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ある日の雑談

 ふらふらと目指すものも無く日々を送っていた俺に、業を煮やした世話焼きな伯母さんが無理矢理に仕事を宛がったのは、二年前になる。

 伯母さんは、そこそこ有名な学校法人グループ経営者の後継者であり、その内一つの理事を任されていたのだ。


 で。


 俺は強引に、その学校の用務員にされてしまった。


 しかしなあ。


 一体この学校は何を考えて造られたのか、二年居てもさっぱりわからないんだよな。


 しかも。


 ここで働いている連中、ここに通ってる連中、その中でも変わり種と有名な奴らが、何故だかこの四畳半の用務員室に寄って集って居座り、愚駄るのだ。


 全くもって迷惑な話なのだが、しがない用務員風情では、追い払うのも難しくてね。


 かくして。


 また今日もこの部屋で、なんだかへんてこな日常のひとこまが綴られたりするのである。


 甚だ不本意ながら。





「ここは用務員室なんですが」


「知っておるよ、そんなことは」


「いや、ですから、なんで貴方がここにいるんですか、校長先生」


「君が淹れてくれるお茶がおいしいから、とか言ったら、儂、どうなっちゃうのかな」


「殴りますね。用務員として」


「殴られちゃうんだ。儂、校長先生なのに。あと、用務員は関係無いよね?」


「五十過ぎのおっさんに気持ちの悪い台詞吐かれたら、やるせない憤りが拳に宿って発散されちゃうんですよ。実に自然な流れじゃないですか。用務員として」


「随分と歪な自然もあったもんだね。あと、やっぱり用務員は関係無いよね?」


「………」


「………」


 二人で茶を一服。


「………」


「………」


「ここは用務員室なんですが」


「知っておるよ、そんなことは」


「いや、ですから、なんで貴方がここにいるんですか、校長先生」


「君が淹れてくれるお茶がおいしいから」



 只今、描写を控えざるを得ない、残酷な虐待が展開されております。


 復旧まで、今しばらくお待ち下さいませ。



 ぐちゅっ。


 ごり。



 いまだ、続いております。


 もうしばらく、お待ち下さいませ。



「いやあ、ここまでこてんぱんにされるとは思っていなかったよ」


「中途半端はよくないですからね。用務員として」


「活字だからわからないだけで、今の儂、けっこうグロテスクだよ?あと、くどいから、もう突っ込まないからね?」


「昔、偉い人が言いました。『顔はやばいよ、ボディやんな、ボディを』と。だから、校長先生はまだ話ができるのです」


「今ほんとに偉い人だからね?色々洒落になってないよ?」


「………」


「………」


 二人で、茶をいま一服。


「………」


「………」


「教育者として、自信が持てなくてねえ」


「ほほう。たかが用務員にそれを相談するのも如何なものかと思いますが、とりあえず、聞くだけは聞きましょうか」


「新しく留学生が入ることになってね?」


 ぴらりと。


 校長先生が一枚の履歴書を見せてくれる。


「………」


「………」


「この、顔写真のところに貼ってあるのは、何です?」


「え?そりゃもちろん顔写真だよ。まあ、顔というか、全身像になっちゃっておるけどね」


「………」


「あれ?知らないってことはないよね。ほら、古典のRPGとかでも出てきおるし、有名でしょ」


「………」


「日本だとなんだか雑魚扱いされてるけどさ、実際はやっかいな相手らしいねえ」


「留学生、なんですか」


「うん。どういう経緯で受け入れが決まったのかとか、詳しくは聞かされてないけど。先方さんのたっての望みらしいよ?」


「………」


「流石にねえ、自信が持てないんだよ。どう意志の疎通を図ったらいいのか…。教育者として、どう導いてあげられるのか…」


「………」


「スライムの彼を」


「………」


「………」


「校長先生、きっと大丈夫ですよ」


「そ、そうかね?」


「ええ。悩むところが“そこ”なら、きっと大丈夫だと思いますよ?俺なんかには、きっと無理ですから」


「うん、そうかあ、うん、じゃ、頑張ってみるかな」


「その意気ですよ。あ、お茶、もう一杯、いかがですか?」


「ありがとう、頂こうかね」





 さて。


 この留学生のスライム、ぽよ丸と、俺は無二の親友となるのだが。


 それはまた、永遠に語られない、別の話である。


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