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人生は上々だ -人生、山あり谷あり、舞台あり-  作者: 志村けんじ


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生徒会長選挙

 そこからみどりさんは、更にエイジのトラウマを探っていく。


「それで、そのあと何処で一人で人前に立つと、あんなに緊張するってわかったの?」


 このとき、みどりさんは先生ではなく、母親のような気持ちになっていたそうだ。


「正直、学校とかで一人で人前に立つなんてこと滅多にないわよね?」


 そう確かに言われてみれば、何かで賞を取って、全校生徒の前で表彰されるとか、他に生徒会会長にでもならない限りは、大勢の人前で壇上に立つなんてことはない。

 

 だが、それがあった。エイジは中学校の生徒会長選挙に立候補していた。


 もちろんこれには「生徒会をどうこうとか、良くしようとか」、そんな崇高すうこうな思いがあって立候補したわけではない。


 単なるノリで立候補した。もし万が一に受かったとしとても、そこで誰かが必ず助けてくれると思っていた。


 その生徒会長の選挙活動のときは、エイジの周りに他のクラスの友だちやクラスメイトが居てくれたが、生徒会長選挙当日は、体育館の壇上に一人で立って、全校生徒が見ている前で選挙演説をすることとなる。


 このときは3人が生徒会長に立候補していたが、エイジは最後に壇上に立った。


 その壇上の中央に置かれた机を挟んで、体育館に集まる全校生徒を見下ろすと、さすがに緊張から机の陰に隠れた脚が震える。


「えーっ……」


 エイジが演説を始めようと口を開いたとき、体育館にいる全校生徒の中から、大声でヤジが飛んだ。


「しっかりやれよー! アイジー!」


 このときだ。まだ表には出ずに隠れていたエイジのトラウマが完全に表に現れる。


 冷汗が額から流れ出し、さっきよりも更に足が震える。一人で立っていることも出来ない。


 これがエイジの酷いトラウマが出るきっかけになったというわけか。


 結局、エイジはみんなの前でなにも演説することなく、教師二人に両肩を支えられて壇上を下りた。


 当然、生徒会長に当選することはなかったが、ここからエイジがこのまま暗く寂しい、残り一年余りの中学校生活を送ったかといえば、そうでもない。


 なぜならここで都合がいいことに、このとき中学2年のときに出来た本命のカノジョがエイジを助けてくれた。


 この選挙演説のことのあと、カノジョはエイジにこう言った。


「でも、良かったじゃん。エイジに生徒会なんて、らしくないよ。ふたりとも帰宅部なんだし、もっといっぱい遊ぼうね」


 そう言ってくれた。


 このときエイジのカノジョが、単に気を使って言ってくれたのか、それとも本心で言ってくれたのかはわからない。それでもエイジはカノジョのその言葉で救われた。


 カノジョはそのあとエイジの為に尽くしてくれた、というわけでもなかったようだが、それでもエイジのことを思っていてくれたのは間違いない。


 エイジの初めての相手もそのカノジョだったし、カノジョの初めての相手もエイジだった。


 そのときは、どちらからかというわけではなかったが、放課後にエイジの部屋でTVゲームをしていたとき、感情が高ぶり唇を交わしたあと、そのままの流れで最後までやった。


 もちろん血気盛んな年頃の中学生に興味がないわけはなく、避妊具は事前に用意していた。


 そこからエイジは半年以上の間、いわゆる「猿」になったわけだが、それである意味救われたのだから、女というのが如何いかに偉大で、男というのは如何いかに単純なものかがわかる。


 高校受験の為の勉強が始まると、お互い同じ高校に入ろうと約束して受験勉強を始めたわけだが、カノジョが「あそこの高校の制服カワイイ!」という理由で行きたい高校が、そこそこレベルの高い公立高校であった為、カノジョの学力にエイジの学力が追いつかず、そのモチベーションもも徐々に低下していった。


 この高校受験で最後に運良く合格して、そのまま同じ高校に行けていれば、このふたりももうしばらくは付き合い続けていたのかもしれない。


 だがエイジは、滑り止めで受けた別の私立高校に行くこととなり、その後エイジがフラれるカタチであっさりとこのふたりは別れた。


 まぁ、こんなことはどこにでもよくある話だし、これまでも話してきた通り、エイジは沢山のオンナにモテて、それなりに女遊びもしているが、もしかしたら、これも一つのきっかけだったのかもしれない。


 話を元に戻そう。


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