7章 涙
その日はとてもよく晴れた暑い日で、空が透き通っていた。
バイトがなければ海にでも出かけたい気分だった。
煙草の煙がバイト先の休憩室を白くしていた。
そんな休憩室にはいると、彼女は泣いていた。
僕は驚いた。しかし、僕はその涙をうつくしいと思ってしまった。
「ねぇ、何で泣いているの?」
いつも人前では元気で無邪気な笑顔を振り撒いている彼女の涙を目のあたりにして、僕は唐突に質問してしまった。
僕はバイトにも慣れ、周りにも少しだが気を使わずにいれるようになったが、まだ彼女とは仕事の話しかしたことがなく、プライベートの話はお互い一切、話はしなかった。
話す必要はないと思っていたし、彼女のプライベートは知らなくても良いと思っていたからだ。
そんな、仕事だけの関係だった。
そんな関係だった彼女に突然、質問をしてしまった。
「・・・今日も暑いね,仕事はだり〜し、こんな日は海にでもいって泳ぎたいよね」
僕は彼女に聞いてはいけないことを聞いてしまった気がして、強引に話を変えた。
「そうだね、海、いきたいよね、海・・・みたいなぁ・・」
彼女は遠くを見るようにして、僕にそう返事をした。
もう、彼女は涙をながしていなかったが、休憩室の小さな窓から入ってくる夏の日差しで、彼女が流した涙のあとがキラキラと輝いていた。
僕はそんな彼女の顔に見とれてしまっていた。
「今日、このあと時間ある?」
「え?」
彼女は僕の突然の言葉に驚いたようだ。
僕自身もなんでこんなことを言ってしまったのか驚いていた。
僕は彼女がなんで泣いていたかわからなかったが、放ってはいけない気がして、気づいたら彼女を誘っていた。断られると思った。
というか、誘ったのを後悔し、断ってくれと願った。
だが以外にも彼女は少し考えてからゆっくりと首を縦にうなづき、涙の跡を拭いた。
そのときには彼女はいつも僕が知っている笑顔が良く似合う、元気な彼女に戻っていた。