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君の明日を見つめて  作者: 逢坂すずね
シーズン2
8/14

幸せな時間

恋春と出会ってから3度目の春が来た。今日は始業式。

俺たちはもう高3になった。もう受験生だ。

窓からは桜の花びらが舞って来ている。

今日は恋春の誕生日だ。本人も気付いてはいるだろう。

今日はレストランの個室の予約と誕生日プレゼントは用意してある。始業式は大体11時に終わるが、3年はなぜがテストがあるから帰るのは大体3時くらいになってしまう。だから、3時くらいからショッピングモールで買い物をして、6時くらいにレストランの個室で食事というデート予定になっている。

恋春が喜んでくれたらいいけど…。


夏樹(なつき)、早く行こっ!」

まだ支度が終わっていない俺に、恋春はそう言った。

「今日はやけに急いでるな」

「だって、これから夏樹とデートだよ?ほら、あんな殺風景なところに閉じ込められてたからすごく嬉しい」

恋春はあれからも度々入退院を繰り返していた。確かにあんな殺風景なところに閉じ込められたら、俺は嫌になるだろうな。

「よかった。それじゃ行こっか」

「うん!」

支度を済ませた俺は恋春にそう言った。恋春は顔を綻ばせて頷いた。


一回家に帰った俺らは私服に着替えてショッピングモールに買い物に来た。

「ねぇねぇこれとこれ、どっちがいいかな?」

恋春は白いワンピースとピンクフリルのワンピースを交互に体に当てている。

正直どっちも可愛いと思う。でも、そんなこと言ったら、本心でも「適当に言ってる〜」って怒られるから一応どっちかで答える。

「俺は白いワンピースの方がいいと思う…」

「やっぱり?私もね、ちょっとピンクのワンピースは子供っぽいと思ってたんだ。私と夏樹って気が合うのかもね」

「そう、かな?」

「うん!」

恋春は白いワンピースと青いサンダルを選んだ。恋春は自分で払おうとしたけど、誕生日だからと無理矢理俺が払った。恋春は少し納得してない顔をしてたけど、その後はすぐに「ありがとう」と微笑んだ。

この後はタクシーでレストランに行く。レストランは車で約15分のところにあるちょっと高級なレストランだ。俺は行ったことがないが、ネットですごい人気だからここに決めた。改めてネットのすごさを知った。

「夏樹、大丈夫なの?」

「何が?」

タクシーに乗ってると恋春がそういうので俺は少しびっくりした。

「だって、あのレストランって高級なんでしょ?莉彩(りさ)がそう言ってた」

恋春は今から行くレストランのことを知ってるようだった。莉彩さんは恋春の中学からの親友だと前に言っていた。確か莉彩さんはお金持ちだったと思う。だから高級レストランとかにもよく行くのだろう。

「ダイジョブだよ。お金はあるから」

「本当に大丈夫?私が誕生日だからってそんなに頑張らなくていいんだよ?私は夏樹といられるだけですごく幸せなんだから」

今さらっと恥ずかしいことを言われた気がする。タクシー運転手、絶対聞こえてたよ。

「ほんとにダイジョブ。恋春は心配しなくていいの。俺が勝手にやってることなんだから」

「そう?」

「うん、そう」

「わかった。…じゃあさ、夏樹の誕生日は私が企画する!」

「楽しみにしてるよ」

そんなことを話しているうちに目的のレストランに着いた。俺はタクシー運転手にお金を払って恋春とタクシーを降りた。

「すごいね。初めて来た」

「俺もだよ」

「そうなんだ」

「うん」

レストランはお城のような見た目でまさに高級そうだった。

俺たちはそのレストンの中に入った。そうして、予約していた個室に案内された。

「すご~い。個室なの?高いんじゃない?」

恋春は店員さんが言った後にそう言った。確かに普通に食べるところよりは高かったけど、サプライズをするにはこっちの方がよかったからな。

俺と恋春は向かい合って座った。この部屋にあるもの、すべてが高そうだ。

少しすると店員さんが予約していたフルコースを運んできてくれた。恋春は「おいし~」と、とてもおいしそうな顔をして食べていた。店員さんにはもともと塩分などを控えめにするようにお願いしてある。恋春も薬を飲んでいるから今日くらいは贅沢してもいいと言っていた。医者にも一応確認してあるからたぶん大丈夫。

俺たちはフルコースを全部食べ切った。2人分だからそれほど多いわけじゃなかったし、少なめにするようお願いしてあるから。

これからはサプライズだ。多分もうすぐだと思う。

「…………パッ」

「え?夏樹…?」

暗くなった。ここからがサプライズ。これから店員さんがケーキを運んでくる。ドラマとかでよくやっているし、ここのホームページに『誕生日サプライズ 受けたわります!』と書いてあったからちょうどいいと思ってお願いした。個室にしたのもこのためだ。俺はいいけど、普通に食べるところでやると注目されるから恋春が嫌がると思ったから。

個室のドアが開いてロウソクの明かりが小さく見えた。店員さんが歌を歌うバージョンもあるらしいがそれはちょっとお断りしといた。何となく恥ずかしいから(これをやる時点で十分恥ずかしかったけど)

「…え?」

店員さんは俺らの所にケーキを置くと、ささっと行ってしまった。俺もその方がいいけど…。

「恋春、誕生日おめでとう」

「…ありがとう」

ロウソクの明かりでぼんやりと見える恋春の顔は少し泣きそうになっていた。

「ほら、火、吹いて」

「うん…」

そう言うと恋春はロウソクを吹き消した。

俺は恋春掛けし終わったところでドアの前に行き電気をつけた。恋春を見ると恋春は泣いていた。

「こんなことするなんて反則だよ」

恋春は笑いながら泣いていた。泣いたり怒ったり忙しいなと思った。

「そんなところ悪いんだけど、実はもう一個あるんだ」

「え?まだあるの?」

「うん」

そう言うと俺は鞄の中から一つの細長い箱を取り出した。

「開けてみて?」

俺は恋春にそう言った。

恋春はリボンをほどいて箱を開けた。

「え?これ…」

「ピンクダイアモンドの桜カットのネックレスだよ。天然じゃなくて人工の何だけどね。4月の誕生石がダイアモンドだったのと、ピンクダイアモンドの石言葉が『永遠の愛』だったからなんだ。それに春だし、色がピンクだから桜のカットにしてもらったんだ。……こんな時に言うのもなんなんだけど、聞いていれる?」

恋春はもう目に涙を溜めていた。

「俺はこれからも恋春の明日を見つめて、恋春と生きて行きたい。まだ高校生だし責任も取れない俺だけど、俺とずっとこの先も生きて行って下さい!」

俺は思い切って言った。遠回しに言い過ぎたかな?

「プロポーズととっていいのかな?」

「じゃあ、遠回しにじゃなくてちゃんと言うよ。……俺と、結婚して下さい!」

「私でもいいの?」

「そうじゃなかったらこんなこと言ってない」

「ふふっ。……私を夏樹のお嫁さんにして下さい」

恋春は涙をポロポロと流しながらそう言った。

俺は顔がちょっと綻んだのが自分でもわかった。

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