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17話


現在、冒険者ギルドでの最後の依頼を受けている。

周りを警戒しつつ何かあったら何とかしろという、割と滅茶苦茶な指示が出されている。

まぁそれでも今のところ何も起きていない。

差し詰めピクニックである。

暇という事もあり、隣で歩くフレアに別れてからのあらましを説明する。


1つはこのクマの毛皮を使ったフード付きのコートの完成。

頼んでいたとおりに出来ていた。

見た目はとてもシンプル。

飾り気などはないが、見えない所はしっかりとしており、見た目とは裏腹にとても細やかな仕上がりとなっている。


シンプルイズベスト。

いい仕事だ。個人的にすごく気に入っている。


2つ目は、畑の爺さんから貰ったポーチについて。

貰った経緯とどのようなものかを軽く説明し、その後について軽く話した。

かなり便利な物をタダで貰っては心苦しいので、爺さんから貰った野菜を料理して、お礼を言いに行った。

最初こそ嫌がっていたが、食べ始めると全部平らげた。

『不味くはない』とのことだ。

本当にこのポーチを貰っていいのか尋ねると『やると言ったんだから当然じゃ!!』と怒鳴られた。

宥めつつ話を聞くと、爺さんが昔若かった時にダンジョンから持ち帰ったものだそうだ。

底にある魔石の魔力が尽きると物が入れられなくなり、入っていた物が全部噴き出すそうだ。

魔石ならどんなものでも大丈夫らしい。


『勇者が使うようなものに比べれば明らかに劣る。時間干渉がされてないから保存も効かない。重量も一定の重さになると変わらなくなるが、それでも重いものは重い。入る容量も大きくない。何とも中途半端だが魔力を使わなくとも使える。お前には丁度良いじゃろ』


どうやら魔力を持っていないことを知っていたようだ。

有難く使わせてもらう事にする。


3つ目は図書館で調べた情報。

主にルテルの探し物のため、特にダンジョンを中心に調べた。

大きく分けて3つに分類される。


ダンジョンコア

ボス

人工形成


この3つだ。


ダンジョンコアはダンジョンそのものが意思を持っており、侵入してきた者を殺して餌にするそうだ。一番深くに核となるものがあり、それを外へ回収するか壊すことによりダンジョンを無効化する事が出来る。

