5章 ココロの扉
「さっきはごめんね」
僕らはいつも映画みたあとにきているカフェにきていた。
コーヒーとレモンティーをオーダーした僕らは、しばらく沈黙したと、やっと落ち着いたのか彼女から話し掛けてきた。
「あ、ああ、・・なんだったんだよ、、なんで突然なきだしたんだ?なんか気に障った?」
「ごめんね、さっきはちょっと感情が高ぶっちゃって、、ほんとごめん、気にしないで。ね?」
「気になるよ。ちゃんとわけを言ってよ。」
「ちょっとね。なんでもないの。もう大丈夫だから。」
「なんだよ・・」
僕は力なく答えた。
「愛してる。」
「え?な、なんだよ、突然。」
「うんん、別に。だた、言いたくって。愛してるよ。」
「わ、わかったよ。まったく、。突然泣き出したりわけわかんねぇなぁ」
僕は、彼女の言葉に内心どこかほっとした。
涙のわけがわからななったし、僕のせいかと思い、嫌われたんじゃないかと思ったが、どうやら違うようだ。
「・・・ねぇ、将来のこと、・・・どうかんがえてるの?」
「え?」
「・・・あなたは、いつもどこか悲しい目をしているの。・・・なんで・・人を理解しようとしないの?今はいいかもしれないけど、この先そんなんじゃ・・・ダメだよ・・。いろんな世界をしらなきゃ。そして、しっかり目標も作って、その目標のためにしっかりと自分の足であるいていかなきゃ。・・ね?」
「・・・なんだよ、いきなり。」
やさしい声でそう彼女が言ったのは僕が彼女との話し合いに一区切りがつきコーヒーをおかわりした後のことだった。
僕は突然の彼女の言葉に戸惑い、ごまかす様に、窓の外の街灯がいちょう並木のさびしそうな姿を浮き彫りにしてるのを見ながら、クシャクシャになったソフトケースから煙草を取出し、彼女からもらったジッポで火をつけた。
まるで彼女に心の中をのぞかれているような気持ちになり、そう答えるのが精一杯だった。
今まで必死で隠してきた本当の自分。
本当の僕は弱虫だ。
自分が傷つきたくないから他人と干渉したくない。
自分を守る為に嘘もつく。
相手にどう思われているか不安で、恐怖にかられる。
人の目が気になる。
僕の事どう思ってる?
僕を嫌ってる?
僕を見捨てる?
・・・。
知らず知らず僕はひねくれた人間になってしまっていた。
楽なほうにばかり流れていっていた。
人生なんて生まれたときから決まっていて、だれもその運命には逆らえないんだ。
だったら、その目の前にひいてあるレールを疑うことなく進んだほうが利口だと思うようになった。
どうせいつかは必ず死ぬんだし。そして死ぬときは必ず一人だ。
そう考え、他人との干渉を極力避けてきた。
その例外が彼女だった。
彼女の存在に自分でもわからないがどこか惹かれていった。
そして彼女といれるなら、このつまらない人生も悪くないかなっと、思うようになっていた。
その彼女に僕の人生を否定された感じがして僕はショックだったのかもしれない。
「・・どういうことだよ。」
言葉が頭を通らず、一気に喉から感情とともにでてしまった。
そっからはもうとまらなかった。
いろいろな考えが浮かんでは消え、いつもの僕ではなかった。
「なにがいいたんだよ。なに?なんなんだ?お前は哀れんでるの?」
「ち、ちがうよ、私はただ・・そうじゃなくて、あなたはいつも、人と距離を置いてきたでしょ?言いたいことも言わないで・・だからせめて私には言ってほしいの、なにを考えて、何を思っているのか、素直に言ってほしいの。」
「お前に言われたくねーよ。だいたいおまえになにがわかるんだ?」
僕は、自分の中のわだかまりを彼女にぶつけてしまった。
彼女はなにも悪くないのに。
自分の感情をがむしゃらに吐き出し、言うだけ言って彼女の前から消えた。
そしてクリスマスイヴを迎えた。
世間では、突然の異常気象により東京が40年ぶりのホワイトクリスマスになるかもと騒いでいた。