私の存在意義 【恋春side】
私の存在意義ってなんだろう?
夏樹は「恋春の明日を見つめて、恋春と生きて行きたい」って言ってくれたけど、私なんかが夏樹と生きて行っていいのだろうか。
『自分にとっての生きるとは』
中2の頃、担任の先生に言われた。その頃は病気のせいで生きることを見失っていた。私が「わからない」と言うと先生は「お前はそれを探すために生きているんだ。それが見つかったらそのために生きろ」、そう言った。
でも、私はーーー
「ピンポーン」
私はスクール鞄を持って階段を駆け下り、玄関のドアを開けた。
「夏樹おはよっ」
「恋春おはよう」
私はドアに鍵を閉め夏樹と歩き始めた。お母さんはいつも私より早く出てしまうからいない。お父さんは死んだ…。
私は夏樹と歩いてて思う。夏樹と別れなきゃだって。夏樹は大切な人が死んでしまう悲しさを知らない。大切な人だ死ぬとどれだけ悲しいのか、夏樹はまだ知らない。だから、夏樹とは別れなきゃ。
「どうした?」
「へ?」
「暗い顔してる。今日くらいはさ何もかも忘れて楽しもう?」
「うん。ありがとっ」
確かに今日は学園祭。今日くらいは何もかも忘れて楽しみたい。
「恋春は今日、何時までダイジョブ?」
「お母さんが夏樹が送ってくれるならいつでもって言ってた。あぁ日にちが変わるまでには帰って来いって言ってたかな?」
「そっか。じゃあ、後夜祭は一緒にいられるね」
「後夜祭って何?」
私は度々休んでいたから学園祭についてよくは知らない。
「花火が上がるんだよ。後は告白祭とか肝試しとか、まぁそんな感じ」
なんか楽しそう。今まで中学の学園祭とかは入院してて1度も行けなかったからなるべく全部出たい。
「花火を屋上で見ようと思ってるんだ。先生に屋上の鍵を借りれるようにお願いしてるから2人で見られるよ。どうかな?」
「うん。花火、一緒に見たい!」
「よかった。楽しみにしとけよ」
「うん」
暗くなって来た。
学園祭はもうすぐ終わる。後は後夜祭だけ。
夏樹は先に屋上に行った。私をおいて行くなんてひどいと思ったけど、夏樹には夏樹の考えがあるのだろう。多分だけど。
屋上へ行く道は暗かった。ちゃんと歩いていないと転びそうだ。
屋上のドアに手をかける。私は本当にここに入っていいのだろうか。ここには多分夏樹がいる。夏樹と会うたびにどんどん夏樹のことが好きになって行く。もう、抑えきれない。でも、抑えなければならない。私は夏樹と別れなきゃだから。
屋上のドアを開ける。
「恋春、遅かったな」
そこには夏樹がいた。あたしの大好きな人。
夏樹の後ろには折りたたみ式のテーブルと椅子があった。今日、うちのクラスで使ったものだ。テーブルの上にはお茶やお菓子などがある。
「後2分で花火始まっちゃうから早く座って」
「あっうん」
ビックリし過ぎてぼーっとしていた私は夏樹に言われて椅子に座った。
夏樹は私の隣の椅子に座った。
「これ、夏樹が準備してくれたの?」
「そうだよ。本当はねイルミネーションとかをやりたかったんだけど、それじゃあ花火が台無しになっちゃうでしょ?だからお茶を飲みながらでどうかなって思ってこうした」
「ありがとう。本当に嬉しい」
「ヒューーードーン」
「始まったな」
「綺麗〜」
大きい花火が何発も上がっている。
「何分くらいやるの?」
「40分だったと思う」
「以外とやるんだね」
「地域の人も見るからな」
真っ暗な夜空に上がる花火。
赤やオレンジ、青に緑、色々な色の花火がどんどん上がって行く。
「ねぇ夏樹。私の存在意義ってなんだろう?……私は、ここにいていいのかな?」
私は今朝思ったことを口にした。小さい声だったから夏樹には聞こえなかったかもしれない。
「難しいことを言うな。……命ってさすごい奇跡が起こってあるものだと思うんだ。生まれて来るのもすごい大変だろ?母親は命をかけて子供を産んでるわけだし、生まれても死んだりするだろ?だから今生きれるって、この命があるって、すごいことなんだよ。…存在意義って正直言って俺はよくわからない。でも、恋春が今、ここにいなきゃ今の俺はいないと思う。それだけでいいんじゃないかな?」
命かぁ。お母さんはどんな思いで私のことを産んだんだろう?大変だったんだろうな。そんなこと聞いたことないからわからないけど。
「私ってなんのために生きたらいいのかな?もう、なんかわかんなくなっちゃったよ」
「恋春は俺のために生きて。俺は恋春のために生きるから。俺と恋春はお互いのことが必要なんだよ」
その通りかもしれない。私たちはお互いのことが必要なんだ。
「夏樹。私、どうしたらいいの?」
私は、夏樹のことが必要。でも、夏樹のためを思うのなら別れなきゃいけない。私がもし死んだら夏樹は立ち直れなくなっちゃうかもしれないから。私とお母さんがそうだったように。