核となるものは魔石のような物がほとんどらしい。

ちなみに売ると一生遊んで暮らせるそうだ。


存在することが稀でほとんど見かけることがないそうだ。

恐らくだが、こういったダンジョンにルテルの探し物がありそうだ。



ボスタイプは強力な個が中心となって出来るダンジョンらしい。

一つの所に留まったり、移動したり種類は様々だ。

ちなみにボスを倒すと普通より大きな魔石を手に入れる事が出来るが、ダンジョンの魔物が狂暴化し、大暴走(スタンピート )が起きるらしい。


この種類のダンジョンが一番多く厄介だとか。



人工形成タイプは文字通り人の手によって作られるモノだ。

作られる理由は様々だが、主に見られたくない物の実験や己の資産を隠すために作られるらしい。

自然で出来たものを利用したり、スキルを使って一から作ったり姿形は千差万別。

勇者の訓練のためにわざわざ作られたこともあるそうだ。


数は少なくないが、とても見つけづらいのが特徴のようだ。

幾つか当てはまらない物もあるが、分けるとするならこの3つのようだ。



「大体こんな感じだったな。フレアと別れてからは」


当然だがルテルや別の世界から来たことは伏せて説明する。

正直に別の世界から来たことを言ってもいいが、まず間違いなく頭が可哀そうな人と思われるだろう。

自分だったらそう思うからだ。


「そう、どこにいたのかと思えば図書館に入り浸ってたのね。見つからないわけよ」

「探してたのか?」

「当然よ。勇者が来たからその対策を一緒に考えようと思ってたのに..........まさか図書館にいるとは意外だったわ」

「こう見えて勉強家でね。辺境で田舎育ちの常識は、こっちじゃ通じないだろうし。劣人種たる自分としたら無い物を知識でカバーしたいと思ったんだ」


知識は重さのない宝であり力である。


「あなたが言うと嫌味に聞こえるわね。後、私それ嫌いだから自分で言うのもやめてくれる?」


二ッコリとほほ笑んでいるが明らかにイラついている。


「わかった。もう言わない。それにしても、フレアまでこの依頼に付き合わなくてもよかったんじゃないか」


そう、初めは一人で受けるつもりだったのだ。

しかし、出発間際。

フレアに遭遇。

色々と文句を言われる。

落ち着くまで聞き流す。

事情を簡単に説明する。

すると『私も付いて行く』と言い本当に付いて来たのである。


「貴方、私の協力者ってこと忘れてないかしら」


スッと目を細め睨んで来る。


「悪かったって」


フンッとそっぽを向きつつこちらに手を伸ばしてくる。

何だろうかと考えるがすぐに思いつく。


もうそんな時間か。


昼御飯の催促だ。


「ん」


収納袋からタコスを取り出し、フレアに手渡す。

パクリと頬張りムシャムシャと食べだす。


「これと毛皮の軽防具で許してあげるわ」


フレアにクマの毛皮で作った軽防具をプレゼントしたのだ。

初めは訝しんで、何の毛皮なのかいつ取ったのかとか色々と聞かれたが最終的に受け取った。

『無下に断るのもあれだし、その.........貰うわ。........ありがとう』、と思いのほか喜んでくれたようだ。

今考えると女の子のプレゼントに毛皮の軽防具はないなと反省する。

妹だったら鳩尾に肘うちとかしそうだ。


「それはよかった」


一安心したところで、こちらもタコスを取り出し食べる。


うむ、いい味だ。流石に素材にこだわっただけはあるな。


中身の具材と香辛料は慨嘆の大森林で採って来たものと畑の爺さんから貰ったものを使用している。

香辛料は、地球では見たこともない物から似たようなものまで豊富にあった。

それを家から持ってきたものと合わせて作ったが想像以上に美味しくできた。


妹達にも食べさせてあげたいものだ。


タコスに舌鼓を打っていると手を伸ばしておかわりを要求してくる。

気に入ってもらって何よりだ。


「それにしても、物資の運搬護衛の補佐なんて初めて受けたわ」

「人気ないのか?」

「ないわね。本来は低ランクの人が仕方なく受ける依頼だし、向かう場所も慨嘆の大森林から魔物を出さないための最前線。仕事が無くて困ってる人しか受けないわよ」


そう説明しながらグビグビと水を飲む。 


「それにしても、護衛をしている人物は運搬車の近くにいるのに、なんでこんなに離れてるんだ」

「それもこの運搬護衛の補佐に人気がない理由よ。私達は異変を感じたらすぐに護衛の人に知らせることと、その異変に身を挺して壁になり時間を稼がないといけないのよ」

「それ、低ランクの奴がする仕事じゃないだろ」

「まぁ、そんな事滅多に起きないわよ...........ここじゃなければね」


フゥ、と一息つきお腹をさする。


「美味しかったわ」

「そりゃどうも。確かに襲うには簡単。守るには難しい地形だもんな」


道は整備されておらず窪地になっており、すぐ横は山林となっている。


「盗賊や魔物。襲われなかった事なんてほとんどないみたいよ」

「碌でもない依頼だな」

「だから人気がないのよ。特にこの依頼はね。どうしてこんな依頼受けたのよ?」

「ギルド職員のオススメらしい」

「...........普通はそんな事されないわよ。嫌われる事したんじゃない?」

「力がない奴がコネで高い地位にいることが気に入らないんだとさ」

「あー............もしかして私のせいかしら?」

「さぁな。それより集中した方が良いんじゃないか。休憩中が一番狙われるだろう」

「私と貴方がいれば魔王が襲ってきても対処できるわよ」


キリッとした顔で言っているが、頬っぺたにソースがついて少し間抜けな感じになっている。


「そんなことが起きたらイの一番で逃げるからな」



・・・・・・・

・・・・・・

・・・・・



流石に最前線と言われる場所。まるで砦だ。

物資を中に届けるための書類を提出する。

その後、何の問題もなく砦内に入り、荷物を所定の場所に移し、ギルドカードを渡し、無事に依頼を達成した。


「何事もなく終わったわね」

「警戒してたのがバカみたいだったな。まぁ、運が良かっただけなんだろうが」


命の危険があると言っていたから警戒していたが、平和そのものだった。


「正直何も起きなかった方が異常とも言えるわね。心配しすぎかもしれないけど」

「まぁ取り敢えず、頼まれた依頼はこれで終わったし、さっさと帰るか」

「その意見には賛成だけど、そろそろ日も暮れそうだし明日にした方が良いと思うわよ」

「暮れる前に着けるかもしれないぞ」


そう言ってしゃがみ込み、フレアに背を向ける。


「.............やめて」


そんなことを話していると、軽いノイズ音がして、放送らしいものが始まった。


『大暴走、大暴走、全ギルドの関係者は緊急依頼である。すぐに近くのギルドで確認されたし』


そういった放送が2~3度繰り返された。

嫌な予感がする。早く撤収しないと


「..........何か聞こえたか? フレア」

「え? 何か聞こえたのシヒロ?」


どうやらフレアも同意見のようだ。


「んじゃ、気のせいだな。さっさと帰るか」

「そうね。それじゃ頼むわ」


ぴょんと背中に飛び乗る。


「君達、緊急依頼を無視すると降格と罰金が待ってますよ」


振り返ると先程まで一緒に依頼を受けていたパーティがいた。

男2に女1の混合パーティである。


ッチと心で舌打ちをする。

フレアは露骨に舌打ちをする。


「なに!! 緊急依頼だって早くいかないとな」

「それは大事ね。早くいかないと」


慌てて移動するが.........


「そっちじゃないよ。こっちがギルドの方だよ。受けたくない気持ちは分かるけど、バレると大変だよ」


何事もなく終わったあの依頼は、嵐の前の静けさだったのか


「そんなつもりはないわよ。知っていたら絶対に受けるわ。そうよねシヒロ」

「当然の義務だもんな」

「そう? それじゃ一緒に行こうか」


そう言って、そのパーティに囲まれる形で移動することになった。

勿論フレアを背負ったままだ。


強行突破は問題ないが逃げたと報告されるのは問題だ。

自分一人なら問題ないが、フレアも巻き込むことになる。

それは非常に申し訳ない。


周りに聞こえないよう小声で話す。


(どうする? 面倒な事になりそうなんだが)

(面倒どころじゃないわよ。最悪ね)

(どういう事だ)

(緊急依頼は大概ロクなことにならないのよ。内容は恐らく慨嘆の大森林の大暴走。まず間違いなく死人が出るわね)

(勇者達がボス倒したからか?)

(一概にそうとは言えないわね。このダンジョンはかなり特殊だから)

(..........魔力ないから、役に立てないと思うんだが。帰らせてくれるかな?)

(面白い冗談ね。でもあなたの事を知らない人から見れば肉壁ぐらいには役立つと考えそうね)

(帰りたい)

(同感ね)


そのままギルドまで連行される気分で連れていかれた。


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