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3話

クマを狩ってから3日たった。

相変わらずの木ばっかりの光景に辟易とする。

森の中、道なき道をひたすら進んでいる。


まぁ、ずっと強行軍のように歩き続けているわけではない。

休憩中や食事の時に、この収納袋の事について調べている。

ルテルの話では食料と水は入るらしいが、入れれる食糧の種類を調べてみる

試しに、毒をもってそうな蛍光色のキノコや毒草のような物を調達して調べてみた。

毒があると入れれないのか、ほとんどが弾かれ収納袋に入らなかった。

数少ない入ったものが本当に食べて大丈夫な物なのか調べてみる。


少し舐めてみる。

痺れや痛みはない。問題なし。

一部を齧って様子を見る。

体調に変化はなし。

咀嚼して飲み込んでみる。

体に異常がないことが分かった。


一応弾かれた物を舐めてみる。

舌先が痺れた。

食べると有害であることは間違いなさそうだ。

因みに、これ位の毒なら大量に食べなければ大丈夫だと感じても入る事は無かった。

茹でたり焼いたり毒がありそうな部分を取り除けば入るものがあった。

どうやら自分が食べられる、と思った物でも毒があれば弾くようだ。

他にも、泥水を入れると泥だけ弾かれて、ろ過するように綺麗な水だけが入っていった。

濾過されたものを飲んでみると泥臭さはない真水であった。

この収納袋はかなり便利である。


良い物をくれるじゃないかルテル....


