3章 約束
「プレゼントも用意してあるし。」
ショッピングモールでの買い物に付き合ってくれた彼は疲れたのか、早く帰ろうと言っていたけど、私はあの海が見たくて嫌がる彼をつれて、私たちは海にきていた。
そんなとき、クリスマスの話題を話していたら、彼の口から私の想定外の言葉が飛び出た。
「・・・・ほんと?・・・うれしい・・。」
クリスマスプレゼント?彼が?
正直驚いた。
彼が私のために考えてくれている。
たとえ、つい流れで言ってしまった言葉だとしても、私は素直にうれしかった。
「ねぇ!イブの日は、またここにこようよ!この海を見にね!ねぇ、いいでしょ?」
そういいながら私は彼の腕をとり抱きしめた。
するとなぜだか彼はちょっと顔が緩んだのがわかった。
「別にいいけど、海が見たいなら他のきれいな所、連れてってやるよ」
「やだ!この海がいいの。この海が好きなの。うまくいえないけど、この海は・・・やっぱり、秘密!」
「なんだよ?気になるだろ〜?おしえろよ」
「ダメー、ないしょです」
やっぱり彼はしらないらしい。
私が彼を好きになったのはこの海でだった。
彼がはじめて連れてきてくれた海。
多分、彼は私があのとき流した涙の意味はわからなかっただろうけど、彼なりに不器用ながらも私を元気付けてくれた。
そんな彼がなぜだか、かわいく見え、心が安らぐのを感じた。
そのときから、この海はとても大切な場所になった。
それにしても初めてきた海ってことぐらい、覚えてないの?
しょうがないなぁ。
彼が覚えていないのは少し不満だけど、私一人だけの甘い秘密みたいで、独り占めしてやろうと思った。
「なんだよ〜、ちぇ、まぁいいや」
彼は流したような返事をしたが、私にはそれはちょっとすねてるって、すぐにわかった。
それがかわいくて、私は左手で彼の右腕をぎゅっと握り締めた。
彼の左手は私が買った服をもっていたので、少し歩きにくそうな彼がちょっと愛しかった。
星を見るために座りやすい場所を探して歩いている彼の腕につかまりながら、あのときのことを思い出していた。
恋に落ちた日のことを。