恋春の病気
病室で恋春の言葉を聞いてから俺はずっと考え込んでいた。
俺は恋春とこれからどうしたいのだろうか。
あれから1週間が経った。恋春はまだ入院している。
僕は恋春とどうしたいのかまだよくわかんない。ずっと一緒にいたい。でも、それだけじゃダメな気がして。
明日の土曜日は恋春の外出許可が下りたから一緒にどこかデートに行く予定だ。どこに行くかまだ迷っている。
動物園。水族館。公園。デパート。
今までどこも行ったことがあったし、今は梅雨だからなるべく屋内がいいし。
(あぁ、映画館があるじゃん)
俺はそう呟いた。丁度今は恋春の好きな小説の映画がやってるはずだ。
(よしっ!映画館にしよう)
俺はそう決めるとパソコンを開いてインターネットで『映画館』と検索する。一番近くの映画館で、恋春の観たい映画の席を予約する。真ん中が開いていたからそこにした。
そして次は『心臓病』と検索する。俺は1つのサイトを開いた。そのサイトには心臓病の症状や手術のことなどが書かれていた。やっぱりあまり運動はさせない方がいいらしい。
(映画館にしてよかった)
電車でも座らせていれば大丈夫だろう。
唯一心配なのが、発作のことだ。前に聞いたが、恋春は遺伝的因子らしい。心臓病の中でも心筋梗塞というものらしい。症状は狭心症とほぼ同じらしいが、発作は死ぬかと思うほど激しい胸の痛みがきて、安静にしていても30分以上続くらしい。それに恋春は合併症で心不全にもかかっているらしい。こっちは呼吸が苦しくなって、呼吸をするたびにのどがぜーぜー、ひゅーひゅーなるらしい。心臓喘息とかいうらしい。これは上半身を起こして寝ると楽になるらしい。
全部ネットだから本当かはわからないが、俺も恋春の彼氏として少しは知識を得ておかないといけない。
恋春には明日くらい病気のことを忘れて楽しんでもらいたい。
午後1時ちょい前。俺は病院の前に来た。
今日は午後だけ外出が認められている。
『コン、コン』
俺はいつものようにドアをノックした。
「は〜い。どうぞ〜」
「恋春、準備できたか?」
「あぁ夏樹!うん。もうバッチリだよ」
恋春は白のブラウスにカーディガンを羽織って、青いフレアスカートを着ていた。
「可愛いよ…」
「何それ〜?恥ずかしいじゃん!」
「それじゃあ、行こう?」
「うん!」
俺は恋春の前に手を差し出した。すると、恋春はその手を握ってくれた。恋春の手は小さくてとてもか弱い手だった。
「恋春、ここ」
俺がそういうと恋春は「ありがとう」とはにかんで座った。
休日、午後の電車は予想以上に混んでいた。しかし、なんとか1つだけ席を見つけたから、そこに恋春を座らせた。
電車の中で、俺たちの会話はなかった。逆に電車の中でしゃべっている人って少ないよな。
『間もなく○○駅に到着いたします―」
「ここで降りるよ」
「うん」
俺は恋春の手を取って電車を降りて映画館へと向かった。
駅からちょっと歩くと、ショッピングモールに着いた。映画館はこの中にある。
「買い物するの?」
「いいから俺について来て」
俺はそう言って恋春の手を引いた。恋春は頬を赤めて頷いた。
エスカレーターに乗って2階へ上る。そして、一番奥の映画館まで来た。
「映画館?」
「うん。恋春が見たいって言ってた映画観ようと思って。席は真ん中だよ?」
俺がそう言うと恋春は目を真ん丸にしたかと思うと俺に抱き着いて来た。
「恋春、人いるから」
行きかう人々は俺たちのことを見ている。恥ずかしすぎる。
「ありがとっ。大好きっ」
「わかったからいったん離れようか」
俺はそう言って恋春を話した。恋春は小さい聞こえるか聞こえないかくらいの声で「キスしたかったのに」と言った。俺はそれを聞いて頬を赤めた。
「ほっほら、行くよっ」
俺がそういうと恋春は「は~い」と言って着いて来た。
映画館に入ると人はまばらだった。
恋春が観たいと言っていたのはラブラブの恋愛映画だった。小説はすごい売り上げだったと言っていたっけ。
映画が始まると恋春は俺の手を握ってきた。恋春から握ってくるのは珍しかったから俺はその手を握り返した。
『姫奈、大丈夫。僕がついてるから』
この映画は主人公の彼女が病気と言うとても俺たちと似ている設定だった。
『拓…今まで、ごめんね。私、死んでもずっと拓のこと好きだから。だから拓は私みたいに病気じゃない人と世界一幸せになってね』
『何言ってんだよ…。お前は死なない、絶対に死なない。だから、そんなこと言うな』
『ありが、と…』
『ピ―――――――――』
『…姫奈?………姫奈、お疲れ様。こちらこそありがとう』
主人公はそう言うとヒロインの酸素マスクを取ってキスをした。
隣を見ると恋春が目から涙をぼろぼろと落としていた。
俺は手を伸ばして恋春のあごを持って俺の方に顔を向けた。
俺は静かな空間の中、恋春にキスをした。