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ぽよ丸&ゴンザレス劇場

 癒しを、様々な人以外のものに求める人も多い。


 外見に癒され。


 仕草に癒され。


 触れあいに癒され。


 醸し出す雰囲気に癒され。


 これまで、その感覚は、なんとなくしかわからなかったのだが。


 なんか、ぼけっと眺めているだけでも、楽しい。


 これが、そういうことなのかね。


 かくして。


 また今日もこの部屋で、なんだかへんてこな日常のひとこまが綴られたりするのである。





~ぽよ丸劇場~



「………」


「………」


「………」


「………」


 そろーり。


 ぴこ。


 にゅん。


 ぴこぴこ。


「………」


「………」


「………」


「………」


 そろーり。


 ぴこ。


 にゅん。


 ぴこぴこ。


「あの、用務員様?」


「ん?」


「ぽよ丸様は、先程から何をなさっているのでしょうか?」


「何って、見ての通りだよ」


 雨がふったりやんだり。


 どっちつかずのお天気な、ある日の放課後、まったりタイム。


 ちゃぶ台の上には、ぽよ丸と、かたつむり。


 小窓のところにいたかたつむりくんに、なにやらぽよ丸が興味をそそられていたようだったので、彼には申し訳ないのだが、少々お付き合い頂いている。


 で。


 そろりそろりと触手を伸ばしたぽよ丸が、かたつむりくんがにゅるにゅると伸ばした触角を、つんとつつく。

 反応したかたつむりくんが触角を引っこめる、それをぽよ丸がぴこぴこよろこび、かたつむりくんがまたにゅるにゅると触角を伸ばす、ぽよ丸がつつく、反応して引っこめる、ぽよ丸がぴこぴこ………以下、エンドレス。


 それを、残りの面子がなんとなーく眺めてて。

 そんな、ゆったりとした空気。


 そろーり。


 ぴこ。


 にゅん。


 ぴこぴこ。


 そろーり。


 ぴこ。


 にゅん。


 ぴこぴこ。


「よくはわからんが、ぽよ丸はあれがとても楽しいらしい。なんか、見てると和むよな」


「にゅふふー。ちょーなごむー」


 ぽちは、ふにふにとした笑顔で、ちゃぶ台の縁に頭を乗っけてぽんわりふんにゃりしている。


「むむう、ですわ」


 不思議そうな顔で首を傾げている姫。


「姫、フィーリングの問題なんだからよ。んなもん、悩むだけ無駄だぞ?」


「でもレオ様、なんか、共感出来ないのが悔しいのですわ!」


「はあ」


 はっはっは。


 多分さ。

 今のこれは、すごく、無駄な時間だって言われちゃうかもしれないけど。


 なんか、それはそれでいいじゃないか、なんて思うわけよ。


 そろーり。


 ぴこ。


 にゅん。


 ぴこぴこ。


 そろーり。


 ぴこ


 にゅん。


 ぴこぴこ


 ほっこり。





~ゴンザレス劇場~



「用務員様。用務員様は、イヌ派でしょうか?それとも、ネコ派でしょうか?」


「は、どうした姫?急に」


「今日、クラスの女子とちょっと盛り上がったのですわ」


 しとしとと小雨が降り続く、ある日の放課後。


「そうだなあ、どっちも可愛いけど、どっちなんだって言われたら、犬、かな?」


「あ!私と同じですわ!ふふふ」


「お?そうなんだ」


「はい!お婆様が犬好きで、たくさん飼っておいでなのです!ほら!」


 嬉しそうに携帯端末で画像を見せてくれる姫。


 椅子に座る上品な老貴婦人の傍らに姫がいて、その周りを様々な犬達が取り囲んでいる。


「この子がヨーゼフ、この子はパトラッシュ、で、この子はアベル、それから…」


「………姫?」


「はい?」


「命名はお婆ちゃんが?」


「ええ、そうですけど?」


「そっか」


 お好きなんですね、○ウス世界名作劇場。


「あ!レオ様はどちら派でしょうか?」


「うー、悪りい、姫。俺、どっちも苦手なんだよなあ」


「あら?そうなのですか?」


「ああ、レオはさ、あっちにいた頃、何故だか小動物に嫌われててさ」


「まあ」


「そうなんだよー。俺は別に嫌ったりしてねえんだよ?なのにあいつらときたら、噛みつくわ、ひっかくわ、挙げ句は小さい方やら大きい方やら…ううううう」


 泣き叫ぶレオに呼ばれて何度も助けにいったもんだ。

 いや、懐かしいねえ。


「あうう、それは、なんともうしますか、その」


 うんうん。


 コメントに困るよな、こういうの。


 お。


 そういえば。


「ぽちはどっちなんだ?犬か?猫か?」


「もむ?」


 口一杯にシュークリームを頬張っていたぽちが、慌ててもっしゃむぐごくんと飲み込む。

 だが、ちょっとのどにつまってしまったらしく、さらに慌てて、目を白黒させながらアイスミルクで流し込んでいる。


 なにやってんだお前。


「ぶっはー。死ぬかとおもった!んでー?いぬ?ねこ?だっけ?」


「おう」


「ふはは!ぐもんでありますなあ。そんなのきまってるじゃないか!」


 ほう?


「ゴンザレス派じゃい!」


「………」


「………」


「………」


「がう!?」


 びくん、と反応したゴンザレスがぽちを凝視する。

 その瞳が、みるみるうちに、うるうるに。


「にっへー!」


 ずぴし、とゴンザレスに向かってサムズアップするぽち。


「がうがうがうー!」


「うはははは!よーしよしよしよし!よーしよしよしよし!」


 感極まって飛びついてきたゴンザレスとがっしり抱き合ったぽちは、あっちにごろごろ、こっちにごろごろ、転がりながらじゃれあっている。


「きいいい!?そんな!?そのような手があったなんてえ!?九条様ったら!九条様ったら!」


 いや、悔しいのはわかったから、その白目と縦線を引っ込めなさいな、姫。


 あとさ、ぽちは素直にズバッと言っただけで、別に何も企んじゃいないと思うよ?


「私も!私もゴンザレス派に!入れてくださいませー!」


 いや、姫?


 だからな?


「がる!」


 べし。


「ぐぶうお!?」


 ほら。


 あーあーあー。


 また鼻血がだらだらと。


「ぶはははは!姫の奴も懲りねえなあ?相棒」


「だな。ぽよ丸?」


 ぽよ丸も、「はいはいわかってますよー」てな感じで、ぴょんこぴょんこと姫の元へ。


「ううう…何故」


 そりゃ、失敗から何も学んでないからだろ?


 どちらかといえば犬派。

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