他にもわかったことがある。

この世界の物質は脆く軽いということだ。

切っ掛けはクマとの戦闘である。

少し興奮していて気がつかなかったが、あんな巨体を蹴り飛ばせるなんて信じられない事だ。

ここに来て単純に膂力が上がったのかとも思ったが、持ってきた荷物が最初に担いでいた時よりも軽くなっていない事を考えるとその線はなさそうだ。

ならば原因は自分ではなく、周りにあるのではないかと考え試しに木を蹴ってみた。

すると蹴った部分が大きく抉れ倒木した。

重厚な倒れる音に反し、持ってみると片手で持ち上がるほど軽かった。

イメージするなら木の形をした発砲スチールだ。腕力にはそこそこ自信はあるが樹齢数百年はありそうな木を片手で持ち上げる程の力ない。

ならばこの世界の物質が脆く軽いということは間違いなさそうだと結論付けた。

力加減を間違えると大変なことになりそうだ。

慣れるまで時間をかけるべきだ。


「まぁ、あのデカい木は例外だろうな」


視線を動かし巨木の方を見る。

大分距離はあるはずなのに、その存在を目視できる。

常識では考えられない大きさだ。


「それにしても深いな。まだ抜けられないのか」


気持ち早めに進んでいるにも関わらず、この森から抜け出せそうにない。

ずっと続く道なき道を進んでいる。

景色に変化がない。

辟易している。

食料と水は充分にあるので余裕はある。

余裕はあるのだが.....少し人恋しくなってきた。


最初の頃は、昼夜関係なく異形なモノが襲ってきたので、寂しいとは感じなかったのだが今ではめっきり見なくなってしまった。

あのデカい木から離れれば離れるほど数が明確に減っている。

まぁ、いくら寂しいといってもあのクマみたいなのが来たら嫌ではある。


ちなみに襲ってきた奴は全て倒し解体して収納袋に入れてある。

勿論、体内に会った宝石の様な石も全てカバンに入れてあるが邪魔になってきたので幾つか捨てようかと考えている。


「ん?」


遠くで何かが暴れている音が聞こえる。


「お、久々になんかいるな。ちょっと様子を見てみるか」


そういい、音のするほうへ移動する。

いくら心寂しいからと言って自ら危険に首を突っ込むことはしない。

しかし、人がいる可能性があるなら話は別だ。多少のリスクはとる。

決して心寂しいという理由ではない。


近づくと、何かが燃える音とギャアギャアと叫ぶ声が聞こえる。

何かが争っていることが分かった。

そのまま目視で認識できる距離まで近づいてみる。


ローブを纏っている人物と棍棒を持った醜悪なゴリラみたいな群れが戦っている所だった。


おぉ、本当に人と遭遇できるとは


ローブを纏っているものは必死に火の魔法で応戦しているようだ。

だが、如何せん敵の連携が上手く攻撃が当たっていない。


多対一。むこうは統率が取れて油断はなし。

一方あちらは肩で息をして疲労が隠せていない。


このままではローブの奴は殺されるだろう。

だが死なれたらこちらが困る、3日目にしてようやく遭遇できた人だ。

個人的には助けるという選択肢は決まっているのだが、助けに行って助けた人物に攻撃される可能性がある。

それも経験上かなりの高確率だ。

お礼を言われることの方が珍しい。


どうするかと考えていると


ローブの人物が醜悪なゴリラに腹部を殴られ後方に吹っ飛ばされた。

地面を何度も転がり木に衝突し、地面に突っ伏した。

おぉ、悪くないな。それなら反撃される危険性はないな。と感心してしまったが感心している場合ではなかった。


今まさに、ゴリラがローブに止めを刺そうと棍棒を振り上げていた。

急いでその場に駆けつける。

タイミング的にはギリギリだったが


「間・に・合・っ・たーーーー!!」


勢いをそのままにゴリラの胸に掌底を当てる。

ただし数㎝当てた所で止める。

寸当てだ。

殺しても食べれそうにないからな。


ゴリラは、肺の中の空気をすべて吐き出し群れの中へと突っ込んでいった。


よしよし、骨が折れた感触はないのでたぶん無事だろう。

加減をするのはこれぐらいで良さそうだ。


ゴリラの群れは何が起きたのか分かったいなかったが、すぐに状況を理解したようにゴギャ、ゴギャと叫びだした。

仲間をやられて怒っているのだろう。

目をひん剥き、必死にこちらを威嚇する。


「悪いがこいつに用事があるんだ。退け!!!」


ゴリラの群れを睨みながら叫ぶ。

久々に人に合えて、少し興奮しているみたいだ。

しかし、むこうはそれ以上に興奮しているようだ。

どうやって逃げるか考えているとゴリラ達の威嚇が止まっていた。

そして血の気が引いたかのように怯え、ジリジリと後退し始めた。


ん? 予想外の反応だな。


「もしかして.........後ろに、なんかいるか?」


恐る恐る、ゆっくり後ろを振り返り確認する..........何もいなかった。

視線を戻すとゴリラの群れは走って森の奥へと逃げていた。


「こわっ」


目に見えない何かがいるのだろうか。

急いでこの場を離れよう。


地面に突っ伏して倒れているローブに近づいて軽く揺すってみる。

僅かに呻き声をあげる、どうやら気絶しているだけのようだ。

頭に怪我がないか、被っていたローブ取る。


「.........女か」


見た感じは15~16歳。

綺麗に整った顔にキメ細やかな肌。

髪は濃い赤の猩猩緋(しょうじょうひ)

かなりの別嬪さんだった。


おっと不味い。

見惚れてる場合ではなかった。


軽く診た感じだと大した怪我はない。内臓も骨も無事。

腹と頭が赤くなっているが痣にはならないだろう。

ただ、疲労と脱水で衰弱はしてるようだ。

目が覚めた時にスープでも作って飲ませれば回復するだろう。

ローブ........じゃなかった彼女を担いでこの場を離れた。



◆◇◆



誰からも忘れ去られた真夜中の遺跡、向かい合うように座る2人の人物がいた。


「慨嘆の大森林の楔が取れたみたいだ。君何かしたのかい?」

「ッハ!! 寝言は寝て言えよ。誰が好き好んで調停者を敵に回すかよ!! 回すにしても今じゃない」

「だよねぇ、だけど楔がなくなったのは確かだよ。どこのだれかは知らないけど」

「ッハ!! バカバカしいどうせ人間だろう。あいつらに取って束の間の平和なんて争うための準備期間みたいなものだろう」

「君にだけは言われたくないだろうけどね......おっと新しい情報が来たよ。君の勘はよく当たるね。どうやら勇者のようだ。慨嘆の大森林の侵入報告が来てるね」

「ッチ!! 面倒な奴らが出てきやがったな」

「まったくだよねぇ、半端に強いから質が悪い上に、殺しても変な知識を残すから人間の繁栄の助けになる。時間が経てばまた第2第3の勇者がまた出てくる。滅ぼそうにも調停者が邪魔ときた。まったく」

「ッハ!! テメェは全滅させようとするから調停者が動くんだよ。こっちは新しく生まれた魔王でややこしい事になってる。面倒この上ない!!」

「お気の毒様だね。それでどうするの? 君にしたら楔がとれたのは攻め入るチャンスでしょう」

「ッハ!! 余計なお世話だ。そういうテメェはどうするんだよ」

「こっちは静観しとくよ......調停者に関わりたくないしね」


そう言い席を離れる。


「ッハ!! 相変わらず弱腰だな龍神様だな」

「君ほど豪胆にはなれないだけさ【狂乱】魔王さん」


その名で呼ぶんじゃねぇー!! と後ろのほうで怒鳴っている。


さて、勇者が来た。......本当に? 侵入したのは間違いないだろうが、召喚されたばかりの勇者が慨嘆の大森林を攻略できるほど簡単ではない。最初は彼がやったものだと思っていたがどうやら違うようだし......まぁいい、静観すると決めたのだ動く気はない。火の粉が降りかからなければ......ね。


龍神は、真夜中の闇に溶けるように去っていった。

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