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2章 私の答え

「ね?雪になったでしょ?」


どのくらいの時間がたったのだろうか、


私はいつまでも彼の腕のなかにいたかったが、意を決して彼の腕の中から離れ、そう言った。


「・・うん。」


そういった彼の目には光るものが溢れていた。


泣いている。


顔をぐちゃぐちゃにして。


それをみて私はまた抱きしめたくなった。


だけどダメ。


そういいきかせて、自分を押し殺すように冗談まじりにきこえるように言葉を続けた。


「来年もいっしょにクリスマスをすごしたかったなぁ」


精一杯のやせがまん。


涙を必死にこらえた。


泣かないように楽しいことを考えようとした。


だけど、浮かんでくるのは彼との思い出ばかり。


「ごめんね、約束やぶっちゃって。」


私は笑顔でいようとしたが、涙が耐え切れず、またながれだした。


彼も泣いていた。


ダメだ、これ以上彼の顔をみれない、みたら決意が揺るぎそうだ。


「さよならは言わないよ。悲しくなるから。」


さよならは言いたくなかった。


いったらもう、本当に一生あえなくなる、そう思ったから。


「いままでありがとうね。たくさんのいい思い出をありがとう。」


自分でも声が震えているのはわかった。


でも、しっかりいわなくちゃ。


「じゃ。またね。」


私はそういって、彼から離れ、歩き出した。


涙が次から次へと溢れ出した。


つらい。


本当につらい。


彼のこと好きなのに。


本当は今からでも引き返して彼に抱きつきたい。


あいしてるって言いたい。


だけど、それはできない。


彼の為に、彼の未来のために。


私の一番の幸せは、彼が幸せに生きていくことだから。


そう思って、振り返らないようにした。


これでいいんだ。


これで彼の未来は変わる。


彼は死ななくてすむ。


白く降り続く雪は、まるで私を慰めてくれてるように思えた。




「ちょ、ちょっとまてよ!」


やばい、彼の声が聞こえるよ、幻聴だよ、やっぱ、私はそんなにも彼が好きなんだ。


「おい!まてって!」



幻聴じゃない。


今度ははっきりと聞こえた。


彼の声だ。


私はビックリして後ろを振り返った。


私はいつのまにか横断歩道を渡っていて、その車道の向こう側に、彼がいた。


彼が私を追いかけてきてくれた。



「ごめん!」


彼は大きな声でそう言った。


謝ってきた。


なんであやまるの?


私は、もう一度彼の姿をみることが出来るなんて思ってなかったし、ましてや追いかけてきてくれるなんて思いもしなかったから、すっごい驚いたし、すっごいうれしかった。


私の涙は悲しみの涙から、嬉し涙に変わった。


「いまさらかもしれないけど、、僕は、、僕は、きみが好きだ!僕にとって君は大切な人だって気付いたんだ。君といるといままで経験したことない気持ちになれた。はじめて人を真剣に好きになれたんだ。はじめて、心から言えるよ、愛してるって。君を愛してる!!」


うれしい。


そんな風に思ってくれてるなんて。


すっごくうれしい。


私は、彼を想う気持ちをもう抑えることが出来なかった。


今すぐ彼に抱きつきたい。


そうおもった。



しかしその刹那、また突然、頭に映像が飛び込んできた。


未来だ。


でも、この映像は・・そう、何回も見たことがある。


そうだ、夢でみるあの場面だ!


あのいつもの夢だ!


なんで!?


いや、今回は、顔が見える、、いつもぼやけてみえなかったのに。。。


あれは・・!!


私だ!!


私が立っている!


そして、、向こう側にいる男性は・・彼だ!


彼がいる!!


あの、夢にでてくる男女は、私たちだったのだ!



私はすべて理解できた。


あの夢は私たちの未来だった!


ということは、、彼の死は・・事故だったんだ・・それも、、今!


今この場面だ!このすぐあとに!!


なんということだ!


彼と別れても、結局そのとおりの未来になってたなんて!


彼は、私にかけよるべく、走り出そうとしていた。


ダメ!!!



「こないでぇぇ!」


こっちに来てはいけない!!


そのとき、猛スピードでこっちに突っ込んでくる車が見えた。


このままでは私が見た未来どおりになってしまう!!


彼は死んでしまう!!


「こっちにこないでぇ!!!」


必死にそう叫んだ。


彼は私の制止を聞かず、赤信号を駆け出した。


もうだめ!!


彼の体は車のヘッドライトに包まれていった。


彼の足がとまった。


轢かれる!


彼が死んじゃう!!



い、嫌ぁぁぁ!!!!!







・・・・


・・・・


遠くで彼の声が聞こえた。


顔に水滴が当たった気がした。


目をあけると、そこには彼がいた。


泣いている彼が。


「おい、きこえるか?すぐに救急車がくるからな?大丈夫、たいしたことないから、な?」



そういっている彼の声は小さく聞き取りにくかった。


なんでわたしは寝てるのかな?


そうだ、、私は、あの瞬間、体が自然に動いて・・・


彼をたすけようと必死で・・・


そっか、そうだ、彼をつきとばしたんだ。


無我夢中であんまりおぼえてないや・・


頭もボーっとしてるし・・。


でも、よかったぁ・・・彼・・助かったみたい・・。



「よ、よかったぁ。あなたは無事なのね?」


なんか言葉がうまくでなかったけど、彼が生きているのがうれしかった。。



「あ、ああ、僕はなんともない。君のおかげだ。」



「なんで、なんで僕を助けたんだよ。なんで・・ぼくなんかを。。」


そういった彼は子供みたいに泣いていた。



「・・な・・なにいってんのよ・・・あたりまえじゃない・・・そんなの・・・だって・・

愛してるんだもの・・・」



本当によかった・・。


彼は死なずにすんだんだ・・。


私は・・彼を守れたんだ・・・。


私は・・・彼の・・未来を変えたんだ・・。


大好きな彼を・・私は・・・。



私は安堵からか、急に眠くなってしまった・・。



体に力がはいらなくなるのを感じた・・。



もう、何も見えない・・




何も聞こえない・・・





わかるのは・・私を抱いている、彼の温もりだけ・・・。


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