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プール開きの前

 最新の分析や研究の成果なんだろうけども。


 どんどん面積が増えているよね。


 あれ、着るのも脱ぐのも、ものすっごく大変だとか。

 ピチパツで、数人がかりでえんやこらと。


 俺の学生の頃は真逆で、より薄く、より面積を少なく、って流れだったんだよな。


 はい。


 そっちの流れの方が断然いいと思っちゃう正直男子、挙手ー。


 かくして。


 また今日もこの学校で、なんだかへんてこな日常のひとこまが綴られたりするのである。





 さて。


 本日は、プール開きのための準備。

 プールの清掃作業を、水泳部の面々と一緒に行うのである。


 水泳部には、年中練習に使用可能な室内プールが用意されている。

 が、それは、競泳、飛び込み、シンクロ、水球、と、各種目ごとに割り当てられた専用性の高いもので、深さなどが、一般の生徒が授業で用いるのには向かない。


 今回清掃するのは、一般の生徒向けに用意された屋外プールの方である。

 本来はもう少し早く行うのだが、給排水機構が故障していたのが判明し、修理されるのを待っていたのだ。


「今日はすいません。せっかくのお休みの日なのにぃ」


「いえい…え?」


 現国担当女教師にして水泳部、シンクロナイズドスイミング担当顧問。

 天玄堂先生、登場。


 や、まあ、それはいいとして。


 教職、部活動、掃除。

 このカテゴライズに、真っ向から挑戦状を叩きつけてますね。


 その、真っ白なビキニ。


 しかも、頭にマイクロ付けてもいいレベル。


「やー、今日は晴れてよかったねー!」


「………」


 あー。


 愛加辺先生、貴女もですか。


 恥ずかしくないの?その、黒のVスリング。


 肉の凶器がほぼはみ出てますよ。


 あーあーあー。


 ほら。


 男子部員の局所的苦しみが、とんでもないことになってんじゃないですか。

 もうちょっと配慮しようぜ、なあ、聖職者。





「ところで、飛び込みの坂東先生と水球の真壁先生はどうしたんです?」


「あー、あの二人なら、ケツ出しの極小ブーメランパンツにテカテカオイルまみれの姿で出ていこうとしてたから、さくっと殺っといたよ!」


「一部の、ごく特殊な趣味の方しか喜びませんしねぇ。あれじゃ、カメさんがすぐに飛び出してしまいますしぃ」


「………」


 あの木槌は、桜島先生からの借り物か?

 返り血ついてんだけど、大丈夫?


 まあ、見苦しいには違いないのだろうが、貴女方がその二人の生殺与奪の権利を語るのはどうだろうか。

 思考の方向性も、ハプニング的危険性も、とても近いものがあると思うよ?


 あと。


 美女の口から、ケツとか、カメさんかっこ意味深かっことじとか、ね?ほら。





 掃除も粗方片付いたところで。


 昼。


「用務員さん」


「何かね、名も無き男子部員よ」


「この扱いに、なんだか理不尽を感じるのですが。その、作中の扱いに関しても。名前も無いとか」


「要因は、都合のいい時だけ破棄される男女平等、数の暴力、男心の利用。あと、この話限りのモブで、しかも男キャラが贅沢言っちゃいかんよ」


「………そうですよね。ぐすっ」


「そもそもだな、君らが鼻の下のばしてOK任せて!なんて言っちゃうからこうなってんでしょーに。恨むならば、下心を抑えきれない己自身を恨むがいい」


「ううう。返す言葉もございません」


 顧問の二人と男子の三倍近くいる女子部員一同は、空のプール内で、水鉄砲やら蛇口に繋いだホースやらで、楽しげに水遊びに興じていらっしゃる。

 水飛沫の中、濡れて輝く彼女らがキャッキャウフフする様は、絵面としては実に素晴らしい。

 まさに、青春の一ページ的なアレでね。


 一方。


「………」


 う゛~。


 あ゛~。


 プールサイドに満ちる、苦悶の呻き声。


 中天に差し掛かった太陽の放つ熱。


 プラス。


 コンクリートが放つ熱。


 プラス。


 バーベキューコンロの炭火の放つ熱。


 男子部員は、だばだばと止まらない汗の雫で、むさ苦しく濡れ輝いている。


 どこかの我儘残念独身美人女教師の昼食リクエストが、「一足早く海の家っぽいメニューで!」ってことで。

 このくそ暑い状況下で、焼き物、揚げ物、カレーやらラーメンやら、なんでここまで暑苦しいラインナップを揃えねばならんのかが、まずもって全く理解不能なのだが。

 それに加えて、カレーややきそばの具は少なめにとか、わざと焼きすぎろとか揚げすぎろとか、やたらと細かい、偏見に満ちた微妙な注文付き。

 今時そんなんで客を掴めやしないだろーに。

 娯楽の幅もがっつり拡がって、客の舌もどんどん肥えてる、現代社会の荒波を泳がねばならない海の家をなめてやしないかと。


 ま、それはさておき。


 当初の予定では、俺が下拵えをしたあれこれを、皆で手分けしてわいのわいのと作って食べて、のはずだったのだが。


 面倒くさいことから逃げ出すためには手段を選ばない女、愛加辺先生の、己の武器を最大に利用した、「お、ね、が、い、ねっ」攻撃に、男子部員は悶絶し陥落。

 きゅぴーんと目を光らせて、天玄堂先生と女子部員もこれに便乗。

 あからさまに普段と異なるわざとらしい猫撫で声にも関わらず、「やって、くれるよね?」てな言葉を投げかけられて、鼻の穴を広げてふんすふんす頷いちゃってんだもんな、男子部員全員。


 で。


 女性陣はさくっと調理をサボることに成功。

 男子部員が四苦八苦しながら調理し続ける料理を、ちゃっかりしっかりとかっ喰らいながら、キャーキャー水遊びしてるのだ。


 ん?俺?


 俺はしっかりパラソルで日陰を確保、打ち水を欠かさず、簡単で涼もそこそこ取れるかき氷コーナーでのんびりしてますよ。


「男子ってお馬鹿よねぇ」


 フリーズドライの苺をあしらい、バニラアイスを添え、イチゴシロップにホイップ生クリームと練乳をかけた、苺ミルク氷をしゃくしゃく食べながら、隣のビーチチェアで寛ぐ天玄堂先生。


「まあ、今日は私物の水着の娘も多いし…」


 ちろりと。


「とんでもない水着の女性もいますしね?約二名ほど。十代後半のリビドー全開男子に抗えってのも酷な話でしょ。たぶらかさるのも無理はない」


「………用務員さんは、たぶらかされてくれませんねぇ」


 はいはい。


 しなを作らない。


 不自然に胸を寄せたりしない。


「用務員さーん!抹茶ミルク氷おかわりプリーズ!これめちゃうま!」


 こらこらこら。


 愛加辺先生?


 その水着でプールサイドを走るんじゃない!


 揺れてる揺れてる、めっちゃ揺れてるから!


 ほらほらほら。


 男子部員共?


 血走った目ん玉見開いてガン見し過ぎだよ!


 焦げてる焦げてる、ほら料理焦げてるから!

 

 スポーツ系の水着と反比例するかのごとく、レジャー系は過激なものが増えてませんかね?

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