第2部 1章 ホワイトクリスマス
(ちょ、ちょっとまてよ!)
雪の降る夜の街の一角の交差点。
横断歩道をわたりきった女性に、息をきらして走ってきた男性がそう呼び止めた。
赤信号が二人をさえぎる。
その声に振り返る女性。
顔は見えない。
そこで古いビデオのようにノイズがはしるからだ。
なにやら道路をはさんで会話してる。
ノイズがはいって聞き取れない。
信号がなかなか変わらない。
去ろうとする女性。
信号無視してわたる男性。
と、そのとき、猛スピードで突っ込んでくる車。
こだまするブレーキ音。
ドンっという鈍い音とともに叫ぶ女性。
地面に倒れてる男性。
泣き叫ぶ女性。
そこでいつも夢から覚める。
そう、これは私が小さいときから何度も繰り返しみてきた夢だ。
毎回同じ夢を見る。
一体誰なんだろう。
あのあとどうなるんだろう。
多分これはまだみぬ未来の出来事だということは私にはわかっていた。
私の未来なのか?
一体いつの?
この夢を見た日は大抵悪いことが起きる。
昔からそうだった。
だけど、今日だけはなにも起こらないで欲しい。
だって今日はクリスマスなのだから。
7回目のコールで音声が悲しく流れた。
[ただいま電話にでることができません。御用の方はメッセージをどうぞ]
私は彼に何度電話しただろうか。
何度、メッセージを残しただろうか。
ここ2週間電話もメールも返事がない。
でも、悪いのは私だから。
あの話をすれば、彼は拒絶するのはわかっていた。
だけど、話さずにはいられなかった。
彼のために、そして私のためにも。
私は彼が好きだから。
異常気象により東京では40年ぶりのホワイトクリスマスになるでしょうと、テレビのお天気お姉さんがガヤガヤ騒いでいた。
そんなの私にはあの日からわかっていた。
彼は、あの日交わした私との約束を覚えているのだろうか?
そうおもいながらも、私はすぐにでもでかけられるよう準備だけはしていた。