第五話:平和ボケ
「平和過ぎる……」
平和過ぎるよ、ここの生活スペースに居て数週間位かな……平和ボケしたよ。
床に寝転んで、何も考えず上を見上げているといきなり痛みが襲う。
「いだッ」
「うわ、びっくりした。なんでそんなとこで寝てんのさ」
痛みの主はルイでした。
声が聞こえれば起き上がり、話しやすくする。
「んー、なんとなくね。駄目だったかな」
駄目ならやめよう。
別にそこまで寝たい訳でも無いし。
そう思い、座って上を見上げながら相手に聞くと、何故か顔を赤くする。
「いや、別に自由で良いけど……」
「ルイの理性が危ないんじゃないかな、お姉さんっ」
「わ、ビビった」
うん、ビビったよ。
いきなりユアが抱き着いてきたからね、可愛いから許すけども。
「は、ちょ、何勝手な事言ってんの……」
「本当の事じゃーん」
笑いながらからかうユアに真っ赤な顔で言い返すルイ。
遠くから見ると痴話喧嘩にしか見えないな、うん。
ユアの金髪ロングに緑色の目……最高やんな。
ルイが惚れるのも分かるよ、ただ、お姉さんは色々心配だけどね。
「お姉さんを僕のにしてもいいんだー」
ん?、いつから私の話へ。
理解できないまま、話がドンドン進んでいく。
床に座る私の頭上で二人の言い合いは続いていくが、私はそのうちに……逃げよう。
と思い動き始めた瞬間、ユアが私の腕を掴む。
「何処に行くの、お姉さん?」
おぅ、その顔も可愛いんだけどね……背筋が凍ります。
笑っているのに目は笑っていないユアに驚き固まるが、もう片方の手を引っ張られる。
「いつまで手、掴んでんの」
お、救世主……、……こちらも怖かったぁー。
手を捕まれながら上で喧嘩される私よ。
こんな時に柚子が居れば喧嘩なんかすぐ終わるのに……
携帯の電波で居場所がバレるんですって。役立たずめ……
「ルイが奥手なのが悪いんでしょ?」
「お前は何時でも構わず口説き過ぎるんだ」
ちょっと何の話か分からないんだけども……
これ、私居るの?
上をずっと見上げていると、首の痛みを感じ下を向く。
目の前で惚気られてんのかな……
軽く溜息をつけば、腕が解放される。
「ヘタレ!」
「年中発情期!」
ただ、まだ喧嘩は続く。
うん、お姉さんそんな言葉教えた覚え無いよ?
「……今日も平和だなぁ」
いつまでも続きそうな勢いの喧嘩を聞きながら私はそう呟いた。