「多分、この印は変革者の証だろう。ロクちゃんと五十三番にある以上、偶然とは言い難い」

「となると、自意識が発生してる骨仲間は――」

「かなり少ないと言えるな」


 これは困ったな。

 同じような境遇の仲間が、もっと存在してると思っていたのだが。

 色々とやるべきことが増えた今、現状の三人ではかなりの骨不足といえよう。


「吾輩たちが動けるようになったということは、黒棺様から追加の骨を出して貰うのも難しいか」

「それに関しては、また首だけ状態に戻れば、何とかなりそうですけどね」

「うむ、しかし効率を考えれば、あまり取りたくはない手段だ」


 今の吾輩たちに、新しい骨が湧くまでの数日を無駄に過ごす余裕はない。


「そうなると探すしかないですかね、印持ちさんを」

「魂集めと並行して、散らばった骨も集める必要があるということか」


 記憶に残っている変革者は、初めて武器を使用した二十七番。

 あとは初獲物をもたらしてくれた三十三番くらいか。

 しかし、吾輩も変革者であったとはな…………。


「では、次に吾輩の方だな。ここから西へ二百五十七歩の位置に、北から南へ川が流れていた」


 ガリガリと石斧を使って、地面に線を引く。


「この川原から南へ九百二十一歩の位置で集落を確認した。軒数は十五以上、気配は大小合わせて三十近くあった」

「随分と近いですね」

「柵があったので防衛の意識はあるようだが、古さからみて吾輩の仲間たちが原因ではないと思える」

「するとやはり、あのゴロツキども対策ですかね」

「断言は出来んがな。あの二人組の痕跡は、川のせいでそれ以上は追えなかったよ」


 侵入者の仲間たちの居場所も、早急に突き止める必要があるな。

 

「倒す!」


 不意に声を上げたロクちゃんが、吾輩たちの方へ弾むように駆け寄ってきた。

 両手で掲げるように、一本の骨の腕を持ち上げている。

 首を元に戻してもらったあと、また骨の山の横で何やら組み合せていたのだが、それを作っていたのか。


「お、出来たのか。ありがとう、ロクちゃん」


 そう言いながら、五十三番はいきなり右腕を外した。

 空いた肩の部分に、ロクちゃんが持っていた右手の骨をはめ込む。


「手を新しく交換した……訳ではなさそうだな」


 ロクちゃんが骨片を継いで作ったらしい右腕は、あちこちにヒビが入り小指と親指の先が欠けていた。

 以前の右腕をロクちゃんに手渡しながら、五十三番は少しだけ得意げな顔をする。


「補修作業ですよ。出来るだけ体の予備は準備しておきたいですからね」

「む、もしや末端再生か」

「ええ、だいたい三時間ほどで、ほとんど治りますね」


 なるほど、これは良い考えだ。

 骨の補給が難しい状態では、資源は少しでも有効活用しないとな。

 感心する吾輩に、不思議そうな表情で五十三番が尋ねてきた。


「ところで吾輩先輩、ソレなんですか?」

「ああ、すっかり忘れていた。ほら、お土産だ」


 石ころを詰めた蔦籠と石斧を、五十三番へ手渡す。


「おお、これはなかなか投げやすそうな石ですね。助かります」

「骨は大事に使う必要があるから、ちょうど良かったな。木の皮とかで、投石器も作れると思うぞ」

「この石斧も作ったんですか?」

「うむ、暗くなるまでの時間を利用してな」

「なるほど、それで技能が増えてたんですね」


 聞き捨てならない五十三番の言葉に、吾輩は思わず身を乗り出す。


「もしかして、棺の字がかなり増えたりしたのか?」

「はい、びっくりするほど増えましたよ。いやぁ、人間の魂は凄いですね。これからはもっと積極的に狙った方がいい気がしてきました」


 期待に胸を膨らませながら、吾輩は棺へと顔を向ける。

 もっとも、骨の体なので肋骨がちょっとピクピクするくらいであったが。

 

能力

『反響定位』 段階3

『気配感知』 段階3

『頭頂眼』 段階2

『末端再生』 段階2

『臭気選別』 段階1

『火の精霊憑き』 段階1

『腕力増強』 段階1

技能

『棒扱い熟練度』 段階10

『刃物捌き熟練度』 段階10

『投げ当て熟練度』 段階7

『叩き落とし熟練度』段階7

『身かわし熟練度』 段階7

『判定熟練度』 段階4

『抜き足熟練度』 段階4

『差し足熟練度』 段階3

『骨会話熟練度』 段階3

『短剣熟練度』 段階3

『片手棍熟練度』 段階2

『火の精霊術熟練度』 段階1

『片手斧熟練度』 段階1

特性

『刺突耐性』 段階7

『打撃耐性』 段階6

『圧撃耐性』 段階2

『炎熱耐性』 段階1

『しゃがみ払い』 段階6

『齧る』 段階2

『念糸』 段階1

『頭突き』 段階0

『爪引っ掻き』 段階0

『体当たり』 段階0

『くちばし突き』 段階0

『毒牙』 段階0

『噛み付き』 段階0

『三回斬り』 段階0

戦闘形態

『二つ持ち 段階4』


総命数 564

 

 おお、増えてる増えてる。

 って、増えすぎだ!


 よし、じっくり見ていくとしますか。


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