勧誘成功
お仕事なんだろうけどさ。
大変だよなあ。
露出の高い衣装でさ、艶のある演技して、人によってはアクションもこなすとか。
敵方の華。
だけどあれ、フィクションの世界の中で見るからいいんであってね?
かくして。
また今日もこの学校で、なんだかへんてこな日常のひとこまが綴られたりするのである。
★
「よーむいんさん!よーむいんさん!」
どがむ!と。
入り口の引き戸を破壊するつもりか?ぽちよ。
「なんだよ?なんか楽しそうだな」
「中庭で、この間の大天道なんちゃらがなんかやってる!」
ああ、田中君ね?
★
ば!
「おのれ!この大天道弾がいる限り、お前達の好きにはさせんぞ!」
「くくくくく。愚かなりや、大天道弾。我らが組織は、素晴らしき指導者を得て、さらなる悪の高みへと階を上るのだあ!」
ば、ば!
「な!なにい!?」
なんだこの暑苦しい三文芝居は。
「………」
よく見たら、ぞろぞろと。
全身黒タイツのこれまた暑苦しい連中が、何やら周りの野次馬さん達と触れあっていなさる。
あれか?戦闘員?
とててーと駆けていったぽちが、黒タイツマンと二言三言のやり取りを交わしたあと、とててーと戻ってきた。
「こんなのもらった!」
ふむ。
チラシが、二枚。
『来たれ!地球の平和を守るために!ヒーロー部』
『来たれ!地球を我が物とするのだ! 悪の組織部』
「………」
おい。
おいこら。
「何してくれちゃってんのこれ」
「どったん?」
「手え組んどるやん」
「うえ?」
「手え組んどるやん!ヒーローと悪の組織が!」
「お、おう」
なに一緒くたに配ってんだよ。
仲良くすんのは舞台裏でやれよ!やるなら!
表で堂々と見せちゃダメだろ?な?
「視聴者の、いやさ子供達の夢をぶち壊す蛮行、断じて許すまじ!」
「し、しちょう?え?」
怒髪天の俺に、ぽちが引いていなさるが、知ったことか。
田中の野郎、説教だ。
★
「おほほほほほほほほ!おーほほほほほほほほ!」
ば!
「お前は!?」
「おおお、なんと畏れおおいことか、直接お出まし下さらなくとも、大天道弾ごとき、我らのみにて…」
「よい。一度、顔を拝んでおきたかったのだ。惨めな死に様を晒す前になあ?」
ば、ば、ば!
「なんだとお!貴様あ!」
「く、くくくくく」
「おーほほほほほほほほ!」
「………」
田中君への説教など、新キャラの登場でぶっ飛んでしまった。
いやはや。
すげえな、ある意味で。
高々と結い上げた髪に、毒々しい赤やら紫の髪飾り。
キラリと光を反射する眼鏡の真っ赤なフレームにも、なにやらごてごてと角っぽいものが飾り付けられている。
ここからがヤバイ。
服じゃない。
身に纏ってるのが、服じゃない。
幅の異なる様々な、これも真っ赤なベルトを、要所々々に巻いているだけなのだ。
下乳やらへそやら下着っぽいものまで、いろいろ見えてしまっている。
後は真っ赤なロンググローブにロングブーツ。
そして何故か上着は白衣。
まごうことなき変態さんが、白い顎をさらして楽しそうに高笑いをしているのだ。
「大天道弾とかいったか?この闇の探求者、ヘルドクターネネ様に逆らうならば、覚悟するがいい。おほほほほほほほ!おーほほほほほほほほ!」
ええ。
もちろん。
野次馬の皆さんもドン引きですともさ。
「ないわー。ねねせんせ」
ぽちに同意するほかない。
貴女なにやってんですか、御子柴先生。
★
「ちょっとちょっと御子柴先生!?なにしてんですかあ!?」
野次馬掻き分け、愛加辺先生登場。
「気安く話しかけるでないわ、下郎。わらわはヘルドクターネネ。御子柴某なぞという者など知らぬ」
「馬鹿かあんたは!生徒の前でそんなカッコしてえ!次の職員会議のネタになりたいの?あと、歳考えなさいよ!」
「ちょ!?歳の話はやめなよ!こういうのはね、やると決めたら勢いで押しきって吹っ切れないと駄目なんだよ!あたしゃ生徒のために…」
おおう。
愛加辺先生と御子柴先生が口喧嘩を始めてしまった。
所在なさげにおたおたしている、ヒーロー部&悪の組織部の面々。
「あー、田中君?」
「あ、用務員さん」
「ご覧の通りの有り様だ。部員の勧誘アトラクションショーは強制終了だな。堅物の先生方が出てくる前に、さっさと撤収したほうが賢いと思うぞ?今なら御子柴先生が全部持ってっちまってるからな」
「そ、そうですね。おい皆!」
そそくさと移動を開始するヒーロー部&悪の組織部。
野次馬さん達も解散である。
「俺達も戻るぞ、ぽち。おやつ、まだ喰ってないだろ」
「あ!?そだった!いこいこ」
「おう」
ヒーロー部に悪の組織部か。
こりゃ、定期的になんかやらかしそうな雰囲気になってきたぞ。
★
で。
「なんでここに連れてくるんですか」
「いやー。この馬鹿を隔離する適当な場所が他に思い付かなくてー」
「馬鹿とはなんだよ」
ヘルドクターネネ様、用務員室に降臨。
ちゃぶ台に肘をついて、ちょっとやさぐれている御子柴先生と。
おやつの手作りかりんとうをばりもぐと喰いまくりながら、それを睨む愛加辺先生。
ぽちや姫達は、かりんとうを食べながら壁際で傍観中である。
あの。
ところで。
その格好で胡座は不味くないですかね?御子柴先生。
下着とか、もろなんですが。
「さっきも言っただろ?あたしゃ、困ってる生徒を助けてやったんだよ。あいつらの頼みを断ったあんたに、とやかく言われたかないねえ?倫」
「うぐう。でも、あんなのさあ」
「ああ、それじゃ、御子柴先生が顧問になったんですか?」
「そ。両方ね」
うは、マジか。
「えー?あれ、そういう話だったの?女幹部とか女将軍とか」
「部の内容にからめて、言葉を当てはめてただけのことさ。ま、行間から何かを察する、なんて真似は、あんたにゃ無理か」
「なにをー!?」
ぷりぷりと怒りだした愛加辺先生を見て、けたけたと朗らかに笑う御子柴先生。
素の彼女は、わりとさばさばした正格みたいだ。
んー。
しかしなあ。
格好から演技から、かなりの本気っぷりに、なにやらきな臭いものを感じてしまうのですが。
「なんで引き受けたんです?顧問」
俺が尋ねると、御子柴先生はにかりと笑う。
「地下アトラクションのクリーチャーから採取したデータをさ、そろそろフィードバックしたいんだよね。特撮系の怪人とか、燃えるじゃないか。あっはは!」
「………」
「………」
「………」
「………」
え?
地下のあの化け物共造ったの、あんただったのかよ!
田中君、逃げてー!
こちらが6月16日更新分の、49話となります。
ま、間に合ったー!




