出会い、そして謎い再会。
私は今、これからお世話になる教室の前に立っている。
普通なら、ここまで来たらすんなりと中に入るものなんだろうが私にはできないっ。
だってこう見えて結構シャイで人見知りなんだよ?
いきなり、たくさんの目にさらされるとか……なんだその羞恥プレイ。
知らない人に話しかけられて半泣きになってた昔よりはましだけど‥‥‥
ーー行くか。
覚悟を決め、ドアを開ける。
ガラガラッッ
あれ?
ガラガラ
そっと扉を閉める。
さっきのはきっと見まちがいだよ。
よし。
再チャレンジしよう。
ガラガラッ
って‥‥‥
「やっぱり誰もいないじゃん!!」
入学早々誰もいないばか広い教室に机たちと2人(?)っきり。
そんなプレイいらないんですけど!
羞恥プレイどころじゃないって!
全然嬉しくないわっ
むしろ寂しくて死んじゃうわっ。
私は人間という名のうさぎなんだよぅ…。
いいもん!
こうなったらこっちにも考えがあるもん!
「ういしょっと。」
できるだけ長く机を並べてくっつける。
教室が無駄に広いせいか、縦に教室にある机、30個ほどを全部並べられた。
生徒が私以外いないんだったら、こんな広さいらないじゃん‥‥‥。
そして‥‥‥‥‥
「うぅおぉぉぉぉぉぉっ
美羽さん立腹してるぞぉぉぉ
うおぉぉぉぉ!」
叫びながら机の上をころころ転がり続ける。
高速回転、名付けて『美羽ちゃんスピン』だ。
ころころーー
坂道転がるのと違って自分で力入れないとだめだから
けっこうしんどいんだよね、これ。
やめないけど。
ころころーー
んー、そろそろ疲れてきたなー
ころころーー
ピタ。
ふと止まる。
疲れたからではない。
決して違う。
だってすぐ目の前にある綺麗なお顔と目が合っちゃってるんだもん。
「わあああああっ」
慌てすぎて無意識に正座する。
「びっくりした!
こ、こんなとこでなにしてんの?」
つとめて笑顔で言う。
ってゆうか、いつの間に入ってきたの!?
ドア開く音しなかったよ!?
「不法侵入だああああ!」
「ドア、普通に開いてましたよ?」
あっそういえばドアは開けたままにしてたんだった!
てへっ☆
「机の上を転がっている人を見て、私のほうが驚いたのですが‥‥。」
綺麗な顔、じゃなくて人は苦笑した。
美少女の苦笑ヤバイ!
見とれちゃったよ。
「私もこのクラスに所属することになったんです。
申し遅れましたが、私は南條花恋といいます。
これからよろしくお願いしますね。」
おぉう。
笑顔も綺麗でかわいいわー
略してキレカワだわー
しかも、ちゃっかり手とか握られてたりする。
このちゃっかりさんめ!
すでに私のハートはドキドキパラダイスだよ、この野郎。
よし。
ぐいっ
握られてる手を引いてこっちに引き寄せてみる。
「キャッ」
ーードサッ
花恋が私の方に倒れてきたのを抱きしめた。
そして支えきれず共倒れ。
って目の前にいかにも柔らかそうなほっぺたがある。
思わずスリスリする。
おぉ! すべすべー
花恋、見た目通りもちもち肌だね!
「花恋ぎゅっぎゅー!
私は波瀬美羽だよ!!
これからよろしくねっ」
決めポーズとか披露してみる。
このポーズのいいところは寝転んでても出きるところだよねっ
花恋の顔を見てみると予想外に倒れたせいか目を大きく見開いて、荒い呼吸を繰り返してる。
心なしか頬も少し赤くなってる。
さっきの決めポーズ、初披露だったのにちゃんと見て欲しかった‥‥‥
初披露がまさかのスルーとは……
ちょっと腹立ったからがん見しとこう。
うわぁ。
至近距離で見たら綺麗な顔がよく見えるなぁ。
当たり前だけど。
長いまつげに大きい目。
スッと伸びた鼻筋にちぅちゃい口。
髪まで綺麗だ。
「ちょ、ちょっと待ってください!
いきなり抱きしめるなんてびっくりしてしまいます!」
私の視線に気づいたのか、
慌てて起き上がって教室の隅に移動する。
そういえば、顔がすごい近かった気がする。
もっといたずらしとけばよかった……
でもだからって、そんなに離れなくていいのになぁ。
‥‥‥残念。
もう一回抱きしめに行こう!
めげないぞぉ。
「ぐへへ。 そこのお姉ちゃん。 私と遊ばなぁい?」
私が近寄って行ったら素早い動きで逃げ出された。
怪しくなんてないのになぁ。
「追いかけっこだね。
よーしっ」
口元に笑みを浮かべて追いかける。
ーー焦った顔をしてひたすら逃げる少女。
そして、ニヤニヤしながらその少女を追いかける少女。
周りから見れば、女の子同士って言っても、貞操の危機に見えないこともないよなぁ。
なんかちょっとゾクゾクする!
「かっれっんっ! まってっ!」
「いっやっでっすっ! 待ったら私、襲われちゃいます!」
一筋縄ではいってくれない。
「やだなぁ。 そんなことないよー。
私と楽しいことしようよー。」
「その言い方が怪しいんですよ!」
抵抗する花恋。
あっけど、よく見たら花恋もちょっと笑ってるかも。
ここは!
「あははははっ
待てー!
捕まえちゃうぞー☆」
リア充の習わしをする。
「うふふっ
捕まえてごらんなさーい♡」
返された!
しかも、制服のスカートの端をひらひらさせてる。
見えそうで見えないチラリズムについ魅入ってしまう。
チラリズムに弱い美羽さんなんです。
あ、あと少しで‥‥‥‥‥
はっ!
すっかり花恋のペースにされちゃってた!
花恋のほうが上手だったか。
‥‥‥‥精進します。
でも、貞操の危機から一気にバカップルに変わっちゃったね!
これで双方の合意の上だから怪しくないよねっ
なにをするとは言わないけど!
‥‥‥‥やばいよ、思考回路がどんどんイケナイ方に入っちゃってる。
ペース上げるぞー!
私の秘密奥義『障害物なんて気にしない』を繰り出す。
「ちょ、ちょっと!
机とかいすとか後で自分で直してくださいね!?」
あっあとちょっとで捕まえられそう!
さすが秘密奥義・
手を伸ばせは届く距離にまで近づいた彼女をだきしめようとするーー
「はぁいっ
みなさぁん!
こーんにーちわぁ♡
みんなのアイドル、姫ちゃんだよ☆
あっでもぉ、今日は入学式だからはじめましてだぁ!
姫ちゃん、まちがえちゃった
えへっ☆☆」
ーーっはいっ。
なんかあざとそうなキャラの人来たー
ドアを背中に立ってるから顔は見えないけど、声からしてそうだよね。
どんな人だろ?
後ろを振り返ってみる。
「うそっ!?」
そこには、今朝の定期入れ少女が立っていた。