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人生は上々だ -人生、山あり谷あり、舞台あり-  作者: 志村けんじ


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再認識

 こうなると、『スキップビート』の自己満足ともいえる承認欲求は誰にも止められない。


 『スキップビート』幾つかの事務所のオーディションを受けて、見事に大手芸能事務所の『オールージュ』に合格したのである。


 この『オールージュ』という芸能事務所は幾つかの芸能事務所が集まったグループ会社で、各部門が別れており、だからこそ所属している芸能人は多数いる。


 つまりは、入口はそれなりに広かったのである。



「なるほどねー。それで、どこから自分たちの実力不足を感じた?」


 ここまで高校時代の華やかだった話を気持ちよく話していたエイジを、みどりさんのこの一言が現実へと引き戻す。


「プロになってからも、ずーっと順調にやってこれたってわけじゃなかったよね? アタシはずっと見てたから、ある程度はわかってるつもりではいるけどね」


 さすがは『スキップビート』をデビュー当時から見続けてきてくれた大ファンの言葉である。


「その実力不足だっていうのは、正直一度も。まぁ、プロとしてまだ駆け出しだし、普通にこんなもんかなーって」


「なによそれ!? なんか、ずいぶんと楽観的ー。あの一人だと酷いトラウマの話は何処行ったのかしらー」


 このエイジの答えに、みどりさんは呆れる。


「そこまで楽観視できるなら、それもある意味、エイジくんの才能なのかもねー」


 わからない。何故エイジは、そんな楽観視できたのか。現に前の『スキップビート』は解散して、おまけに酷いトラウマも抱えてた。


「でも、年齢トシは違いますけど、同期の方が面白いって感じたことはありますよ。ネタとか、掛け合いとか……」


「まぁ、そう思った人たちの中には、アナタたちが目標とするテレビに出てる人もいるでしょうしね」


 これまた、手厳しい嫌味で……。いや、愛のムチというのか。


「でも、もう高校生の頃のようなネタだけじゃ駄目なのかなーって思ったことはありましたよ。でも、なにしたらいいかわかんないし、オレは全然ネタ書けないんで、そこは全部ヒロシに任せっきりで」


「でも、その任せっきりが良くなかったかもねー。ヒロシくんはずっと、エイジくんの才能に嫉妬してたみたいだしねー」


 ここの話をみどりさんに聞いたとき、この「ずっと」が気になった。もしかすると、この段階でみどりさんはヒロシの方からもなにかを聞いていたのかもしれない。


「いやいやいや。オレがこうしてプロに成れたのは、ヒロシがいてくれたおかげですから」


「あら、そこはずいぶんと謙虚なのねー。そこはこの芸能界せかいに誘った責任を感じてるから?」


 そう言われて、エイジは黙ってしまう。


「ハゼくんもよね?」


「……そぉー、ですね」


「でも、ハゼくんを見つけたとき嬉しかったでしょ。理想の相手を見つけられて」


 オレが理想の相手……?


「もぉー、やめてくださいよー! そんな運命の相手に出会えたみたいな言い方ー!」


 そう言われてエイジは大照れしたそうだが、そのエイジより恥ずかしいのは、このことをあとから聞いたオレの方だ。


「実は、陰でずっとコバンザメって言われてきたヒロシくんよりも、常にエイジくんと対等でいたいというハゼくんは、あなたにとっては理想よ」


 確かに、オレはいつもエイジには負けたくないと思ってる。


「ヒロシくんとは、解散のときまで揉め事とかケンカとか、ほとんどなかったんでしょ。でも逆に、ハゼくんと出会った最初の頃はケンカばっかりだったのよねー。凄く面白いじゃない!」


 それはひょっとすると「ケンカするほど仲が良い」と言いたいのか。


 オレはエイジと出会った当初、確かにエイジとケンカしたが、だからといってやつのことが嫌いなわけでは決してない。


「大体、なんの打ち合わせもなしに、あんな完璧な二人羽織が出来たことが奇跡よー」


 この団体旅行での二人羽織の話は、エイジがいろんなところで自慢げに話しまくっていたので、知る人ぞ知る有名な話だ。


「でも、あんなに上手くいって嬉しかったでしょー? ハゼくんを見つけたとき、そのハゼくんと無理やりにでもコンビ組むために、思いつきもあっただろうけど、いろいろ考えて作戦を実行したんだもんねー」


 それはまたしても初耳だ。エイジは最初から全部狙ってやっていたというのか。


「そんなまさかー! そーんなことあるわけないじゃないですかー!」


「今更隠したって無駄よ。でも、アナタたちは、その奇跡をやった。もぉ、最高のコンビじゃない」


 尚、エイジが勝手につけた『ソルティドッグ』というコンビ名は、オレが好んで飲んでいた酒の名前からである。


「もし唯一不安があったとしたら……。ハゼくんが面白いネタを書けるかどうか……。だけど、アナタはその賭けにも勝った」


 いやー。照れますなぁー。お褒め頂いてありがとうございます。


「でもまさか、ハゼくんがあそこで、あんな大失敗をするとは思ってもいなかった」


 その節は、今更ながら大変ご迷惑をお掛けしました。恥ずかしいかぎり。


「でも、ハゼくんがスランプになったあと、どうしてハゼくんになにも言わなかったの? そのあともずっと言わないままよね」


 確かにエイジは、あのことについてはなにも言わない。


 あの後にただ一言だけ「次は頑張んべー」と言っただけだ。


 その一言があったからこそ、オレはまだ「お笑い芸人」を続けられている。


 取りあえずここまでが、一旦みどりさんと共有したエイジの話だ。


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