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人生は上々だ -人生、山あり谷あり、舞台あり-  作者: 志村けんじ


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偶然の再会

「何、ナニ、なにー! スゲー面白そうな話じゃん!」


 この出来事を、ついうっかりとエイジに話すと、早速からかわれた。


 ちなみにオレとエイジは、メールなどで連続するやり取りや、電話で長話するようなことはほぼ無い。


 コンビ結成当初から、約束してから何処かで待ち合わせして会って話すのが基本だ。


「これでやーっと、ハゼに反撃できんぜー」


「なんだよ、その反撃ってーのは?」


「いやー。ずっと萌実とのことでからかわれてきたからなー。これでようやくハゼに反撃できんぜ!」


「だから、反撃もなにも、オレたちにはまだなにも」


「まだなにもってことはー、やっぱなんか期待してんじゃん!」


 エイジの奴、痛いところを突いてくる。


「いや。期待は別に……」


 これは期待していいのか? いや……あれはスーパーで買い物して偶然会っただけで、これ以上話の膨らましようがない。


「ハゼー。お前、今なんか想像しちゃってたんじゃねーのー」


 このオレの頭の中を見透かしたかのように、エイジがいやらしい目でオレを見る。


「バ……馬鹿言ってんじゃないよ! そうゆう良からぬ妄想をするのはやめなさい!」


 オレは無理やりこの会話を終わらすが、それでもエイジはいやらしい目をしたままだった。



その彼女と再び偶然再会するのに、そんなに時間は掛からなかった。


 あの偶然出会ったスーパーで、いつもの買い物をしていると、今度は彼女の方から声を掛けてくる。


「こんばんはー。お買い物ですか? ちなみに週にどれぐらい買い物してます?」


 突然、なんの脈絡もなく聞かれる。


「いや……。週に2・3回ぐらいですが、そちらは?」


 オウム返しで同じことを聞く。


「いやー……。わたしは……週に1・2回くらい……」


 彼女は少し恥ずかしそうに答える。


「半分は外食で?」


「まぁ……そんなところです」


 おそらくこの話し方から想像すると、彼女はあまり料理はしない人なのだろう。


 オレは大学生時代のアルバイトでも料理はしてきたので、今でも比較的料理はするほうだ。


「あの……失礼ですが、お名前お伺いしてよろしいでしょうか?」


「何故?」


 これは「良い方」にも「悪い方」にも捉えることができる。


「だ、だってアナタだけ、私の名前知ってるのは卑怯じゃないですか!?」


 ま……まさかの「悪い方」なのか!? 


 オレは仕事着のスーツの内ポケットから名刺入れを取り出して、名刺を一枚彼女に渡した。


「ど…し、よういちさん」


 やはり苗字の「土師」の読み方が難しかったようだ。


「あっ、ローマ字でフリガナ振ってます。土師洋一はぜよういちです」


土師はぜさん……。あぁー、土師はぜさんっていうんですね」


 何故か彼女は、オレの名前がわかったことに感動している。


「はい。職場の仲間や相方からは、ハゼって、カタカナ風に呼ばれてます」


 そう言うと、彼女は落ち込んだような表情かおで、名刺を見つめる。


 その彼女の表情かおを見て、たぶんこのことが引っかかったのだろうと思った。


「いや……。その相方っていうのは、漫才の相方のことですが」


「漫才!?」


 彼女はそれを聞いて、完全に頭の理解が追いついていないようだ。


 正直にオレは、もう一足の草鞋の話をする。


「実は6年ほど前から、漫才のコンビを結成してまして。お笑いコンビ『ソルティドッグ』のハゼ・ヨウイチです。相方の名前はクサカ・エイジ。もしよかったら、今度劇場とか舞台に遊びに来てください」

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