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この小説の内容はすべてフィクションであり、実際に存在する人物、団体、地名などは関係ありません。あしからず

授業も終わり、今は放課後。完全に沈んでいる二人を引っ張るようにして部室へむかう。二人の見た目はいいのでかなり目立ってしまう

そんなこんなでやっとの思いで部室に辿りついた時にはかなり疲れていた。なんで始める前から疲れなくちゃならんのだ

中に声をかけて先に居た先輩に鍵を開けてもらい中に入る。ちなみに先輩は着替えて先にはじめていたらしい

俺は二人をなんとか正気に戻して着替えさせる。俺もその隣にある男子用更衣室―本来はなかったが部室にする際に増設した―で着替えて外に出る。さすがに女子は時間がかかるのでまだ先輩しかいなかった。

「後輩はやはり着替えるのが早いな。男子はみんなそんなに早いのかい?」

「さぁ、どうでしょうね。他人の着替えになんて全く興味ないですから俺が早いのかどうかは分かりませんね。でも女子よりは早い自信はありますよ」

先輩の本当にどうでもいい問いに、体を解しながら軽く答える

「そうか、やっぱり女子より男子に生まれたかったな。楽そうだ」

「またそんな事を言って。別にどっちがいいかとかないですから、もっと自分を肯定してくださいよ」

本気か冗談かわからないことを呟く先輩にいつものツッコミを入れる。先輩はどうにも今の自分が嫌いらしい。自分は自分でしかないのだから現状で満足できないなら満足できるまで頑張るしかないだろうに

「先輩、久しぶりに組み手でもやりますか? 最近あまりやってなかったんで丁度いいと思いますけど」

「つまり君はあの二人をお預け状態にして焦らしプレイをしたい訳だな」

いきなりの爆弾発言だった。驚いて必要以上に関節を曲げすぎてしまった、洒落じゃなく痛い

「べ、別にそんなこと思ってませんよ! 大体お預けってなんですか! 俺にそんな特殊な趣味はありません!」

詰め寄って強く否定する。本気でそんな趣味はない

「だって、ほとんど何も出来ない人がいてその人がやりたい事を目の前でやるわけだろ。まごうことなき焦らしじゃないか」

もう疲れた。先輩の肩に手を置きながら膝から崩れ落ちる。この先輩は一日に3回は俺をいじらないと気が済まないのだろうか?

そろそろ慣れて来たつもりだったが、まだまだ甘かったようだ。やはりこの先輩侮れない

「もう何でもいいです。好きに解釈してください」

付き合ってるのにも疲れたので降参した。ヘタレと言うなかれ。これでもいつも以上に頑張ったんだから

体をほぐすのもそこそこに立ちあがる

「それで、どうするんです? やるんですか、やらないんですか?」

「ヤるだの、ヤらないだの君は思っていた以上に変態だったようだな」

「もう付き合いませんよ。いいから結論だけ言ってください。断るのなら俺は自分で始めますから」

先輩がじつにつまらなそうな顔をしてため息を吐く

「やるに決まっているだろ。貴重な君との時間だ。大事にさせてもらうさ」

「それならさっきまでのはかなり無駄だったように思うんですけど、それは俺の勘違いですかね?」

「さぁね。私はそんなことまで分からないよ」

先輩の芝居がかった態度に少しイラッときたがなんとか抑える。この人に怒っていてもそれこそ時間の無駄だ

俺はそのまま無言で先輩から距離を取る。先輩も同じように後ろへあとずさる

これで二人の距離は大体五メートルほどになる。この距離ならやろうと思えば一瞬で肉薄できるが完全な零距離はむしろ先輩の得意な間合いだ

開始の合図はない。実戦においてそんなものないからだ。俺達のルールに『開始は突然に』というものがある

でも、大体お互いのリズムは分かってるし、ほとんどの場合は同時に動き出すんだけど、今回は違ったようだ



「はぁっ!」

今までになかったリズムで先輩が飛び出してきた。その速さもいつもと違いかなり速い。なんとか横に跳び、かわすがすぐにまた飛び込んでくる

「くっ! いつもの違う!?」

その動きに驚きつつも的確に捌いて距離を離そうとする。だが先輩も自分の距離を知っているため、なかなか離れようとしない

「どうした後輩! なにを驚いている!」

先輩がいつもと違いかなり声量の上がった声を上げる。どうもこの人はこういう時にテンションが上がる人らしい

俺は言葉に反応する事もせずに攻撃を捌き続ける

もう少し……もう少しでわかる!

……視えたっ!!

「ここだ!」

真っ直ぐボディを狙ってきた右腕を反身になってかわし、その腕を掴みながら体を先輩の体に合わせる

そして足を支点にいっきに体を動かす

完璧な一本背負いだった

先輩の体は為すすべなく床に叩きつけられる。かなり綺麗に入ったはずだからしばらくは動けなくなるかもしれない

予想通り勢い良くせき込む先輩。それが落ち着くと今度はきょとんとした顔になる。おそらく自分がどういう状況になったのかよくわかっていないのだろう

カウンター型の投げ技とはそういうものだから

自分が攻めていたはずなのに、いきなり体が宙に浮き気付いた時には投げ飛ばされている

頭の理解が追いつかないほどの急展開、というわけだ

「さすがです、師匠!」

いきなり声をかけられる。どうやら二人が着替え終わったらしい

ていうか見られたか……。面倒なことにならなければいいが

「なぁ、後輩よ。私はいつになったら君に勝てるようになるんだ?」

なんか先輩がうつろな目でこっちを見上げてきた。正直に言います。怖いです

でも、その目にふざけの感情がないことは分かったので、真面目に考えてみる

この部活では今は俺が一番勝率がいい。というかまだ無敗だ

だが、先輩とはこの部活で一緒に居る時間が一番長いから、そろそろこっちの動きにも慣れていい頃だと思う

と言っても、読まれないように毎回少しずつ動きを変えてるから、慣れるなんてことがないんだろうけど

でもそれもほとんど誤差の範囲で収まるし、先輩は飲み込みも身体能力も全く問題ない。むしろすごい方だ

その先輩が今まで俺に負け続けている理由。あるいは勝てない理由は……

「おそらく、先輩が本気で俺に勝とうと思ったら勝てるんじゃないですか? 多分、ですけど」

その言葉に一番に反応したのは、先輩ではなく俺の後ろまで来ていた同級生の方だった

「それってどういうことなんですか?!」

やっぱり、面倒なことになりそうだ……


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