必然の出会い?
そんな矢先。オレたちは、ある女性お笑いコンビと「合コン」で知り合った。
これが次に起こった問題だ。
この女性お笑い芸人と「合コン」するなどということは、実際には滅多にない。
男女のお笑い芸人が同じ舞台などの共演で意気投合して、その後付き合うというのは多々あるが、「合コン」というと話が変わる。
それは男側には、「絶対的に不利」になるからだ。
何故なら、その「合コン」のときの男側の様子を、舞台などで、事細かく「ネタにされる」可能性が高いからである。
もっとはっきりと言ってしまえば、「そのときの女性に執着した滑稽な様子を晒されて、笑わすのではなく、笑われる」ことが怖いのだ。
そうゆうことをまったく気にしない強者も存在はするが、そのリスクの事を考えると妥当ではないのだ。
だから「食事会」や「飲み会」はあっても、「合コン」はしないのが鉄則だ。
では、何故オレたちが、女性お笑い芸人と「合コン」をしてしまったかというと、女性お笑い芸人と「知らなかった」からだ。
そもそもここ最近は、エイジも「合コン」にあまり参加しなくなっている。
理由は、美苑の一件で、「金銭面」で少なからず罪悪感があるからだ。
ちなみに美苑は、エイジの借金の一部を肩代わりしてくれていただけであって、エイジの代わりに返済の面倒を全部みてくれていたわけではない。
その美苑も、すでに芸能界を引退して、研修を終えたばかりの医者と先月に結婚したということだ。
何故そんなことを知っているかというと、しっかりと事務所の方に美苑からの「結婚の挨拶のはがき」が届いたからである。
そのはがきの写真を見たみどりさんは、凄く羨ましかったそうだ。
で、話を戻すと、普段は「合コン」に参加することがないオレも、たまたま数合わせで頼まれてエイジと参加しただけで、これはまさに、ピンポイントの出会いだった。
では、なにが問題なのか。オレもエイジも「合コン」に参加した女性陣を笑わせはしたが、「下心丸出しでいた」なんてことは決してない。
それは……ある人の妹が、その中にいたからなのである。
ある日、約一年ぶりの『ソルティドッグ』の舞台を終えて、久しぶりの反省会をしたときのこと。
その日は、マネージャーのみどりさんも当然参加して、合計6人のメンバーだったのだが、その日は珍しく、というか初めてチーフマネージャーの荒田紘一さんも同席した。
この時点で、完全におかしかったのである。
今日の反省会の席となったところは、劇場近くの前からよく使っていた居酒屋だったが、そこに人目を惹く、金髪メッシュが入った黒髪ショートの顔立ちは美人と、金髪ロングの顔立ちは可愛いの、二人の若い女性店員がいた。
「あ、ちょっと」
荒田さんが手を挙げて、その女性定員を呼んだ。
普通は一人だけ来るものだか、何故かその二人とも一緒に来る。
「エイジとハゼの二人とも、前にこのふたりと会ってるよね?」
「えっ!?」「へっ!?」オレもエイジも、ピッタリと同じタイミングで声を合わせた。
「ほら、一週間ほど前の「合コン」で会っているはずだよ」
荒田さんの声は、いつもよりずっと低く、眼鏡の奥の目も笑っていない。
「あっ!? あっ!? あーーっ!? あのときの!?」
そのときのことを思い出して、エイジが叫ぶ。
「あぁーーーっ!?」
オレもはっきりと思い出した。
でもあのときは「美人」の方は普通の黒髪ショートで、「可愛い」の方は黒髪ロングだったはずだ。今はどちらも最初にその金髪に目が行ってしまい、あのときの面影がない。
憶えていることといえば、二人は自己紹介で「つい一ヵ月ほど前に、一緒に福岡から引っ越してきた」と言っていたのと、仕事は「わたしたち、実は元ご当地アイドルで~す! だから歳は、ヒ・ミ・ツ」とピッタリ声を合わせて言っていた。
あとは、それを聞いてオレたち以外の6人の男が、このふたりに積極的に群がっていたのを憶えている。
「紹介するね。今度福岡の事務所から、オールージュで預かることになった、荒田真帆と重村萌実のふたり。二人は『博多どんたく娘』っていう女芸人だから、よろしくね」
この荒田さんからの紹介に、一切の抑揚がない。「美人」の方が「荒田真帆」で「可愛い」の方が「石村萌実」だ。
「ちなみにだけど、荒田真帆の方は、僕の妹だから……。エイジ……わかってるよね?」
要は「荒田真帆」は妹だから、「エイジ、絶対に手を出すなよ」ということなのだろう。
「あれ? でも、確か荒田さん、今年37歳のはずじゃ……。それにしてはふたりとも若い……」
「ありがとうエイジ。こう見えても、真帆が今年30歳で、萌実は29歳だから、キミたちよりも年上だよ」
「ちょっとお兄ちゃん!? 歳のことは、言わんとってよ! 恥ずかしい!」
「何言ってんだ。ふたりとも福岡じゃ名前だって知られてるご当地アイドルだったじゃないか!」
これを「親バカ」ならぬ「兄バカ」というのだろうか。
「わたしたち、また東京に来たばっかりでなにもわからんけん、お願いします」
と、萌実が言った。
これが次の問題の始まりだったのである。




