第十二話 反逆者
現実世界でも黒幻霜鬼でもない歪んだ空間に、柱が五本立ち並んでいる。立ち並ぶその形は五芒星に酷似していた。柱の中央には培養容器の様な物が設置されており、管のような細長い筒が柱から容器に繋がっている
異様な雰囲気がそこには漂っていた
無音の空間にカツンと硬い音が響き、空間に波紋が拡がる。その音が四方に広がっていくと、今度は別の方向からカツンと音が響いてくる。音は次第に増えていき、揃いの黒い着物に身を包んだ複数の鬼が姿を現した。数秒遅れて別の一人の鬼が静かに、圧倒的な威圧感を放ちながら現れ、他の鬼は彼にひれ伏す
??
「鬼烏、小娘の方はどうだ?」
鬼烏
「はっ、邪鬼を用いて捕縛、その後、洗脳して覚醒させる予定です」
??
「多少は痛めつけても我らの血が混ざっているから大丈夫の筈だ。必ず捕らえよ、小娘の力は我らや計画に欠かせない」
鬼烏
「御意」
??
「我らの計画は奴らに漏れ出していないだろうな?」
鬼
「その点は問題ありません。奴らに通じていた者は全て排除しました」
??
「そうか。警戒は怠るなよ、計画を吐露した者は容赦しない」
鬼一同
「「「御意!」」」
部下の鬼は一斉に返事を返すと自分達の職務に戻っていく。歪な空間に残った鬼は培養容器のそばに歩いていき、培養容器に手を触れる。直にこの中で培養されるだろう少女を思い浮かべ、鬼は口を歪ませる
??
「クククク・・・貴様の命は消える定めなのだ・・・」
自分を切り捨てた鬼王への復讐を誓い、賛同する者を集め、気に掛けている少女を使って鬼王の息の根を止め、そして、自分が新たな鬼王となる・・・それが彼の目指している未来図。己が全ての鬼を統べる王になり、人間たちが住む現実世界を掌握し、全ての妖怪の頂点に立つ事を夢見て彼は邪気に染まっていった
『武で支配しても、やがてそれは崩壊していく。武ではなく、知を使って他を圧倒すべし』
いつだったか彼は忘れたが、前鬼王の側近だった鬼が言っていた言葉だ。現鬼王がそれを信仰するのに対し、彼はその言葉を馬鹿らしく感じていた。いつしか現鬼王が進める平和政策に相容れなくなり、不要と見なされ彼は組織から切り捨てられた。その出来事が現鬼王への反逆心を駆り立て、反旗を掲げるに至った
??
「死の間際に悔やむがいい・・・、私を見限ったことを・・・。フフフ・・・アッハハハハハハ!!」
鬼王の心の臓を抉ることを夢見て彼は声高らかに嗤っていた