No.00【ミステリ風】無題
本来ならばここに原稿用紙なり何なりから書き写したものを作品として提示するのが筋なのだろう。ところが当時の原稿はとっくのとうに廃棄してしまっていて、記憶をたどろうにも、そのあらすじめいたものを思い出すことしかできない。今、かすかながら思いとどめている内容は、たしかこんな筋だった。
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ぼくは町を歩いていた。ところが何者かに後をつけられているような、不安な気持ちでいっぱいだ。逃れるような思いで電車に飛び乗ると、車内にもぼくの監視者がいて、ぼくが何かをしでかさないかと、睨みつけている。
駅では先ほど、眼鏡をかけたぼくのことを「さっきのトンボ、いかにもオスですって感じ」などと言った私服の女捜査官がいたし、おそらくやつらは、ぼくが痴漢でもするんじゃないかと疑っているのだ。きっとこの電車では連日、そうした被害が多発しているのだ。えん罪で犯人に仕立て上げられてしまうのだ……
ついにぼくは抑圧に耐えられずに文章も文字も文体も、破綻してしまう。
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1話目から設けたルールの「創作時の誤字脱字などもそのままに」という決まり事を破ってしまうことから、このエピソードは「No.00」として「いろいろ」の中に収めることにしました。




